http://www.asyura2.com/15/hasan97/msg/710.html
Tweet |
バングラデシュ・ダッカ郊外でのイスラム教徒の集会を終え、列車に乗り込んだ出席者ら(2015年1月11日撮影)。(c)AFP〔AFPBB News〕
甘く見て突っ込むと怪我するアジアインフラ市場 日本企業は無法の荒野を切り開けるか?
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44016
2015.6.16 姫田 小夏 JBpress
近年、アジアのインフラ市場が注目されている。2010〜2020年のインフラ関連の資金需要は8兆ドル。この巨大市場にいかにアプローチするか、日本企業も大きな関心を寄せている。だが、リスクあるアジア事業を日本企業はものにすることができるのだろうか。
インドのモディ政権は目下国内のインフラ整備に乗り出している。その目玉となるのが、10兆円規模の「デリー・ムンバイ産業大動脈構想」だ。日本とインドの共同プロジェクトとして注目を集めている。
このプロジェクトについて、拓殖大学の小島眞教授はこんな内幕を明かす。「鉄道事業は土木工事がカギになるが、日本のゼネコンは最後まで手を挙げなかった」
デリー・ムンバイ産業大動脈構想は、貨物専用鉄道を敷設し、周辺に工業団地や物流基地、発電所などのインフラを整備するものだ。しかし、鉄道敷設の土木工事入札に対する日本のゼネコンの動きは鈍かった。
「採算性の悪さなどが主な理由でしょう。また、今まで経験のないほど長距離の敷設であり、及び腰になった可能性もあります」(小島教授)
鉄道敷設のみならず橋梁建設など土木分野では、中国が力をつけてきており、日中の品質の差はほとんどなくなってきている。「むしろこの分野はコスト競争力のある中国勢が受注するのが自然」(途上国開発の専門家)だとも言われている。
手が上がらなかったのは日本の建設業界が疲弊しているからという面もある。2009年の「ドバイショック」で日本のゼネコンは体力を消耗しきってしまった。
また、都内在住の大手ゼネコンOBは「五輪が終わるまで、日本企業はアジア市場に目を向けないだろう」と言う。東日本大震災からの復興もまだ道半ばであり、海外案件にまで手を広げる余裕がないというのが実情だ。
■実は限定される日本企業にとっての「アジア市場」
バングラデシュは“アジアの最貧国”と言われているが、ここ数年は年率6%の高い経済成長が続く。また、“出稼ぎ富裕層”の国外からの送金は、繊維産業に次ぐ同国第2の外貨獲得源となっている。首都ダッカでは富裕層による高額品の需要が高まり、もはや実態はアジアの貧しい国ではなくなりつつある。
バングラデシュでは2013年、国会の総選挙が開催されたのだが、首都ダッカは荒れに荒れた。「ハルタル」と呼ばれるゼネストによって交通も生産も麻痺状態になり、日本からの経済視察団や訪問団も足止めを食らった。ハルタルを目の当たりにした日本の財閥系企業の出張者は「事業にならない」と踵を返した。バングラデシュの成長性に関心を注いでいたものの、提出した報告書には「時期尚早」の烙印を押した。
翌年、選挙も終わったダッカを、今度は同業の中堅企業の社員が訪れた。その社員が出した結論は、先の財閥系企業とは異なるものだった。同社は今、「世界で最も住みにくい都市」と言われるダッカで、事業に乗り出すべく積極的に動き出している。
政情が不安定なのはバングラデシュに限らない。アジアビジネスには、すべからく政治リスクが存在する。それに対して「君子危うきに近寄らず」なのか、はたまた「虎穴に入らずんば・・・」なのか。2社の行動は対照的だった。
「日本企業はアラカン山脈を越えられるのか」は、専門家の間でたびたび発せられる問いである。東南アジアと南アジアは、バングラデシュとミャンマーの国境を走るアラカン山脈で分けられる。日本企業がミャンマーに関心を持ってもその隣国バングラデシュに関心を向けないのは、日本には馴染みのないアラブ文化圏でもあるためだ。
