★阿修羅♪ > 経世済民97 > 765.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
TPPにヒラリー氏さえ慎重論、米国議会の紛糾は他人事ではない(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/15/hasan97/msg/765.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 6 月 18 日 00:19:05: igsppGRN/E9PQ
 

TPPにヒラリー氏さえ慎重論、米国議会の紛糾は他人事ではない
http://diamond.jp/articles/-/73439
2015年6月18日 山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員] ダイヤモンド・オンライン


 米国の肝煎りで進んでいた環太平洋経済連携協定(TPP)の成立が、にわかに怪しくなった。米国議会下院は16日に予定していた関連法案の採決を7月末まで延期することを決めた。背景には評決を急いでも成立は無理、という推進派の判断がある。大詰めに来てエンジンブレーキが掛かった。オバマ大統領の足元から反対の火の手が上がったからだ。

 TPPは国家の主権を侵す。強者に都合のいいルール作りが弱者を追い詰める。格差を拡大する。TPPを厄介者と見る議員が増えている。有力大統領候補ヒラリー・クリントン上院議員でさえ「慎重論」を唱え始めた。

 秘密交渉のベールの陰で資金力のある多国籍企業に都合にいい国際ルールを決めるのは、国民のためにならない、という正気に戻った議論が米国で渦巻いている。

 日本ではTPPは農業問題のように取り上げられ、「攻める米国・守る日本」という構図で描かれてきた。攻めるのがアメリカなら、議会が「TPP撤退」で大揺れする現状をどう説明するのか。

 日本のメディアは「混乱」と伝え、オバマ政権は求心力を失っている、と他人事のように描いている。交渉への影響を懸念するばかりで、なぜTPPがこれほど紛糾するか、根源を問い直す記事が少ない。

「弱者へのしわ寄せ」は彼の国でさえ問題になっているのに、アメリカに譲歩を迫られるばかりの日本はどうなのか。国会議員は、せめて米国議会並みの真剣さでTPPを議論してはどうか。

■推進なのか反対なのか ヒラリーの本心はどこに

 ヒラリー・クリントンの「慎重論」だが、彼女はTPPに反対する民主党と推進派の共和党の双方から「賛否を明らかに」と迫らていた。国務長官だった2012年11月、「自由で透明で公正な貿易への道を開き、法の支配と公正な競争環境を実現する貿易協定のお手本」とTPPを持ち上げていた。ところがこのほど出版した著書「ハード・チョイセズ」にはこう書かれている。

「大企業の利益を抑える法律や規制を制定した国家を訴える権限を(投資家に)与えるTPPに反対だ」

 どちらが本心なのか。そして6月14日、ヒラリーは集会で語った。「TPP反対」とは言わず、否定的な意味合いを込め、こんな発言をした。

「TPPの恩恵を受ける製薬会社は、その利益を米国内で薬品価格を下げることに使ってほしい」

 含蓄ある発言である。TPPは製薬会社の利益を増やすと言っているのだ。どこで利益を膨らますのか。日本だろう。米国以外の参加国で薬品市場が圧倒的に大きいのは日本。しかも薬価は低く抑えられている。

 薬品に関する規制を撤廃し、市場原理に沿ったビジネスができるようになれば薬価は上がり、米国の製薬会社の儲けは膨らむ。その国独特の慣行は認めないTPPを日本が受け入れれば、効果が分かりやすく出るのは薬価ではないか、と言われてきた。

 では、世界屈指の製薬会社がひしめくアメリカの事情はどうか。「国民皆保険」の必要性が叫ばれながら、保険業界や薬品会社の抵抗で実現できない。「日本の数倍から十数倍」と言われる薬価や医療費は、市場原理によって築かれてきたものだ。新薬を特許で囲い込み、高い値で売る。低所得者は満足な投薬や治療を受けられず、保険会社が売る医療保険は高価で手が届かない。

 ヒラリーは大統領夫人の時に、国民皆保険の実現を助言したが、抵抗勢力を突き崩せなかった。オバマ政権も「オバマケア」と呼ばれる皆保険を目指したが、骨抜きにされた。ヒラリーにとって「医療難民の救済」は大統領選の大義でもある。世界に冠たる医療技術や製薬会社がありながら、その恩恵に与れない貧困層を抱える米国社会の病。ここにTPPの源流がある。

