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危機マックと真逆?好調モスの秘密
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150613-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 6月13日(土)6時1分配信
日本マクドナルドホールディングス(以下、マクドナルド)は4月16日、15年12月期の連結純損益が380億円の赤字(前期は218億円の赤字)になるとの業績予想を発表した。01年の株式上場以来最大の赤字幅で、かつ2期連続の過去最大赤字幅更新になる。5月1日に発表した15年1-3月期の連結純損益も146億円の赤字(前期は13億円の黒字)。同期中の既存店売上高も前年同期比32.2%減だった。
経営の迷走も相変わらず歯止めがかからない。サラ・カサノバ社長が4月27日、「包括的な業績回復策」と自信満々に記者発表した「ビジネスリカバリープラン」も「社内の実態とかけ離れた机上プラン」と、株式市場関係者に酷評された。当日の記者会見でも、記者の質問にカサノバ社長は的確な回答ができず、記者席から「このプランは一体誰が立てたのか」との疑問が呈されるほどだった。
消費者の「マック離れ」に歯止めがかからない中、このところ、「賞味期限が切れたハンバーガー株」といわれるマクドナルドに対し、「新鮮なハンバーガー株」といわれるモスフードサービス(以下、モスフード)の人気が株式市場でジワジワと高まっている。経営コンサルタントは「モスフード再成長の軌跡をたどると、カサノバ社長の頭でっかちぶりが反面教師的に見えてくる」という。
●経営トップが自ら消費者に密着する努力
「マーケティングデータにうつつを抜かし、現場の実態を知ろうとしないカサノバ社長」(証券アナリスト)と対照的に、モスフードの櫻田厚会長は現場好きだ。今年3月25日の午後、櫻田会長は鹿児島市内のホテルにいた。モスフードが同ホテルの宴会場で開催した「モスバーガータウンミーティング」に出席するためだった。
同ミーティングは、同社が11年頃から持続的成長策として取り組んでいるダイレクトコミュニケーションの一環。櫻田会長と役員が一緒に全国47都道府県を巡回、消費者の声を直接聞くのが目的だ。狙いは、地域消費者から地域特有のニーズを経営陣が皮膚感覚で吸い上げることにある。マーケティングデータに基づき経営計画を立てるのが、チェーンストア経営の基本といわれている。だが、前出経営コンサルタントは「消費者の嗜好や消費行動が多様化した今日、このマーケティングデータ頼りが消費者ニーズとの乖離を生んでいる」と指摘する。
モスフード関係者も「今や消費者ニーズは全国一律ではない。地域ごとにニーズの有り様が異なる。それを確実に把握しようとすれば、地域消費者と直に接し、皮膚感覚でそれを感じるしかない。タウンミーティング開催も、櫻田会長のそうした認識が発端だ」と語る。
このため、同ミーティングは毎回、櫻田会長の経営方針説明とそれに対する質疑応答、櫻田会長・同行役員と消費者の懇親会の2部構成で組まれている。櫻田会長と役員が重視しているのは、いうまでもなく後半の懇親会だ。11年から開始した同ミーティングは、この日の開催で42回目。参加者は延べ2000人を超えた。今年中に47都道府県を一巡する予定だ。
同社が11年頃から取り組んでいるダイレクトコミュニケーションは、タウンミーティングだけではない。社員との「ランチミーティング」、FCオーナーとの「産直ツアー」、協力農家との「HATAKEミーティング」など多岐にわたる。
いずれも会場手配、開催告知と参加者募集など手間と費用がかかる。櫻田会長はじめ経営陣もそのために忙しい時間を割かねばならず、モスフード側の負担は決して小さくはない。
「消費者との距離を少しでも縮めるために、ダイレクトマーケティングはやめられない。経営トップが毎回必ず出席しているので、ミーティングで吸い上げた消費者の声を商品開発や店舗運営改善などに即刻反映できる。そのスピード感が社内活性化要因になっている」(モスフード関係者)
●緑モス倒産
今でこそ好調なモスフードだが、02年から08年頃まで業績不振の暗いトンネルから抜けられず、経営も今のマクドナルドのように迷走していた。
外食産業市場は1997年の売上高29兆円をピークに縮小に転じ、それと軌を一にしてモスフードの売上高もそれまでの毎期増加から減少に転じた。「開店すれば客が集まる」時代から採り続けてきた出店戦略「二等地戦略」が災いし、「駅から離れた裏通りのモス」から客足が遠のいた。遠のいた客は、駅前のマクドナルドやロッテリアへ流れていった。
