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どこまで高度プロフェッショナル? 残業代ゼロの対象はこう拡大されていく
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150618-00049378-playboyz-soci
週プレNEWS 6月18日(木)6時0分配信
現在、国会で議論されている「労働基準法改正案」が、“残業代ゼロ制度”を盛り込んでいると批判にさらされている。
特に問題視されているのは、法案の柱となっている「高度プロフェッショナル制度」の創立。高度な専門的知識が必要な業務に就いている、年収1075万円以上の労働者に限り、残業代も休日の割増賃金も支払わなくてもよいとする制度だ。
これが今後、「年収の最低ラインや適用される職種が“高度プロフェッショナル”の枠を超えていくのではないか」との批判を受けている。改正のたびに規制緩和が進んだ派遣法のように、あらゆる職種に“残業代ゼロ”が広がっていくと懸念されているのだ。
果たして、適用されるのは本当に一部の労働者だけに留まるのか。まずは、高度プロフェッショナル制度の対象業務の行方について見てみよう。
『2016年 残業代がゼロになる』(光文社)などの著書がある労働ジャーナリスト・溝上憲文(みぞうえのりふみ)氏がこう語る。
「対象業務については、法律ではなく各省庁の省令で規定されます。省令は法律と違い、国会で審議する必要がありませんから政府や厚労省の意向で容易に変更できる。実際に厚労省は改正法の骨子案の中で金融商品の開発業務などと明記していますが、実は、そこには記されていない対象業務の具体例を労働政策審議会の席上で挙げていました」
その対象業務とは?
「業種は証券、銀行、情報通信、製薬の4業種。業務は『証券』が金融商品の開発業務や法人営業、『銀行』が有価証券の売買業務、『情報通信』がSE、コンサルタントの業務、営業、『製薬』が財務、人事、法務、研究開発業務のほか営業も含まれていました。すでにその範囲で対象業務を拡大する準備はあるということです」
一方、“1075万円以上”はどこまで引き下げられていくのか。この問題に詳しい民主党・衆院議員の山井和則(やまのいかずのり)氏がこう話す。
「まずは、『平均給与額の3倍を相当程度上回る』との条文が法律に盛り込まれることになるでしょう。しかし、『3倍』を『2倍』に変える法改正は1年で簡単にできるんです。この法改正は省令と違って国会審議に出す必要がありますが、自民党が圧倒的多数の議席を持つ国会では政府の意向に沿った法改正は簡単です。
現在、日本人の平均給与額は312万円。もしこの額を来年もキープすると仮定すれば、最短で2016年にも『年収624万円以上』に引き下げられる恐れがあります」
ということは、「○倍」という規定を外し、平均年収以上の労働者すべてを残業代ゼロにする法改正もあり得る? 旬報法律事務所の佐々木亮弁護士はこう答える。
「アメリカではすでにホワイトカラーの残業代ゼロ制度が一般的になっていて、2004年には約283万円にまで引き下げました。しかしその結果、残業代ゼロの労働者があふれ、時給に換算した実質賃金が最低賃金に達しない人が激増。オバマ大統領は制度の見直しを宣言しました。
このアメリカの失敗は安倍政権も重々承知しているはず。経団連は05年に『ホワイトカラーエグゼプションに関する提言』という文章で『年収要件は400万円以上が望ましい』と記しています。おそらくここが安倍政権が目指す年収要件でしょう」
そしてもちろん、残業代ゼロがすでに適用されている「裁量労働制」が許される職種もどんどん拡大していく。
「今の改正案でも認められていない店頭販売やルートセールスなどを含めて、すべての営業職にその対象を広げようとするでしょう」(山井氏)
残業代ゼロの対象を「年収400万円以上」にまで引き下げ、業種を「全営業マン」にまで拡大する。これが安倍政権が目指す“残業代ゼロ法の最終形態”なのだとしたら、一体いつ頃をメドに達成しようとしているのか。
山井氏は「あくまで推測ですが」と前置きした上で、リアルなシナリオを描く。
「労働基準法は5年に一度のペースで大きな改正が行なわれます。03年6月には新たな解雇ルールの規定と裁量労働制の拡充を盛り込んだ改正案が成立し、04年1月に施行。08年12月には残業代割増率を50%以上に引き上げる改正案が成立し、10年4月に施行。その5年後の今、残業代ゼロ法案が閣議決定され、来年4月に施行される予定になっています。
そうすると、次の改正のタイミングは2021年。そこで“残業代ゼロ”が年収400万円にまで拡大される可能性があります」
改正法の施行は早ければ2016年。その5年後というと2012年だ。
日本経済団体連合会(経団連)と蜜月な関係にあり、景気回復と経済成長を大義名分に掲げる安倍政権が残業代ゼロの適用範囲を拡大させないとは考えにくい。
つまり、東京オリンピック(2020年)が終わった直後、日本の労働者に“残業代ゼロ社会”が襲いかる可能性は十分あるのだ。
(取材・文/興山英雄)
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