日本企業にとっての「アジア市場」とは、煎じ詰めれば、ごく近隣のいくつかの国とマーケットに限定されている。
■情報収集が勝負の分かれ目
アジアビジネスを進めるに当たり日本企業の大きな課題となるのが、現地情報の収集だ。ビジネスが成功するか否かは情報量で決まると言っても過言ではない。
日本企業の情報収集先は、現地の日本法人やジェトロ(日本貿易振興機構)、領事館などが定番だ。さらに突っ込んだ情報収集となれば、現地人脈から得ることになる。しかし、もちろん簡単にパイプを作ることはできない。関係機関を接待し、しかるべき人脈への根回しなどが必要になる。
「中国で情報収集したければ宴席を利用することだ」と言われる。だが、これを実行している日本人ビジネスマンは意外に少ない。かつて中国に駐在していた外交官は自身の経験を踏まえ、「飯局を見極められるかだ」と語る。飯局、すなわち会食は、中国では囲碁や将棋の対極に通じる一種の主戦場としてとらえられている。
「私たちには『無駄飯は三度食え』という鉄則がある。最初はひたすらよもやま話に徹し、四度目になって初めて話の核心を切り出す」
中国のみならず、華僑が多いアジアでは情報収集のために宴席が最大限に利用される。そして、宴席にはふんだんに金をかける。
外交の場ではこの「飯局」を通し、誰が決定権を握るのか、その実力はどれほどのものかを見極めるという。ビジネスもまた同じだ。「飯局」は、相手が味方になるのか敵になるのかを探り合うための重要な場だ。中国には「飯局が成功すれば事は成就する」という諺すらある。
ちなみにこの外交官は駐在中、現地に同化するような服装で市井を回り、市民との対話を繰り返したという。中国という土地に慣れ親しみ、市民の生活に溶け込むことも「息の長い情報戦」の一環なのである。
■郷に従うと悲劇になることも
中国では「金」も情報を得るための重要な手段となる。すなわち贈収賄だ。中国企業は賄賂をビジネスの潤滑油のごとく活用する。
バングラデシュでも、社会構造に贈収賄がビルトインされている。贈収賄をいとわないという意味で、中国企業とバングラデシュの企業は相性がいいと言ってよい。お互いにビジネススタイルが似ているためか、最近は中国と共同事業を進める大手企業も少なくない。
ダッカに本社を置く有力コングロマリットのトップは、日本企業との仕事のやりにくさをこう漏らす。「日本企業はこの国の賄賂文化を知らない。賄賂なくしてビジネスが進まないことを、どうして理解しようとしないのだ?」。
「郷に入れば郷に従え」と言いたいのだろう。
しかし、安易に「郷に従う」ことは命取りになる。贈収賄に手を染めた結果、すべてを失った日本企業もある。
ベトナムで高速道路の建設工事を業務受注するために、現地高官に約80万ドルを贈賄した開発コンサルタンティング企業、パシフィック・コンサルタンツ・インターナショナル(PCI、事件後にコンサルティング事業から撤退)がそれだ。同社は2009年に不正競争防止法違反で東京地裁より有罪判決が下された。この事件は、いまだ「贈賄の悲劇」として日本企業の間で語り草になっている。
■骨のあるビジネスマンはどこへ?
アジア市場といっても、日本企業が食い込めるのは極めて限定された国、案件だというのが実情である。そして、それを担うことができるのもごく限られた一部の人材であると言えるだろう。
かつての商社をよく知る、ある日本人は、「1980年代までは骨のあるビジネスマンがいたものだが」と語る。今や、海外に行きたがらない商社マンすら現れるようになったというのだ。政府が商社のお株を奪い、海外でのビジネス案件をまとめようという時代になった。
「これからはアジア市場」と簡単に言うが、そこはルールもなければ透明さもない世界だ。日本企業の快進撃を期待したいが、すっかり大人しく優等生になってしまった今、現実は厳しいと言わざるをえない。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。