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図5 EVとPHVの世界生産台数。2020年にはEVとPHVの合計で250万台近くになると予想されている。ドイツや米国のメーカーが力を入れるPHVは、EVを上回る大幅な成長が見込まれている
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アップルだけじゃない EV開発競争、世界で過熱[日経新聞]
2015/6/11 6:30
世界で電気自動車(EV)の普及が加速しようとしている。日本市場では伸び悩んでいるが、欧州や米国などで販売が拡大。海外勢を中心に新型車投入を積極化する。2017年頃には価格が手ごろで航続距離が300km以上のEVが相次いで市販される。近距離移動では、実質的にEVとして使われるプラグインハイブリッド車(PHVもしくはPHEV)の投入も本格化している。電池の性能向上や、軽量化が求められる車体へのアルミニウム合金や炭素繊維強化樹脂(CFRP)の採用など、技術革新も進む。自動車産業のものづくりを変えるEV・PHVの動向を世界規模で追った。
米Apple(アップル)がEVに新規参入する――。2015年2月にこのニュースが世界を駆け巡って以降、憶測を含むさまざまな情報が飛び交っている。「既に1000人規模の開発チームを設けており、米Ford Motor(以下、Ford)などから技術者を引き抜いている」「プロジェクト名は『Titan』と呼ばれている」「2020年までにEVを発売する予定のようだ」「名前は『iCar』になりそうだ」…。
「iPhone」で携帯電話を根本から変えたApple。日常的に製品を目にする身近な存在なだけに、畑違いのEVへの参入は、自動車業界の関係者だけなく、一般消費者も強い関心を示した。
■「普及の可能性」を示唆
AppleのEV参入の動きは何を意味するのか。
「Appleはスマートフォン(スマホ)やタブレットなど最もエキサイティングな市場に身を投じてきた会社だ。次に狙うのがEVなら、それが大きな成長を期待できる市場であることを意味するのだろう」。米General Motors(以下、GM)で、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)向けの電池パックを担当するSenior ManagerのMartin Murray氏は、こう指摘する。
Appleは一部の高額所得者だけを相手にするのではなく、一般消費者の手が届く価格の商品を市場に投入して成長してきた。そんな会社がEVに参入するなら、マスマーケットを狙うのは自然な流れだ。
もちろん現時点では、EVの販売台数は限られている。ガソリンエンジン車と比べて価格が高かったり、航続距離が短かったりするといった課題があるからだ。米Tesla Motors(以下、Tesla社)の高級セダン「Model S」の航続距離は500km程度だが、価格は日本で800万円以上する。日産自動車の「リーフ」は車両本体価格が約266万円(税込み)と手ごろだが、航続距離は228km(JC08モード)と短い。
このためEVは現時点ではニッチ市場向けのクルマの域を出ていない。だが、価格や航続距離などの課題を乗り越えて、EVが多くの人に支持される時代が到来する可能性があることを、AppleのEV参入の動きは示唆する。
■2017年前後に普及価格帯のEV
自動車各社が手ごろな価格で航続距離も長いEVを相次いで投入する。そんな時代が間近に迫っている。
2015年2月、GMは新型EV「Bolt」を発売する方針を明らかにした(図1)。価格は3万米ドル(約360万円)程度で、航続距離は200マイル(約320km)以上を目指す。2017年の発売を計画していると見られる。普及価格帯を狙う価格と通勤に十分な航続距離は、EVでボリュームゾーンのクルマ市場に切り込もうという、GMの本気度を象徴している。
2017年には、Teslaも3万5000米ドル(約420万円)のEV「Model 3」の投入を予定する。航続距離はBoltを上回る水準になる見込みだ。ほぼ同じタイミングで、日産自動車もリーフの次世代モデルを投入すると見られる。現行モデルのような手ごろな価格でありながら、航続距離は300〜400km程度を目指すようだ。
EVに注力する動きは世界で広がっている。とりわけ熱心なのはドイツの自動車メーカーだ。BMWは2013年11月に航続距離が最大300kmのEV「i3」を発売し、累計で2万台近くを販売している。Volkswagen(以下、VW)も2014年に小型車「Golf」のEVモデル「e-Golf」を欧州で投入。VW傘下のAudiも2015年3月に高級スポーツカータイプのEV「R8 e-tron 2.0」を発表した。同車の電池容量は92kWhで、航続距離は450kmに達する。
■PHVにも力を注ぐドイツ勢と三菱自動車
注目されるのは、EVに加えて、PHVを投入する動きが広がっていることだ。PHVは、満充電時にEVとして走行できる距離が50〜100km程度に達するモデルが増えている。毎日の通勤などの近距離移動では実質的にEVとして利用できる一方、エンジンを搭載するため長距離移動もできる。
