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作家 架神恭介氏
禁断のヨイショ! 社長に「悪魔のささやき」でライバルをはめる
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150617-00015507-president-bus_all
プレジデント 6月17日(水)9時15分配信
仕事ができて、上司に可愛がられているあの憎きライバルを引きずり落としたい──。でも、品格を落とすマネはしたくない。そんなあなたにとっておきの技術を伝授!
一歩進んだ、より効果的な讒言にトライしましょう。「ライバルが非常に効率的で役に立つ、従来の方法を一新するアイデアを持っている」と社長に告げるのです。
上司に嫌われる人間とはどのような人間でしょうか? そう、正論を述べ、常に正しく、結果を出す部下ですね。もちろん無能だとか怠惰だとか、ほかにも嫌われる理由は多くありますが、あなたが蹴落としたいライバルは有能なはずですから(無能なら蹴落とすまでもありませんね? )、これらには当てはまりません。しかし、有能で正しいヤツはそれだけで煙たいものなのです。会社というものは、必ず非効率な業務システムを持っているものです。
歴史のある大企業であればいくつものレガシーシステムのつぎはぎで動いているのが普通であり、新しい小さな会社では未整備のルールがあり、新興の大企業では部門間の連携に問題を抱えています。有能なライバルはそれらの非効率性についてすぐに気付き、日頃から問題意識を抱いているに違いありません。それらに対する抜本的解決案などをFacebookなり酒の席なりで迂闊にも漏らしていたならチャンスです。それを上司が知ったなら、それがどれほど正しく、非の打ちどころのないアイデアであろうとライバルは必ず遠ざけられることになるでしょう。そのような人間を社長が好むはずがないからです。
というのは、社長という人種は一般的に言って嫉妬深く、自分より優秀なヤツは総じて嫌いです。またシステムが非効率的であろうと、それは彼が一度は決めたことですから、「おれの言うことが聞けないのか」との思いを抱くことでしょう。社長は自分が会社を回しているという自覚を他の何よりも優先するため「ちゃんと言うことを聞く部下」が大好きです。「言うことは聞かないが結果を出す」ライバルのような人間よりも、「言うことを聞くが結果は出せない」部下のほうを必ず可愛がります。
そういった社員に対して社長は、慈愛に溢れた眼差しを向けて、「**くんは確かに結果を出せなかった。しかし、わしは結果よりも彼の努力こそを評価したいのだ」と言うのです。なお、「言うことを聞かないヤツ」が結果を出せなかった場合、社長が彼の努力や過程を評価することは断じてありえません。
もちろん社長の中には現状のシステムの問題点を認める者もいることでしょう。しかし、ライバルが煙たがられることには変わりありません。まず、新しいことは、それがどれほど的確で効率的であろうと、導入にリスクとコストが付き物ですし、従来のシステムにより何らかの利益を得ていた層は変革を嫌がるからです。なにより、そんな大掛かりなことをするのは面倒臭いです。面倒臭いから絶対やりたくないけど、言ってること自体は正しくて否定できない。上司から見ればすごく嫌な部下でブチ殺したいと思うことでしょう。
なお、社長が間違って乗り気にならないよう、「**さんの言ってることは正しいけど、現実には〜」などとマイナス面を過度に強調して水を差しておくことをお忘れなく。同時に、ライバルに直接ハッパをかけて尻を押すのもいいでしょう。「おまえこそ新しい時代に必要とされているリーダーだ! 」「腐りきったこのシステムを突き崩せるのはおまえしかいない! 」などと調子のいいことを言って囃し立てましょう。ライバルがその気になって本当に社内改革に動き出せばもう勝ったようなものです。会社も社長もそのような新しい変革など誰も望んでいないからです。
さらにライバルの失脚を盤石なものとするため、彼に以下のような内容が書かれているビジネス系の自己啓発本を勧めるのもいいでしょう。ある自己啓発本には「社内の人と飲みにいったりするな」などというアドバイスが書かれています。社内の人と酒を飲んでも世界は広がらず、同じメンツでは新しく得られる知識もない、自分が勉強する時間を浪費するだけであり、そんなのは全く無駄な行為であると、そのような理屈です。
確かにこれはチームワークを要せず、個人主義的で、結果がすべてという職場であれば的を射た助言であり、一面の真理ではあるでしょうが、しかし、ケース・バイ・ケースでもあります。時と場合によっては関係性維持や同僚のメンタルチェックなどのために身内飲みも必要となるでしょうし、何よりそれでは人間味というものがありません。このような自己啓発本を鵜呑みにし、実践するようなライバルであれば自然と評価を落としていくことでしょう。
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作家 架神恭介
1980年生まれ。広島県出身。早稲田大学第一文学部卒。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で小説家デビュー。『完全覇道マニュアルはじめてのマキャベリズム』『よいこの君主論』など著書多数。
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作家 架神恭介 撮影=村上庄吾
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