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「プライムタイム」の10年がキャリアを左右する
「人生の旬」を無駄にしてはいけない
2015.6.19(金) 下野 稔
エグゼクティブサーチという仕事に十数年従事していて、「キャリア形成」について問題意識を持った方々に多く対面し、様々なディスカッションをしてきた。
考えてみれば、人は生死を自分の意思でコントロール出来ない。従って「キャリア形成」などという、自分のキャリアを自分の意思でコントロールできると思うこと自体、人の小賢しさかも知れない。しかしながら、「キャリア形成」について問題意識を持った方々に多く対面し、いろいろな相談を受けるケースは多い。
時代も環境も変化してゆくが、職業柄、基本的にキャリア形成に対するスタンスは一貫していなければならない、と常々心掛けているつもりである。私の定義は、「個やチームの技術を磨き抜き、技量の域に達することで世間に認知され、それをそれぞれの個性で世に返し後世に継承してゆくこと」である。これはビジネスに限らず、学問や芸術、芸能、スポーツなどにも適用される。順を追って説明してみよう。
そもそも、キャリアとは?
キャリアとは、「一生にわたる一連の職業上の活動や行為」と定義されているが、「一生にわたる」と「一連の」というのがキーワードだ。キャリア形成はビジネスマンとして物心がついて、何とか使い物になる頃、30歳前後からそれとなく意識し始める。
私見だが、リーダー人材のキャリア形成という意味では、おそらく小学校時代から既に始まっている。これは学歴や仕事という意味ではなく、「リーダーとしての養成」という意味である。学級委員、クラブ活動のキャプテン、イベントの取りまとめなど、リーダーは長年かけて獲得できる資質であり、自覚である。3年や5年で醸成されるものではない。
本来、リーダーは市井(しせい)に多く存在するはずであり、だから「一生にわたる」ものであり、これで終わりという到達点はないのだ。仕事人生も75歳ぐらいまで元気に働く時代。60歳前後で体力も気力もある時に若い世代におんぶされて隠居などしていられないわけである。
次に「一連の」だが、もともと1つの連鎖する仕事を分業化した歴史があり、顧客に対する価値創造をチームの連鎖により届けるようになった。一般的に、キャリア形成には、横への広がりと縦への深耕がある。前者は組織の権力の長であり、後者は専門家としての技術や芸術性の完成形である。ただ専門家や芸術家にとって権力の長がキャリア形成なのかは、意見の分かれるところである。
「キャリアパス」と「キャリア形成」の本質的な違い
「キャリアパス」という言葉がある。企業における社員が、ある職位に就くまでに辿る経験や順序のことを指す。一方「キャリア形成」は、ある人が仕事を通じて職業能力を習得する活動、と辞書に定義されている。職業訓練などを通じて事業の中枢となる人材の育成を目的とする、とも併記されている。
キャリアパスは、企業人に限定していて、個人の成長に焦点が当てられているニュアンスがある。職業訓練における習熟手順やプロセスに言及し、実利的である。しかし、「キャリア形成」はもっと全人格的なものであり、「キャリアパス」よりも広い概念のような気がする。
では“事業の中枢となる職業能力”とは何だろうか? 事業に限るのであれば、価値を創造し安定的に供給できる仕組みを考え抜ける人材であり、環境変化や時代の変遷により事業が窮地に立った時、それを立て直し、その上でさらに成長させることができる人材である。
企業の成長がなぜ重要なのか? それは、そのダイナミズムがないと、世代交代は行われず、若い人々が成長するための、新たなチャレンジの機会を提供できないからである。世代を超えた継続性を担保するためには、成長し続けることが必要不可欠だ。それは国の繁栄や、国際的な発言力にも影響する。
30〜35歳でビジネスの土台を培う
ビジネス上のキャリア形成という観点では、「土台形成の時期」と「人生の旬」の時期が大きく影響する。「土台形成」とは社会人としての心構えや、顧客にサーブすることを身に着けることだ。
具体的には、初級管理者として、人の上に立ってプロジェクトをマネジメントすること、ビジネスプランを作りトップの承認を取り、まずは小さなチームで小さな成功を収めること、常に物事の本質を捉える姿勢を養うこと、そして、自分やチームが辛い状況であってもリーダーシップを発揮することが求められる。
このビジネスの土台を、我々は「コアスキル」と呼んでいる。30〜35歳頃までに、成功と挫折を繰り返し「自分のスタイル」をまがりなりにも確立することが肝要である。これは仕事に対する「基本的な姿勢」に関する訓練が、スキルよりも重要という意味である。この土台がないと、その後にどんなスキルを積んでも崩壊してしまう危険性がある。
円熟した人生を迎えるために
「人生の旬」とは、心、技、体が三位一体となって充実している年代だ。人によって個人差はあるが、35〜45歳ぐらいの10年間がコアタイム、伸びても50歳ぐらいの15年間だろうと想定する。
我々は、この期間の事を「プライムタイム」と呼んでいる。この期間に何を目指し、何かを成し遂げるために意味あるチャレンジをしているか? それには、どのような技能や環境が必要か? これはかなり重要である。しかし、企業側がこの年代の貴職に理想的な環境を与えられるとは限らない。