「次世代車のパワートレーンの本命としては、PHVが有望だ」。三菱自動車の電動車両事業本部長で常務執行役員の岡本金典氏はこう言い切る。例えば、三菱自動車が2013年に発売したSUV(多目的スポーツ車)タイプのPHV「アウトランダー PHEV」。このクルマは、欧州を中心にヒットしており、発売後2年間で約6万台を販売した。三菱自動車は小型SUVのPHVの投入も予定する。
ドイツの自動車メーカーは既に主力車種で多数のPHVを投入する方針を明らかにしている。2014〜2015年にかけて、VWは主力のGolfと中型セダン「Passat」のPHVをそれぞれ発売。同時期に、Audiも小型セダンの「A3」、大型セダンの「A8」、SUVの「Q7」で、それぞれPHVを投入する。BMWも2014年に発売した高級スポーツカーの「i8」に加えて、主力の「3シリーズ」や「5シリーズ」のPHVを発売する計画だ(図2)。
米国勢では、GMが2015年後半にPHV「Chevrolet Volt」の次世代車を発売する。EV走行距離は50マイル(約80km)と、2010年に発売した初代モデルから約43%伸ばした。
■厳しいCO2排出規制が背中を押す
なぜ、EVやPHVを開発する自動車メーカーが世界的に増えているのか。背中を押すのは、欧州や米国の厳しい環境規制だ。
欧州では、クルマの燃費ではなく、CO2(二酸化炭素)排出量に応じて規制値が定められている。メーカーごとに販売した新型車の平均CO2排出量は、2015年で走行距離1km当たり120g以下に規制されている。
この規制値は2021年に航行距離1km当たり95gにまで強化される見通しだ(図3)。燃費効率に優れるトヨタ自動車のハイブリッド車(HVもしくはHEV)の「プリウス」の現行モデルでも、欧州基準のCO2排出量は89gと、かろうじて達成できる水準に過ぎない。
図3 欧州のCO2排出規制のロードマップ。自動車メーカー各社は販売した新型車のCO2排出量の総平均を2021年に95g/kmにまで改善することが求められている
プリウスのような高性能なHVはクリアできても、大型車やSUVを含む全てのクルマの平均で、この規制値をクリアするハードルは極めて高い。自動車メーカーは、CO2排出量の平均値が規制値を超えた場合に罰金を支払わなければならない。
欧州の環境規制をクリアするには、エンジン車の燃費改善や、ハイブリッド技術を進化させるだけでは限界がある。このため欧米勢を中心とする自動車メーカーは、CO2排出量がゼロのEVや、CO2排出量を大幅に減らせるPHVの商品化に力を注いでいるのだ。PHVのCO2排出量を計算する際も、EVとして走行できる距離を考慮するため、HVやエンジン車と比べて有利になる。
米国でもZEV(Zero Emission Vehicle)規制がカリフォルニア州を中心に広がっている。ZEVとは、CO2など排出ガスを一切出さないEVや燃料電池車(FCV)などを指す。同州内で一定台数以上のクルマを販売するメーカーは、販売するクルマの一定比率をZEVにしなければならない。ZEVの比率は、2012〜2014年の12%から、2015〜2017年に14%、2018年以降は16%へと段階的に引き上げられていく。
この数値を達成できないメーカーは、罰金を支払うか、基準を超過してZEVを販売する自動車メーカーから「排出枠(クレジット)」を購入する必要がある。これまではZEVの定義に当てはまるEVやFCVが少なかったため、プリウスなどのHVも対象となってきた。だがHVは、2017年に発売される2018年モデルからはZEVの対象から外れる見込みだ。
■ハイブリッド車は「エコカーではない」
カリフォルニア州以外でもニューヨーク州やマサチューセッツ州などがZEVの普及に積極的だ。2014年には8州の知事が共同で、2025年までにEV、PHV、FCVなどのZEVを合計330万台普及させるという目標を発表している。
「厳しい規制を乗り越えるためには、EVやPHVの開発は欠かせない。当社もこの分野に積極的に取り組む」。FordのElectrified Powertrain EngineeringのDirectorであるKevin Layden氏はこう語る。同社は、既にEVとPHVを米国市場で投入しており、欧州でもEVの生産を開始した。Layden氏は「次世代のEVやPHVの開発を急いでいる」と話す。
ZEV規制は、「HVはもはやエコカーではない」という印象を世間に与える可能性があることだ。「ZEV規制で自動車メーカーが恐れるのは『環境に優しくない会社』という悪いイメージを持たれることだ。ZEVの対象から外れることで、『ハイブリッド車はエンジン車と同じくくり』と見られる可能性がある」と、三菱自動車開発本部設計マスター(EVコンポ担当)の吉田裕明氏は言う。
もちろん環境規制や自動車メーカーの思惑だけで、EVやPHVが消費者に受け入れられるわけではない。消費者にアピールできるような魅力がどれだけあるのかがカギとなる。
■購入者の満足度高いEV
まず、EVの明らかなメリットはランニングコストの安さだ。一般的なガソリンエンジン車と比べて、夜間電力を使ってEVに充電する場合の燃料コストは、5分の1から3分の1程度に抑えることができる。充電可能なPHVを、EV走行を中心に使っても同様のメリットが得られる。この他、モーターならではの優れた加速性能も魅力だ。
EVを購入したユーザーの満足度はおおむね高い。米Consumer Reports誌の2014年の満足度調査では、全ての自動車の中でTeslaのModel Sが2年連続で首位となり、購入した人の98%が再び買いたいと回答した。日本でEVの購入者を対象にした別の調査でも、75%の人が再びEVを購入したいと答えたという。
