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緊縮でもユーロ圏離脱でもない第3の道として並行通貨制度の導入を提案する向きがあるが・・・(写真はギリシャで鋳造された1ユーロ硬貨)〔AFPBB News〕
ギリシャ危機、第3の道はあり得るのか?Q&A:借用書と税額控除証明の「並行通貨」の可能性
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44068
2015.6.18 Financial Times
(2015年6月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
地図に載っていない分かれ道に行き着いた旅人のように、ギリシャ政府はまもなく、ユーロ圏にとどまり、さらなる緊縮財政を国民に強いるか、あるいは旧通貨ドラクマへの復帰を余儀なくされるかもしれない債務のデフォルトに踏み切るかという厳しい選択を迫られることになる。
しかし、一部のエコノミストは、第3の道が可能かどうか思案している。
ギリシャ政府が支払い義務を果たすために増税や支出削減を実施することなく、通貨同盟にとどまることを可能にする並行通貨を創設するという道だ。
■そんなの空想だろう?
このような議論は今までは、あくまで仮説だった。だが、ギリシャとその債権者が今月末までに救済プログラムの延長について合意に達しなければ、現実味を帯びてくる。
合意に達しない場合、ギリシャは国内の財源だけを使って国際通貨基金(IMF)に対する15億ユーロの支払いを行わねばならず、デフォルトを回避するために独創的な代替案を探そうとするかもしれない。
■並行通貨はどう役に立つのか?
考えられる1つの方策は、ギリシャ政府が年金受給者や公務員に対する国内の支払いを「IOU(借用書)」で行う一方、IMFや欧州中央銀行(ECB)などの債権者に対する債務返済には税制を通じて徴収したユーロを使う、というものだ。
そうすればIOUは事実上の並行通貨になり、街頭で――恐らくユーロに対して大幅に割安なレートで――売買できるようになる。また、政府はIOUを使った納税を受け入れることを決めるかもしれない。そうすれば、IOUの価値が高まる可能性がある。
IOUは過去にも、ギリシャやその他地域で発行されたことがある。ギリシャの債務危機が勃発した直後、政府は一部納入業者に対してIOUでの支払いを始めた。
2009年には米カリフォルニア州政府も財政危機の最中に、後々の支払いを約束するIOUを発行した。
■それが唯一可能なスキームなのか?
イタリア人エコノミストのビアジオ・ボソーネ氏とマルコ・カッターネオ氏が提案している別の方策では、政府が売買可能な税控除証明書を労働者と企業に配布する。受領者は証明書が発行されてから数年後に納税額を減額される権利を得る仕組みだ。
このような証明書は、ギリシャ経済の回復に対する賭けとなる。政府は将来の税収を一部放棄し、その間に生み出される追加の経済活動が歳入不足を十二分に埋めることを期待する、ということだからだ。
■解決策があるという意味か?
ギリシャ国内で借用書や税額控除証明書が通貨として利用される日が来るのか(写真は首都アテネ)〔AFPBB News〕
そう慌ててはならない。この種の取り決めには問題がある。
まず、新しい通貨の合法性は、ユーロ圏に参加する加盟国ではユーロが唯一の法定通貨でなければならないと定めた欧州連合(EU)法の下で疑問視される。
この措置についてはユーロ圏の当局も、ギリシャを含めた各国政府が合意した厳しい財政規則からの逸脱と見なすかもしれない。
IOUを発行することで、ギリシャ政府は恐らく財政赤字の限度額を超す支出を行うことになるだろう。反対に、もし税控除証明書が促すはずの景気回復が実現しなければ、そうした証明書は将来の予算に穴を開ける恐れがある。
■では、すべてはEU法がいけないのか?
必ずしもそうではない。エコノミストらは並行通貨制度の長期的な持続可能性について甚大な疑問を抱いている。
グレシャムの法則は、2種類の通貨が流通しており、一方の通貨の価値が他方の通貨より高い場合には、悪貨が良貨を駆逐すると定めている。
消費者は価値が高い方の紙幣――この場合はユーローーをため込み、日々の決済には価値が低い方の証書――IOU――を使いたがるからだ。
並行通貨は理論上は魅力的な解決策に見えるかもしれないが、大半のエコノミストは本格的なグレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)の準備段階として、またはギリシャと債権者が新たな救済策を打ち出すまでのつなぎの対策としてしか機能しないという見解で一致している。
これは、ギリシャには実際、長期的な第3の道が存在しないことを示唆している。
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