東京区部のあるFCオーナーは「98年以降、売り上げが坂を転げるように下がり、02年には採算ギリギリになった。以降も、黒字の月より赤字の月のほうが多かった」と振り返る。業績不振が続くと、それまでの方針がぶれ、経営が迷走する。その典型が04年に実施した、いわゆる「赤モス」から「緑モス」への転換だった。
緑モスは当時アメリカで流行した「ファストカジュアル」(レストランとファストフードの中間業態)を真似たもの。「レストラン並みのゆったりした快適空間」を確保するため座席数を赤モスより約20%縮小、店内は全面禁煙にした。それで男性客が遠のいた。本部には「緑モスに改装したら売上高が前年比30%も減った。『緑モス倒産』した店もある。櫻田は責任を取れ」との抗議がFCオーナーから殺到した。
モスフードはハンバーガーをつくり置きせず、注文を受けてから調理する「アフターオーダー」が創業以来の営業方針。必然的に配膳まで時間がかかる。収益悪化で店員を減らした店では、さらに時間がかかるようになってしまった。
前出オーナーは「緑モスに改装したら売り上げが減って、店員を減らす羽目に。その結果、配膳までの時間がかかる、掃除が行き届かず店も汚れる、それでまた客が遠のく悪循環にはまった」と振り返る。もともと注文から配膳まで7分ほどかかっていたが、店員を減らした店ではこれが15分から20分になり、緑モスはもはやファストフード店ではなく「スローフード店」になっていた。
●FC店離反が続出
商品開発も迷走した。緑モス改装に伴い、「付加価値の高いメニュー」として投入した1個1000円の高級ハンバーガー「匠味」。調理に手間がかかるため厨房が混乱、いずれの店も注文がピークとなる昼食時以外の限定販売にしたため、ほとんど売れなかった。
それに懲りた本部は、次に「低価格・高付加価値」を謳い文句にした500円前後のサイドメニュー「洋風ごはん」を投入。だが、ハンバーガーだけでもマクドナルドの9メニューに比べ21メニュー(当時)と数が多いモス。こちらも厨房が混乱。「洋風ごはん導入辞退」のFC店が続出した。
減り続ける客数に危機感を抱いたモスフードは、さらに「祖法に背く」愚挙も犯した。「値引きしない」という創業以来の営業方針に反し、「単品で50円、セットで100円値引き」のクーポン券を発行したのだ。それで客足はいったん戻ったが、クーポン券発行終了と共に客足がまた遠のいた。
どこまでも思い付きの販促策しか打ち出せない本部に見切りをつけ、モスフードとの契約を解消するFC店が続出。01年に1566店あったチェーン店は、09年に約1300店まで激減した。
●V字回復のカギ
業績回復のきっかけは「真心と笑顔のサービス」という創業の原点回帰だった。場当たり的な販促策で疲弊した現場力を回復するため、同社は最初に覆面調査を実施した。本部社員総出で全国のチェーン店を客として回り、接客品質を徹底調査した。接客サービスが販促の基本だからだ。
同社の接客マニュアルは、チェーンストアとしては非常にシンプルで、店員の判断に任せる部分が多い。消費者個々の利用状況に合わせた、柔軟な接客をするためだ。しかし、マニュアルがシンプルということは、店員の接客がばらつくことでもある。この矛盾をいかに解決し、チェーン全体の接客品質を高めるかが覆面調査の目的だった。
その結果、比較的業績の良い店では、店員がリピート客に対して「お砂糖は付けなくてよろしいですね」と尋ねるなどなんらかの声掛けを行い、客に好印象を与えている。一方、業績悪化に苦しんでいる店の店員の接客は機械的で、型通りの「いらっしゃいませ、お待たせしました」レベルの接客しかしていないことなどがわかった。
モスフードはそうした調査結果を全店長・全店員に「成功事例、失敗事例」として告知し、店員自ら接客改善に努めるよう促した。これにより、型にはまらない接客を保持しつつ、接客品質の全体的な底上げに成功した。
その上で、13年4月から「こだわり農家の野菜サラダ」をはじめとする新メニューを次々投入。それと並行して主力商品「モスバーガー」「テリヤキバーガー」「モス野菜バーガー」の17メニューも刷新するなどの商品力強化を図った。接客品質底上げを土台にした「手づくりの魅力的なメニュー」が競争力となり客足が戻り、売上高が前年同月比増を続ける店が増加していった。本部に対するFCオーナーの不満も消えていった。
モスフード関係者は、再成長の過程をこう振り返る。
「消費者に選んでもらえる飲食店になるためには、本部が消費者に近づくためにはどうすればよいのかを日々考え、肌で感じたニーズに基づき開発した商品。その商品を実際に買ってもらえる現場力。この2つの力が相乗効果を発揮しなければ、競争力が保てない」
マクドナルドの経営陣に欠けているのは、まさにこうした視点のようだ。
(文=田沢良彦/経済ジャーナリスト)
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