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期限が迫るギリシャ支援交渉では、今月18日のユーロ圏財務相会合が1つの山場になる〔AFPBB News〕
ギリシャがプレーしているかもしれない4つのゲーム 期限迫る支援交渉、まるで「理由なき反抗」のチキンレース
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44053
2015.6.17 Financial Times JBpress
(2015年6月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ギリシャで今年1月に急進左派が政権を握った時、新財務相のヤニス・バルファキス氏が経済学者であることが話題になった。『Game Theory: A Critical Introduction(邦題:ゲーム理論――批判的入門)』という共著もある学者が指導するのだから、ギリシャの交渉戦略では巧妙さや卓越した才覚が新たに発揮されるだろうと多くの人々が期待した。
しかし、数カ月が経過した今、ギリシャは友人と資金を使い果たしつつある。
デフォルト(債務不履行)の瞬間が迫る中、一部の同情的な評論家でさえギリシャ政府の行動には当惑している。
ギリシャは一体どんなゲームをプレーしているのだろうか。可能性があるのは以下の4つの仮説だ。
ゲーム1:ギリシャははったりをかけており、自分たちは勝てるとまだ思っている。
チプラス政権はまだ、欧州連合(EU)は欧州単一通貨という最も重要なプロジェクトが頓挫することを最終的には容認しないだろうと考えている可能性がある。政治的威信の失墜によるダメージも、金融危機が伝染するリスクも大きすぎるというわけだ。
しかし、当のEUは、ギリシャが今にもユーロから飛び出しそうだと考えるその瞬間まで、本気で譲歩することはないだろう。従って、ゲームの最終局面が近づきつつあるとEUが確信するには、ギリシャ政府内でカオスやパニックが生じた証拠が必要になるかもしれない。
ゲーム2:ギリシャははったりをかけており、今になってようやく計算違いをしたことを理解しつつある。
アレクシス・チプラス氏と急進左派連合(SYRIZA)は、EUの外交の舞台の新参者だ。1月の選挙に勝った時には、「財政緊縮」に反対する議論で勝つことも、同様な考え方をする仲間の国を欧州各地で見つけることもできると考えていた。
その意味でここ数カ月間は、彼らが欧州政治の現実を理解するための、痛みを伴う教育期間となった。バルファキス氏の理論は実際の場面では機能せず、同氏は「相手側に熟練のゲーム理論家」がいないことを嘆く事態になっている。
だが、SYRIZAが債権者らの条件を概ね受け入れる――あるいはユーロから離脱する――しかないと遅まきながら理解したとするなら、それはあまりにも遅すぎる。
ゲーム3:これはギリシャ国内の権力維持の問題だ。
ギリシャ政府の常軌を逸した交渉スタイルは、政府内が混沌としていることを示唆している。確かにSYRIZAのチームの経験や人材の不足を反映している面はあるが、ギリシャの国内政治がSYRIZAの行動を阻んでいる面もあるかもしれない。
SYRIZAはいくつかの政党の連合体であり、もしチプラス氏が債権者から新たな同意を得るのと引き換えに緊縮財政を受け入れると理解されることになれば、極左勢力はSYRIZAから離脱する公算が大きい。
多くの有権者も好ましく思わないかもしれない。つまり、EUと合意することは、チプラス氏の政治生命の終わりを意味する可能性があるのだ。
ゲーム4:実はギリシャはユーロから離脱したがっている。
交渉がまとまらなければ、グレグジットの可能性が高まることになる(写真はギリシャ国旗を背景に撮影された1ユーロ硬貨とギリシャの1ドラクマ硬貨)〔AFPBB News〕
SYRIZAに助言を行っている学者や政治家の中に、ギリシャは最終的にはユーロから離脱しなければならないと以前から考えている人々がいることは間違いない。
彼らは、債務の一部または全部の支払いを拒否して初めてギリシャ経済は負のスパイラルから抜け出すことができるのだと思っている。
そして、そうすることの対価はユーロからの追放になりそうだということも承知している。
さらに、ギリシャがユーロから離脱すれば、新しい通貨は変動相場制を通じてギリシャの競争力回復に役立つかもしれないと思っている。SYRIZAの中には、総じて言えばユーロとEUは彼らが拒絶する「新自由主義」経済と不可分だと信じている向きもいる。
難しいのは、ギリシャ国民の大多数がユーロ残留を望んでいるという世論調査の結果がある中でSYRIZAが政権の座に就いたことだ。
従ってギリシャ政府としては、SYRIZAはユーロ残留のために真摯に努力したものの、ドイツ人を筆頭とする理不尽な外国人によって追い出されてしまったのだという物語を作ることが非常に重要になってくる。
さて、ギリシャ政府が実際にプレーしているのはどのゲームなのだろうか。筆者は、すべてのゲームの要素が絡んでいるではないかと考えている。
■増幅する不確実性
決断を迫られるギリシャのアレクシス・チプラス首相〔AFPBB News〕
恐らく現時点においても、ギリシャ政府で意思決定の権限を持つ人々は1つ目と2つ目の選択肢の間を揺れ動いているに違いない。
つまり、EUは最終的に取引に応じると確信しているかと思えば、次の瞬間にはそんな取引はできないのではないかと不安になっているのだ。
チプラス氏の一見常軌を逸した行動の一部――国際通貨基金(IMF)に支払いを行うと約束しておきながら延期したことなど――は、同氏が国内で抱える政治的困難も反映している。
また、実際にギリシャのユーロ離脱を望んでいるSYRIZAの思想家のグループは少数派かもしれないが、危機が激化するにつれ、その数は確実に増えていくだろう。
何がギリシャ政府を動かしているのかを巡る不確実性が増幅される一方なのは、EU本部とドイツ政府の動機について並行する疑問を唱えることができるからだ。
以下に挙げる見方は、どれも同等の説得力を持つだろう。
ドイツ政府はギリシャの降伏を見込んではったりをかけている。
あるいは、アンゲラ・メルケル首相を取り巻くチームは、ギリシャが「合理的に振る舞う」と期待することで計算違いをした。
または、ドイツ政府はギリシャ政府と同様に国内政治に縛られている。あるいは、ドイツ、特に財務省には今、ギリシャをユーロから追い出すことを積極的に望んでいる人が大勢いる――。
■崖に向かって走るチキンレース
交渉のテーブルの片側の不確実性は反対側の不確実性を高めるばかりだ。もし双方が相手の計算が変わりつつあると考えたら、合意をまとめるために何をする必要があるかについて適正な評価を行うのが難しくなる。
残念ながら、現在ギリシャと債権者の間で繰り広げられている「ゲーム」は、ケンブリッジのセミナー室での高度な演習というよりは、むしろ映画「理由なき反抗」のワンシーンに似ているように見える。2台のクルマが崖に向かって突っ走っており、どちらのドライバーも相手が先に度胸を失うのを待っている場面だ。映画では、片方が崖から落ちてこのシーンが終わる。
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