 日本はその対極にある。国民健康保険は、見方によっては社会主義的な制度である。医療を市場原理の外に置き、財政資金で支え政府が関与する。その結果、誰でもが安心して受けられる医療サービスが実現した。この仕組みも万全ではない。保険が適用される医療や薬品に制限がある。患者の側には、最新の医療技術や新薬を求める声が強い。だが無制限に拡大すれば費用が膨張し制度が壊れる。

 こうした不満をテコにアメリカの製薬会社と保険会社は、市場参入の妨げになっている国民健康保険の安楽死を望んでいるかのようだ。皆保険の解体は、すぐには無理と見て、医療への市場原理の注入、薬価決定への外国勢の参入などを求め、外堀を埋める構えだ。

「儲けた利益を国内の薬価引き下げに」という発言は、いかにもアメリカの政治家だ。

 TPPが実現すれば製薬会社は日本で儲けられるから、その分だけ、米国の低所得者の負担を減らせる、という論理。日本の値上げは米国での値下げ、ということだ。だが、多国籍化した製薬会社は甘くない。どこの市場で稼ごうと利益は利益でしかなく、国境を跨ぐ分配など頭にないだろう。

 あるとすればヒラリーが大統領になって、日本の薬品市場をこじ開け、儲けを膨らませてくれれば、その一部をアメリカ国内に還元するかもしれない。低所得者層のため、というより、自社のビジネスに政府が協力した代償として。自動車・半導体・繊維・鉄鋼から農産物まで、米国政府の対日外交は、大企業やその労組の利益を背にすることで、日本に難題を迫ってきた。

■「推進」オバマ共和党vs「反対」議会民主党、狭間で揺れるヒラリーの構図ができるまで

 TPPを巡る米国内の葛藤に話を戻そう。

 オバマ政権は「TPP推進」だが、議会の民主党は「反対」が多数を占める。理由は雇用への不安。日本や途上国から入ってくる安い輸入品に市場を奪われ、雇用が失われることを心配する。北米自由貿易協定(NAFTA)の苦い経験がある。カナダ、メキシコと国境を取り除き、ヒト・モノ・カネを自由にした。米国の穀物企業がメキシコになだれ込み、巨大な農場を作った。トウモロコシ栽培で生きてきた農民は対抗できず、農地を失う。国境を越え米国で労働力を売るしかない。低賃金労働者が激増した米国は、賃金が下がり、仕事の掛け持ちで生計を維持する人が増えた。文句を言えば首切り。労働者の地位低下は労組を脅かし、不安定な雇用は社会問題になった。

 大企業はいい思いをするだろうが、たまったものではない。人々は「自由貿易」という言葉の裏にある胡散臭さに敏感だ。

 日本であまり報道されないが、米国では地方議会がTPPに真剣に向き合っている。各地でTPPに反対する市民集会が開かれ、地元の政治家や団体が反対の声をあげている。

 来年10月の大統領選挙への動きがこれと重なり、TPPは争点化しつつある。

 民主党が「反対」を鮮明にしたのは、党内の市民派が大統領選挙をテコに「反貧困」の旗を掲げようとしているからだ。新自由主義への対抗軸でもある。この路線を率いているのは民主党下院のナンシー・ペロシ院内総務。ヒラリーは13日の発言で「オバマ大統領はペロシ議員の意見を聞き、共同行動をとるべきだ」と語った。

「オバマさん、あなたはもともとリベラルな人だったでしょ」と言わんばかりの発言である。オバマは上院議員の時に、低所得者に犠牲を強いるNAFTAに批判的だった。シカゴで始めた反貧困の市民活動がオバマが政治家になる源流でもある。

 そのオバマは大統領になってTPPの旗を掲げた。石油争奪・宗教対立・憎悪という中東の泥沼から足を抜こうとするオバマは、経済交渉・平和的手段・繁栄するアジアというTPPの共同幻想に惑わされ、ボタンの掛け違いはそこから始まった。

 国力を強める中国は気がかりだが武力衝突はできない。競い合うのは経済だ。グローバルスタンダードとなるルール創りで主導権を握る。それが中国に対抗する唯一の手段、と考えた。

 イラク・アフガニスタンから兵を引き、軸足をアジアに置き、米国の経済圏として取り込む。TPPの渦が拡大すれば中国は無視できなくなる。そのためにはアジアの大国・日本の参加が必要だ。やがて中国をも引き込めば米国に有利なルールでこの地域の経済統合が実現する。

 核開発競争を否定しノーベル平和賞を受けたオバマは武力に頼らない経済覇権を目論み、その手段がTPPだった。だが経済覇権に敏感なのはアメリカを代表する巨大企業である。本社は米国でもビジネスは世界に展開する。利益はホームグラウンドであるアメリカより、伸び盛りであるアウェーの途上国だ。