したがって、自ら会社側に提案し、チャレンジする環境を求めるか、外へのチャレンジを視野に入れるかの判断が必要となってくる。我々も35歳前後の「プライムタイム」初期と、45歳前後の終盤時期の方々にお会いする時には、緊張感を伴う。それほど大事な時期だからだ。
この期間の充実が50代、60代、70代を元気に押してゆける原動力となる。しかるに、管理職になり、バタバタと忙しくしているうちに、キャリア形成については漫然と過ごしてしまいがちな年代でもあり、気が付くと50歳という事もままある。
キャリア形成とは人間形成でもある
「キャリア形成」は「自立」と深く関連している。まずは経済的な自立という意味だ。資金を集め、物やサービスを開発し販売し、サプライチェーンにのせて顧客に価値を提供する。これを自立的に行える立場である。大規模に展開しようとすれば、組織や仕組みが必要となり、作業分担して行う。
そのチームリーダーが大企業の社長である。個人がこのサプライチェーン全体をこなせる場合、その個人は事業責任者であり、大組織でなくともキャリア形成のゴールになり得るのである。
もう1つ、キャリア形成に含まれているもの、それは人間性の探求である。人間形成と言った方が分かりやすいかも知れない。
これは精神的自立にも深く関連している。人は死に向かうにつれ、人間性の完成を目指すという考え方がある。最近、再放送されたNHKの『プロフェッショナル仕事の流儀』という番組に、羽田空港で働く日本一の清掃員の話があった。ご覧になられた方も多いと思う。
その清掃員は、在中日本人孤児の父と中国人の母の両親を持つ。日本に帰り、17歳で家計を助けるため、清掃員の仕事を始めた。その仕事を極め、いまや羽田空港の日本一の清掃員と認知され、後輩の指導にあたっている姿のドキュメントである。この番組を見て、人間性の探究という要素と、専門家としてもキャリア形成の道があることを、つくづく感心したのである。
歳になり涙腺が緩みがちではあるが、この番組を見て不覚にも涙ぐんでしまった。プロとして厳しい環境の中で技を極め、かつ、楽しんでいらっしゃる方々の姿はいつも感動的だ。技を磨き、技量と呼ばれる域に達すると、そこには明らかに人間性の成熟がある。
個の技術の完成形が世間に認知され、世に返してゆくこと、これが人間を成長させるのだ。事業人のみでなく学術、芸能、スポーツを含めた専門職にも厳然としたキャリア形成の形があることを、このエピソードは気付かせてくれた。
もう一度、私なりの定義を繰り返そう。キャリア形成とは、「個やチームの技術を磨き抜き、技量の域に達することで世間に認知され、それをそれぞれの個性で世に返し後世に継承してゆくこと」
いかがだろうか?
(*)本記事は、スタントンチェイス インターナショナルが運営する「下野 稔の代表ブログ」に掲載されたコラムを再構成したものです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43995
AKB48の総選挙から学べる、豊かに生きる秘訣
第24回 比較・優劣の心理学
2015.6.19(金) 藤田 耕司
AKB48選抜総選挙、大島優子がセンター奪還
人気アイドルグループAKB48の総選挙。写真は2012年のもの〔AFPBB News〕
人は他者との比較によって心を動かされ、一喜一憂し、強いモチベーションを感じる。他者との比較によって優越感を覚えることもあれば、劣等感や嫉妬を覚えることもある。
自らの価値観に沿った生き方をしようとしても、他者との優劣によって心をかき乱される。
比較には他者との比較以外にもう1つの比較がある。それは過去の自分との比較である。今の自分は過去の自分よりも成長したか、収入は上がったか、地位は上がったか、より良い環境を手に入れたかといった具合に比較する。
過去の自分との比較によっても、人は心を動かされ、一喜一憂し、そして強いモチベーションを感じる。比較の心理は人間の心に大きな影響をもたらす強いエネルギーを持っている。
先日、比較の心理が人間の心に与える影響の大きさを痛感させられる番組を見た。AKB48の総選挙である。
圧巻は選挙後のスピーチ
この総選挙はAKBグループメンバーから総選挙に立候補した272人に対してファンが投票することにより、1位から80位までの順位がつけられる。
チームメンバー内で順位という序列が明確につけられ、他者との比較により心が大きく動かされる。
また、2009年から毎年のように開催されており、前回の自分の順位とも比較が生じることから、さらに心が揺さぶられる。
順位が発表された後は、1人ずつスピーチしていくのだが、順位の結果に対する感情を必死でこらえながら、なんとか理性を保ち、笑顔で話す姿はけなげであり、圧巻だった。
特に印象に残ったのは、前回よりも得票数を伸ばしながらも順位を下げたメンバーのスピーチだった。
順位を下げたとは言え、前回よりも得票数が増えたことはファンに対して感謝すべきことであり、喜ぶべきことである。もし比較の心理が生じなければ、大いに喜ぶことができるだろう。
しかし、比較の心理は強い。
前回よりも順位を下げたことに対し、投票してくれたファンへの申し訳なさと悔しさ。こういった感情がどうしても心の底から湧き上がってくる。
