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中国はこれからレアアースでどんな戦略をとるのか(4月のバンドン会議で、AP/アフロ)
中国は暴落した「レアアース」をどう売るのか 1キロ150ドルが今はたった2ドルに
http://toyokeizai.net/articles/-/72868
2015年06月11日 中村 繁夫 :アドバンストマテリアルジャパン代表取締役社長 東洋経済
■なぜ米レアアース最大手は、追い込まれたのか?
6月2日、アメリカ最大のレアアース(希土類)生産企業であるモリコープ社が、「3250万ドル(約40億円)もの社債利払いを見送る」とのニュースが飛び込んできた。
米大手紙などによると、破産申請も準備しているという。原因は世界のレアアースの約8割を占めるとも言われる中国が輸出緩和をしたことでレアアースの市況が悪化し価格が暴落、資金繰りに窮したからだ。
読者の皆様は、2010年9月、沖縄県の尖閣諸島での「中国船衝突事件」が発端となり、中国のレアアースの輸出が禁止されたことを覚えておいでだろうか。この事件をきっかけに、日本にもレアアースが入らなくなった時期が1年以上続いた。レアアースの国際市況は暴騰に次ぐ暴騰を記録したのだ。ここらへんの経緯は東洋経済オンラインの「日本が中国に『貿易戦争』で勝った日http://toyokeizai.net/articles/-/46267」で書いており、ぜひ振り返っていただきたい。
その間、アメリカではモリコープ社が、オーストラリアではライナス社がレアアースの生産を緊急に立ち上げたこともあり、両社は一過性ではあるが大儲けをした。
当時は「中国以外のルートからの安定供給が可能になるならレアアースがいくら高くても仕方がない」と考えたから、日本にとっては「天の恵み」であった。問題はここからだ。それを受けて、モリコープ社は増産体制を整えるために強気の投資を敢行した。
われわれのような、レアアースの専門家に言わせてもらえるなら、実はモリコープ社の安易な経営方針に対しては常日頃不安感を抱いていたので「やっぱりそうか、思ったより早くその日が来たな」といった気持ちだ。
当時、日本政府はレアアースの緊急輸入を実現するための特別開発予算を国会に提出し、モリコープ社やライナス社に投融資をすることで安定供給体制を何とか確立したのを思い出す。
一方、ベトナムやインドやカザフスタンのレアアース鉱山の開発にも日本政府と大手商社は奔走した。しかし、結果は思わしくなかったばかりか、なんのことはない、中国からは迂回ルートなどでレアアースがどんどん出てきたのである。これまでも中国が価格を操作して、国際相場を吊り上げたことは何度もあるが、中国以外の資源が市場に出てくると相場は暴落するのが常であった。
■原油どころじゃない!レアアースの価格は75分の1に
「中国の輸出制限はWTO違反」とのWTO裁定(2014年8月)を受け、中国は今年からは輸出枠を廃止。5月1日からはレアアースとタングステンとモリブデンの輸出許可証と輸出税も撤廃した。そしてその後に起こったことがこれらのレアメタルの暴落だったというわけである。
実は数か月前からすでにその予兆はあった。だが、今年5月になると堰を切ったように、多くの中国の輸出業者が(輸出許可証なしでしかも輸出税が免除されて輸出できるので)安値輸出を始めた。
ただでさえ中国の経済は行き詰まり感があったので、積みあがった滞留在庫を換金したい業者が安値輸出に殺到したのである。それにつられて全てのレアメタルも弱含みで推移したが、その中でも特にレアアースの値崩れは激しかった。
例えば代表的なレアアースの一つである「酸化ランタン」は2011年には1キロ当たり150米ドルしていたのに、今年6月にはついに同2ドルにまで暴落した。実に価格が75分の1になったわけだが、30年以上のレアメタルの取引経験がある私でも、商品価格がこれほど暴落したのは記憶にない。
WTOの精神とは自由貿易のルールを守り『国際貿易』を促進させることである。そのため、基本原則である「自由、無差別、多角的通商体制」の実現を図ってきた。自由貿易とは(関税の低減、数量制限の原則禁止)である。無差別とは(最恵国待遇、内国民待遇)であり多角的通商体制とは(保護主義的措置は許さない)ことを指す。
ところが、原則の実現はそう単純ではない。ルールを遵守するには「解釈の違い」もあれば「裏技」もある。国際貿易の裏舞台はまさに「貿易戦争」であり、もっと言えば「産業戦争」でもあり「資源戦争」でもある。今回の一連の問題は「レアメタル資源戦争」の特殊性を理解しないことから引き起こされたドタバタ劇だとも言える。
そもそも、 日本は世界一のレアアースの消費国であり、中国は世界最大の生産国である。たまたま中国の漁船が日本の尖閣諸島で衝突事件を起こし、海上保安庁が「漁民」を拿捕したことが発端になり、中国はレアアースの輸出禁止を行った。結果として、たった年間で12万トンしかない市場の90%以上を支配する中国は、輸出禁止の暴挙に出たのである。
当時、中国の政策を決定した官僚は素人でヒステリックな場当たり的な確信犯だった。従って、一時的にせよ市況が大暴騰することは必定だった。一方、「資源貧国」の日本はというと、大学教授などを利用して実現性に乏しいとしか思えない「南鳥島の夢の海底資源開発」などの情報をぶち上げるのが精一杯だったのである。
日本政府はレアアース開発の大予算を海外の資源開発に向けたが、それに乗ったのが大手商社や米国のモリコープ社、オーストラリアのライナス社だった。
私は「レアアース報道に潜むエネ庁と科技庁の温度差http://toyokeizai.net/articles/-/13613」(2013年4月10日)で、このままではモリコープ社が生産コスト割れとなり、同社が経営難に陥る危険性などを指摘したが、筆者は今がまさに、レアアースの歴史的な安値をつけている時だと確信している。
■中国は「日中協調」か、再び「悪行三昧」か
また、「レアメタル、レアアース問題にはウソが多すぎるhttp://toyokeizai.net/articles/-/13775」(同年4月24日)では、レアアースは日中関係の象徴であり、日本が環境技術(放射性物質の処理技術など)で協力する一方、中国も国内資源の安定的運用に加え海外のレアアース資源の開発を日本企業と協力しながら安全な開発に注力すればレアアース取引を安定化する事にもつながる」とした。
まさに、今レアアースの価格が最安値を付けようとしている時、日中ともレアアース産業の発展のために、真の知恵を出す時である。
さて、このあとはどうなるだろうか。中国がレアアースの輸出を停止した時、モリコープ社は値上がりを期待して増産体制に踏み切り、価格暴落の憂き目にあったわけだが、中国としては、中国以外の生産者を排除したいと考えるのは当然だ。
一方、価格下落に苦しむオーストラリアのライナス社も、今のレアアース市況が続くなら、遠からず銀行などに対するデフォルト(債務不履行)が起っても、何ら不思議ではない。
いやむしろ、両社ともいったんは「倒産」させて借金を事実上棒引きにして減資を行い、中国資本を含む他の企業による新たな経営に移行する可能性の方が高いのではないか、とも考えられるのだ。
これまでも、中国企業がモリコープ社とライナス社に出資するという噂は、マーケットでは出ては消えてきた。だが今度こそ「背に腹は代えられない」ので、両社の新経営陣が中国の資本を受け入れる可能性も皆無ではない。引き続き事態を注視して行きたい。
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