 アウェーのビジネスはやりにくい。審判である役所は相手側だ。アジアの途上国はそれなりに国内企業を抱えている。市場を外資に開放するほど寛容ではない。いくら米国企業が強くても、外資は政府に指図することはできない。

 途上国の制度や規制を変えるのは民間企業ではできない。米国が持つ強大な外交力を使うしかない。それがTPPである。

 TPP推進全米企業連合という団体がある。文字通りTPPを推進するためにロビー活動を展開する企業群だ。ファイザー、メルク、イーライリリーなど製薬大手、遺伝子組み換え種子のモンサント、穀物メジャーのカーギル、ITのグーグル、マイクロソフト、金融・保険、農業団体などアメリカを代表する多国籍企業や業界団体が顔を揃えている。

■優勝劣敗のアングロサクソン型価値観で世界を染めればいいのか

「年次改革要望書」(正式には日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書)は米国が日本に求める改革リストで、多国籍企業の要望が土台になっている。米政府は二国間協議で市場をこじ開け、企業を後押しする。TPPはその地域版だ。輸出が増えれば国内で雇用が生まれる。現地で稼ぎ利益が出れば投資収益が米国に還元される。

 血なまぐさい戦争より、交渉で市場を取り込むほうがスマートで平和的と、リベラルなオバマは考えたのだろう。

 グローバル化した経済は、国家間の損得を超え、多国籍企業の草刈り場となっている。国境という制約、国ごとに違う規制を撤廃すれば、強いビジネスがますます強くなる。TPPのキーワードは規制撤廃と競争だ。効率が悪ければ競争に負ける。生き残りを賭け、競争に参加する。だが、勝ち残る者を善とするアングロサクソン型の価値観で世界を染めればいいのか。

「競争神話」だけが価値ではない。対等な競争条件がない中での競争に晒される不幸もある。文化や歴史を踏まえ異なる価値観が経済やビジネスにあってもいい。

 政治家を志したオバマは「競争の敗者」の側に立っていたのではないか。大統領になると個人の思いでは動けない。選挙キャペーンには膨大な資金がいる。大口の支援者はロビーストを介し、政策提言を携えてやって来る。資金と情報と票を抱える多国籍企業は大統領の「圧力団体」でもある。

 ヒラリーにとっても同じだ。「中間層重視の経済」「医療保険制度の拡充」を掲げ、市民派に支持を広げて選挙を戦う彼女ではあるが、多国籍企業を敵に回す不利は分かっている。リベラル派の同志ペロシ議員のように明快な発言はできない。

 共和党は「小さな政府」で、市場に政府が介入することを嫌う。競争原理や規制緩和を重視するTPPは推進だ。そのTPPをオバマが担いでしまったことからボタンの掛け違いが始まった。

 議会の逆転はその結果起きた。TPP推進派はホワイトハウスと共和党。反対は民主党リベラル派。その中核にヘロシ議員がいる。下院の評決を逆転するため、時間の猶予をもらったオバマ大統領は、民主党議員の切り崩しにとりかかるが、ヒラリーさえ批判的だ。

 アメリカ主導と見られていたTPP交渉が挫折するかもしれない。日本の国会やメディアはただ傍観するのか。

 秘密交渉の裏で、多国籍企業の権益拡大が進むTPPというシステムは、日本社会にどんな影響をもたらすのか。ヒラリーのジレンマは決して他人事ではない。


 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
1. 2015年6月18日 06:33:53 : jXbiWWJBCA

TPPで競合に曝される労働者の支持が多い民主党は、反対派が多いから、ヒラリーが慎重なのは当然

2. 2015年6月18日 12:12:56 : snAc501eHi
TPPは、国民の主権を、大企業に渡すもの。

アメリカ国民だって、許しはしませんよ。

日本国民は、この事実知らされていないところが民主的でないのだ。
社会の主権が国民から、大企業に乗っ取られるのです。
騙して導入しようとしているのが、自民党・公明党です。
大阪市民は、大阪市の自治権を渡さなかったですね。
橋下に騙されませんでした。
日本国民も、賢くなれば、そうするでしょう。

全世界の民は、許すわけがないのですが、、、、
自治権を得るために、戦ってきたのが歴史なのですからね。

経済奴隷になりたいなら、TPP導入賛成しなさい!


  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民97掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民97掲示板  
次へ