にもかわらず、EVの普及に時間がかかっているのはなぜなのか。「最大の課題はやはり航続距離にある」。日産自動車のリーフの車両開発主管である門田英稔氏は、EVの先駆者としての実感を込めてこう語る。航続距離が200km強であることがネックになり、リーフの販売は当初期待したほど伸びていない。航続距離は長くても、800万円以上もするModel Sのような高級車は例外的な存在と言える。
だが、航続距離の問題は、電池の性能向上とコスト削減が進むことで改善されていきそうだ。「2010年頃と比べてリチウムイオン2次電池のkWh当たりのコストは5割以上下がっている」。韓国LG Chemの日本法人であるLG化学ジャパンで、電池チームのチームリーダー(部長)を務める韓碩眞氏はこう指摘する。
Teslaがパナソニックと共同で建設を進める次世代の巨大リチウムイオン2次電池工場「Giga Factory」も、電池コストを現在よりも3割以上削減することを目指している。
■進む急速充電インフラの整備
急速充電ステーションの数がガソリンスタンドと比べてかなり少ないという課題も改善に向かう。国や地方自治体の支援に加えて、EVメーカーも独自にコンビニエンスストアやホテル、商業施設への設置を進めている。
2015年秋までに急速充電ステーションの数は日本国内で6000カ所になる見込みだが、「その後2〜3年でガソリンスタンドと同程度の3万カ所くらいに増える可能性がある」(日産自動車の門田氏)。
EVをケーブルで充電器に接続する手間が省けるワイヤレス(無線)給電技術の開発も進む(図4)。給電装置を設置した駐車場にクルマを止めるだけで簡単に充電できる技術で、規格策定に向けた動きが各国で進んでいる。日産自動車などの自動車メーカーに加えて、通信機器向け半導体メーカーの米Qualcomm(クアルコム)などが技術開発に取り組む。ワイヤレス給電が次世代のEVやPHVで採用されれば、エンジン車にはない使い勝手を実現できる。
図4 日産自動車が技術開発を進めるEVのワイヤレス給電。電磁誘導方式で、地上送電ユニットから車載受電ユニットに送電する。同様の仕組みのワイヤレス給電技術をさまざまなメーカーが開発している
EVやPHVは車種が少なく、消費者の選択の幅が狭いという課題も、欧米勢を中心とする自動車メーカーが本気になって開発を進めていることから大幅に改善されそうだ。
米IHS Automotiveは、EVとPHVの世界生産台数が、2014年の40万台弱から、2020年には250万台近くになると予想する(図5)。もちろん世界で約9000万台という市場全体からするとパイが限られているのは事実だ。しかし巨大な自動車産業で、際立って高い成長率を期待できる市場がEVとPHVであることは間違いない。
さらにEVやPHVには、世界が直面する環境問題への対処に役立つという“錦の御旗”がある。このため国や自治体によっては、高速道路や都市部の道路の優先レーンを走行できたり、補助金が支給されたり、税金が軽減されたりするといった優遇措置も目立つ。
■迫られるものづくりの革新
EVとPHVの市場拡大は、自動車のものづくりを大きく変化させる。
車体では、重い大容量電池を搭載するため、エンジン車と比べて、はるかに高いレベルの軽量化が求められる。このため各社は鋼に代わる新素材の採用に積極的だ。BMWはEVのi3で、車体骨格に量産車初の炭素繊維強化樹脂(CFRP)を採用した。TeslaもModel Sのプラットフォームにアルミニウム合金を採用する。
素材の変化に伴い、溶接に加えて、接着やリベット接合を採用する必要が生じるなど、工場の生産ラインにおける車体の接合技術も進化を求められている。
電動化のレベルが高まり、高出力モーターとその制御技術も進化する。モーターのインバーター制御に用いるパワー半導体の需要も高まっていきそうだ。電池でも正極材などの材料の組み合わせを工夫して性能を向上させる動きが進んでいる。
EVやPHVは2020年までに自動車市場で存在感を大きく高める可能性があるが、日本ではエンジン車の燃費改善やHVに力を注ぐメーカーが多い。日産自動車や三菱自動車を除くと、EVやPHVの本格的な量産車を積極的に開発する動きはあまり目立たない。
とりわけEVに対しては、2010年前後に注目を集めたものの、期待ほど販売が伸びなかったため、消極的な国内メーカーも少なくない。EV用の電池や材料などへの積極的な投資を回収できず、業績が悪化する企業もあった。
だが今、世界を見渡すと、EVやPHVの投入を計画する自動車メーカーは目白押しだ。多くの新技術が盛り込まれるEVやPHVは、自動車のイノベーションのけん引役になる可能性もある。変化への対応が遅れた自動車メーカーは、グローバル競争で取り残されるリスクがある。あらゆる自動車メーカーが、EVとPHVに正面から向き合う時期が来ている。
(日経ものづくり 山崎良兵・近岡裕)
[日経ものづくり2015年5月号の記事を基に再構成]
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO87296840W5A520C1000000/?dg=1
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