これらの感情が心の中で入り乱れ、葛藤の中で声を絞り出すようにスピーチする。そんななか、順位を下げたにもかかわらずとても晴れやかなスピーチをした人もいる。
本当は今すぐにでも大声で泣き崩れたかったことだろう。しかし、その気持ちをぐっとこらえ、笑顔で胸を張って伸び伸びとスピーチをした。
10〜20代前半とは思えないメンタルの強さ
10代あるいは20代前半とは思えないメンタルの強さ。見事なスピーチだった。その姿に思わず涙ぐんでしまった。
比較の心理がここまで人の感情を揺さぶるのかと痛感させられた。そして、比較の心理がここまで人を成長させるのかとも感じた。
比較の心理は人を成長させる一方、そこに捉われ過ぎると自らの価値観を見失い、他者との優劣の中に人生の目的や幸福を見出そうとすることもある。
売り上げも利益も右肩上がり。それに伴い従業員数も増え、会社の規模も比例して大きくなっている。そろそろ上場も見えてきた。
そんな会社の経営者の方からご相談を受けたことがある。「今すぐ会社を辞めたいんです」。
私は耳を疑った。その理由を聞くと、会社に自分の居場所がなく、社内のメンバーの意識もバラバラで、人間関係にほとほと疲れたという。
「こんな会社にするつもりじゃなかったんです。創業当時は楽しかったのに」
IT系の会社で順調に売り上げを伸ばし、会社の規模が大きくなるにつれ、他社との競争意識が強くなり、前年比○○%という目標を掲げ、売上拡大、利益拡大に向けて従業員も短期間でどんどん増やしていった。
その結果、上記のような状況になってしまった。本当はプログラマーとして現場でお客様と一緒に仕事をしていたかった。
しかし、会社の規模が拡大するにつれ、現場を離れ、社内の人間の管理に追われるようになった。
やりたいことより利益を優先
本当に自分がやりたいことは何か、自分の価値観に沿った生き方はとはどういう生き方か、そのためにはどういう会社を創るべきか、そういったことよりも、他社と比較しての優劣、そして前年比○○%の拡大ということに意識が向くようになった。
比較の心理に捉われ過ぎると、このように自らの価値観とは何か、本当にやりたいことは何かということが後回しになり、場合によっては取り返しのつかないことになってしまう。
もちろん他社や前期の自社に負けないという気持ちが、彼のモチベーションとなり、会社をここまで大きくさせたのは事実である。
しかし、頑張って会社を大きくした結果、彼が手にしたものは何だったのか。
他者との比較、過去の自分との比較によって人は様々な感情を覚え、様々な判断を下す。そして、考え方や価値観は人の数だけ多種多様に存在する。
ただ、いったん比較の影響を受けない視点に立ち、今自分が向かっている方向が、自分本来の価値観に照らして悔いのない人生を過ごすための方向に進んでいるかどうかを確認することは大切な意義を持つ。
このように比較の心理は人の心に大きな影響を与えるものであるが、一方で、幕末の志士、坂本竜馬はこのような歌を詠んでいる。
「世の人は 我をなんとも 言わば言え 我がなすことは 我のみぞ知る」
他者との比較に影響されず、自ら信じる道をただ邁進するのみ。このような生き方をするためには、特殊な精神状態ではない限り、超人的な精神力が必要となる。
しかし、心が震えるような人生の目標を見つけることができた時、人はこういう生き方ができるのだろう。
大切なのは比較より自分の価値観
その目標に向けて昨日の自分より少しでも前に進めるように今日を生きる。その日々、そのプロセスはなにものにも代えがたい財産であり、幸せな生き方ではないかと感じる。
ユダヤ教の教えにこんな言葉がある。
「自分が自分のために自分の人生を生きていないのであれば、いったい誰が自分のために生きてくれるのだろうか」
この言葉も他者との比較の中で自分本来の価値観を見つめ直すうえで、大切な気づきをもたらす。
他者や過去の自分との比較がもたらす心理は強力なエネルギーを持つ。そして、このエネルギーが人の成長を促す原動力ともなる。
このエネルギーの矛先を自らの価値観に沿った方向に向け、うまく活用することができたならば、人生のスピードを大きく加速させてくれるだろう。
今回のAKB総選挙が最後の出場となるリーダーの高橋みなみさんは、今回1位を目指し、そして1位にはなれなかった。
しかし、その時のスピーチでこう話していた。
「私は最後の総選挙で初めて1位になりたいと言いました。確かに、目標としていた順位には届かなかったし、ここまで呼ばれなかったから1位になろうって思ったけど。でもね、今、本当に清々しいんです。1位になりたいって言って、ファンのみなさんと一緒に、1つの目標に向かって頑張ってこれたことがとても嬉しいんです。とても幸せです」
総選挙で1位を取る。その目標が彼女にもたらしたエネルギーは相当なものだったと思う。
そのエネルギーを持って全力を尽くした今回の経験は、1位という順位は得られなかったものの、彼女の人生のスピードを大きく加速させたことだろう。
そして、その姿は数多くの人たちに感動を与えた。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44047
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