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マクドナルド本部(「Wikipedia」より)
マック、世界的没落を招いた「誇り」と「自己満足」 有効な危機回避策を自ら捨てた愚行
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150620-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 6月20日(土)6時1分配信
本連載前回記事『マック、世界的“客離れ”深刻化は、もはや歴史的必然で不可避である 間違い続ける戦略』において、米国の象徴的ブランドであるマクドナルドが直面する問題を追った。同社がなぜ時代に逆行するような戦略を取ったのかについて考察する前に、まずは同じく米国を代表するブランドであるザ コカ・コーラ カンパニー(以下、コカ・コーラ社)の場合を考えてみよう。
コカ・コーラ社もマクドナルドと同様に、世界の先進国における「ヘルシーであること、オーガニック(ナチュラル)であること」に重きを置く価値観の変化によって、打撃を受けている。昨今は、コーラのような炭酸飲料水に代わって、スポーツドリンク、レッドブルに代表されるエナジードリンク、そしてミネラルウォーターが人気となっている。米国に限っていえば、2009年には米国民1人当たり92.5リットルのコーラ類ドリンクを購買したが、15年には72.5リットル、19年までには64.7リットル、つまり10年間で30%減少すると予測されている(Euromonitor調査)。コカ・コーラ社の営業利益の半分は米国市場で生まれているわけだから、その影響は大きい。
しかも、人工甘味料の健康への悪影響を訴える報告が相次ぎ、カロリーを気にするセグメントのために開発したゼロカロリーやシュガーフリーのダイエット・コーラに対する消費者の不安が増大している。その結果、ヘルシー志向の消費者に応えるためのダイエット商品の将来性に期待が持てなくなってしまった。
飲み物の甘さへの価値観は、肉と同様に経済レベルで変わる。筆者が子供のころ、田舎にいくとジュースに砂糖を入れて出され、甘すぎて飲めなかった覚えがある。今でも開発途上国や新興国に行くと、コーヒーやお茶にとてつもなく多くの砂糖を入れて飲む地域がある。砂糖は貴重なエネルギー源であり、しかも体への吸収が早い。経済レベルが低い時には、ケーキやチョコレートといったスイーツは普及しておらず、農作業のような過酷な肉体労働に従事した後、甘い飲み物を摂取する必要があった。だが、さまざまなスイーツがあふれる今となっては、むしろ飲み物は甘くないほうがよいのだ。
●多ブランドを展開するも、変化の遅いコカ・コーラ社
コカ・コーラ社の場合、海外市場では、すでに対策を取っている。ジュースやコーヒー、お茶を販売すればいいのだ。日本市場全体として、どのブランドが売れているかという情報を手に入れることはできなかったが、西日本で販売を担当するコカ・コーラウエストの投資家向け広報(IR)資料によれば、13年の同社販売数量実績トップは缶コーヒーのジョージアで約4400万ケース、次いでスポーツドリンクのアクエリアスで2200万ケース、3番目がコカ・コーラで1500万ケース、これに肉薄しているのが緑茶の綾鷹で1400万ケースだった。ちなみにコカ・コーラ ゼロは700万ケースで、コカ・コーラは合計2200万ケースともいえる。
ジョージアや綾鷹のテレビコマーシャルを見ても、日本コカ・コーラの社名は表示されない。自動販売機で買う時に、コカ・コーラと綾鷹が一緒に陳列されているのを見ても、綾鷹を日本コカ・コーラが製造していると知らない消費者はたくさんいるだろう。
コカ・コーラ社は、こういったブランドポートフォリオ戦略が実行できる。世界各地の消費者が要望するブランドを開発すればよい。だが、ライバルのペプシコーラを販売しているペプシコのグローバルでの炭酸飲料水の売り上げに占める割合は、すでに半分以下になっているが、コカ・コーラ社はいまだに75%もある。世界市場、特に先進国における価値観が変化してきているというのに、コカ・コーラ社の反応は遅い。やはり歴史の重みと、それからくるプライドが邪魔をしているのだろうか。
コカ・コーラ社は今、世界市場でコカ・コーラ生誕100年を象徴する広告を展開している。確かに、筆者を含めて一定以上の年齢層にとっては、この広告に登場するエルヴィス・プレスリーやマリリリン・モンローがコカ・コーラを飲んでいる写真は、それなりにノルタルジックな感情を喚起する。
だが、将来の売り上げを託す世代にとって、エルヴィスやモンローは過去のスターだ。「これ誰?」という反応を示す若者も多いことだろう。あの広告キャンペーンは、コカ・コーラ社という企業が、自分自身のプライドを満足させるために展開しているキャンペーンにしか思えない。
100年間、米国の象徴であり続けた誇りを抱いているだけでは、価値観の変わった世界市場、特に先進国市場に対処していくことはできないだろう。
●マクドナルドは変化を恐れている?
そして、それはマクドナルドにも同じことがいえる。
前回記事で見てきたように、マクドナルドは06年前後に、それ以前の90年代末から進めてきた多様化のためのM&A(合併・買収)を無駄にするかたちで、チポトレ・メキシカン・グリルやボストンマーケットといった人気を集めている新しいタイプのファストカジュアルレストランの持ち株を売却した。それはハンバーガービジネスに集中するという名目のもとに取った戦略とされている。
マクドナルドは、コカ・コーラ社ほどではないが75年の歴史ある企業だ。歴史とプライドが、ここでも変革の妨げになっているのだろうか。マクドナルドと別れたチポトレの創業者は、サスティナビリティ(持続可能性)に関心を持ち、「良質な原材料を使うという考え方は、加工した材料や冷凍した材料を使い、生産性一辺倒の機械化されたプロセスを採用するファストフードの企業文化とは相容れなかった」と言っている。また、「『ドライブスルーを採用したらどうか』といったようなマクドナルドのアドバイスにノーを繰り返しているうちに、両社の軋轢は大きくなった」とも分析している。
価値観や企業文化が違うブランドを傘下に収めるからこそ、異なる価値観を持つセグメントが乱立する世界市場でも全体として売り上げを伸ばしていくことができる。自分たち親会社とは異なる価値観を持った子会社やブランドの個性を認めて管理していくことは、忍耐と理性を必要とする非常に難しい仕事だが、将来に向かって大きく成長する可能性を広げることにつながる。
そのように判断できなかったのは、やはり歴史に裏打ちされた誇りだろう。いや、変化への不安なのかもしれない。
だが、例えばフランスのマクドナルドは、米国のマクドナルドとは異なる方針でチェーンを経営している。朝食には、フランスパンにジャムとコーヒー、あるいはクロワッサンにカフェオレ。また、食材も地産地消の考え方で、抗生物質や成長ホルモンを使っていない高品質の肉が提供されるという。郷に入れば郷に従うということなのだろう。
いずれにしても、文化が異なる国だからとはいえ、同じマクドナルド・ブランドで、これだけの個性の違いを認めることができるのなら、なぜチポトレやボストンマーケットも同じように管理運営できなかったのだろうか。
ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学教授
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