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財務省が慌て始めた 超円安!「1ドル=200円」に行き着くという見方もある
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43643
2015年06月16日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
■「円」の没落を嘆く声
ほんの数年前には1ドル=70~80円台だったのに、いつのまにか100円台を突破。円安の勢いは増すばかりで、6月2日にはついに、約12年半ぶり安値である125円の大台にのった。
「130円超えも近い」
「いや、140円台まで行くだろう」
こんな声も聞こえてくるマーケットを横目に見ながら、止まらない円安に危機感を募らせている巨大組織がある。
財務省、である。
東京・霞が関にたつ財務省本庁舎。その4階にある第3特別会議室で、今春から「円問題」についての議論がひっそりと開始された。
舞台となっているのは、関税・外国為替等審議会の外国為替等分科会。財務省国際局が事務方を務め、日銀マン、金融に精通した学識者から、商社、銀行、メーカーなどの幹部までが委員に名をつらねる「為替インナーサークル」である。
ここで今年の議論のテーマとして俎上に上がったのが、「円問題」。世界経済が米ドルへの依存をますます強め、さらに中国の通貨・人民元が台頭してくる中で、円の地位が地滑り的に低下している現状へどう対処すべきが話し合われている。
「日本は'80年代から円を国際的な通貨へと変えていこうとし、失敗した」
「東京外国為替市場がシンガポールに抜かれてしまった」
「円の世界というのは国際マーケットから隔離されているともいえる」
今年は3月から始まり、4月、5月、6月と4度開催された会議の議事録には、円の「没落」を嘆くこうした声がこれでもかと書き残されている。
会議に提出された資料を見ても、日本が貿易を行う際に輸出でも4割弱、輸入だと2割ほどしか円建てで行われていないといった「円外し」の生々しい実態が示されている。
会議では、財務官僚たちも、
「経済実態自体が円の積極利用を推奨していない」(浅川雅嗣・国際局長)
「通貨の問題という主権国家の根本にかかわること」(神田眞人・国際局総務課長)
などと発言。円がグローバル経済の中で存在感を失いつつあることに慌てている様が浮かび上がる。財務省関係者が言う。
「一般的には円安の理由として、『ドル買いの裏返しに過ぎない』などと語られています。しかし、為替のプロの見方は違う。止まらない円安の裏に、『日本の国力の低下』を見ているわけです」
■「円安」はいいことなのか
ここで上のグラフをご覧いただきたい。
これは「ドル建て」で見た米、中、日、独の名目GDPの推移を示したものだが、米中が右肩上がり、独も成長が見られる一方で、日本だけが20年前よりも経済が縮んでいる。このグラフを作成したシグマ・キャピタル・チーフエコノミストの田代秀敏氏が言う。
「日本では名目GDPが'13年に1・8%、'14年は1・4%ほど成長したと言っていますが、それはあくまで『円建て』での話です。ドル建てで見ると、'13年はマイナス17%、'14年もマイナス6%。これが世界から見た日本のリアルな姿なのです」
日本では政府の「宣伝」によって円安は日本経済にとっていいことだという認識が広がっているが、実態は日本に未来がないと見た投資家たちが円売りに走っているわけだ。
さらに言えば、日本に絶望した投資家たちが円を売り、その円安がまた日本経済の「体力」を消耗させ、さらに円売りが加速する……という悪循環がすでに始まっている。その先には、「1ドル=200円にまで行き着く」という見方すら出てきているのだから、怖ろしい。
具体的に見ていこう。
まず、政府は「円安で製造業が潤い出した」、「円安で外国人観光客の消費が活発になった」などと円安幸福説を垂れ流すが、これは都合のいい「作り話」に過ぎない。三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部長の鈴木明彦氏が言う。
「確かに輸出の金額は増えていますが、単に円換算での売り上げが増えているだけで、輸出の数量は増えていません。日本製品の競争力が必ずしも高くないからで、円安で日本企業の『稼ぐ力』が増えたわけではない。
■ 統計のまやかし
海外からの旅行者は円安で日本での観光や買い物が割安だからと国内で大量におカネを落としてくれるようにもなりましたが、これは別の見方をすれば、日本のサービスを安売りしていることと同義です。安売りし過ぎると、『日本のサービスの値段はこの程度だ』という認識が定着してしまいかねない」
6月2日には厚生労働省が、実質賃金が2年ぶりにプラスに転じたと発表。また、5月末の政府統計では完全失業率が18年ぶりに低い水準になったと示された。
こうしたデータをもって、安倍政権は「賃上げ効果がでてきた」、「経済は着実に改善している」と胸を張っているが、これも「統計のまやかし」である。エコノミストの中原圭介氏が言う。
「円安が始まって以来、日本人の賃金は下がり続けています。確かに賃上げは行われていますが、物価上昇や消費増税の影響を加味した実質賃金で見ると、'12年を100ポイントとした指数では、昨年は95・5ポイント。実質賃金が2年ぶりにプラスになったといっても、実は民主党政権時より実質賃金は下がっているわけです。
失業率が低下しているのも、'12年まで概ね十数万人で推移していた生産年齢人口の減少幅が、'13年と'14年にそれぞれ117万人に達したからにすぎません。約230万人が2年間で一挙にいなくなったのだから、人手不足に陥って求人倍率が上がるのは当然です」
経営コンサルタントの加谷珪一氏も言う。
「すでに日本の相対的貧困率(一定水準以下の所得しかない人の割合)は16%に達しています。これは世界で最も格差が大きいと言われる米国と同レベル。要は先進国で最も高く、欧州諸国の倍の水準です。国際競争力の低下と円安で日本人はどんどん貧しくなっている」
■なぜ日本の中枢は円安を止めようとしないのか
実は、前述の財務省の外国為替等分科会では、こうした円安の「デメリット」についても話し合われている。昨年12月の会合で、委員などが「民間すべてで円安の利益が感じられない」、「円安で株安というリンクになっていくと非常に危険だ」と発言。さらに踏み込んだ次のような発言まで飛び出しているのだ。
「外貨建てで見ると日本の優良企業が非常に割安となっています。そのような企業を買って、世界各国にある拠点をばらばらにして売るのが一番手っ取り早く儲けられる方法じゃないかというようなことを言う人もいたりしまして、海外のファンドなどは近いうちにそういうことを考えてくるのではなかろうかというお話も聞きます」
日本人はただひたすらに貧しくなり、優良企業は海外勢に買収されて切り売りされる—それが超円安の近未来予想図というわけだ。「日本の中枢」はそんなことをわかっているのに、なぜ円安を止めようとしないのか。
■もはや「打つ手」がない
「'98年に日米協調介入で円安をストップさせたことがありましたが、現在は同じようなことはできません。日本銀行が大規模な量的金融緩和策(=円安促進要因)を続けている限り、財務省が円安を止める円買い介入をするのは、政策に整合性がないと受けとめられます。そんなことをすれば、日本政府への不信感が高まり、さらなる円売りを招く可能性すらある」(FPG証券社長の深谷幸司氏)
要するに、「打つ手」がないのである。かくしてブレーキの壊れたスポーツカーのように、円安は制御不能状態の猛スピードで進むリスクに直面する。前出・田代氏が言う。
「現在のように円安が急激に続く状況では、オーバーシュートする可能性も否定できない。つまり、円安が極端に進んでしまうのです。当局の制御も効かないので、数ヵ月間に30円、50円と円安が進む事態もあり得ます」
現在の1ドル=125円から30円、50円と円安になるとすれば、確かに前述した1ドル=200円も現実味を帯びてくる。
「現在のような急激な円安状態が続けば、景気への悪影響も無視できなくなる。景気が悪くなれば、金融緩和のデメリットとして財政再建の遅れが意識され、国債が売られることもないとはいえない。いくら日銀が大量に国債を買っても、金利が上がって、株も売られる。円、国債、株のトリプル安が直撃する」(前出・鈴木氏)
「週刊現代」2015年6月20日号より
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