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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第128回 世界一のお金持ち国家
http://wjn.jp/article/detail/1746378/
週刊実話 2015年6月18日 特大号
本連載では、第1回から「国の借金問題のウソ」について繰り返し、取り上げてきた。理由は、いまだに日本には、
「日本は世界一の借金大国!」
と、二重、三重、四重のウソであるレトリック(巧みな表現)を使用する人がマスコミや政界に存在し、国民の多くが騙されたままであるためだ。
何しろ、大手新聞が3カ月に一度、財務省の記者クラブである財政研究会で配布された資料で「コピー&ペースト」した記事を書き、
「日本は国の借金で破綻する!」
「国の借金1000兆円突破!」
「国民一人当たり800万円の借金!」
などと煽り続けているのである。
筆者が講演会などで「国の借金問題のウソ」について解説すると、興味深い反応を受けることがある。質問者の中に、必死に「国の借金で破綻する」理由を探そうとする人が少なくないのだ。
筆者が統計データを用い、完璧に「ウソ」を否定しているにもかかわらず、懸命に頭を働かせ、国の借金問題を「創出」しようとする。
自分が「間違っていたこと」、あるいは「騙されていたこと」を認めたくない、いわゆる認知的不協和の一種なのだろう。困ったことに、この手の症状に陥った人は、「正しく考える」方法を知らないため、どれだけ思考を巡らせても真実にはたどり着けない。
「正しく考える方法」とは、複数あるが、「国の借金問題のウソ」について考えたいならば、とりあえず二つで大丈夫だ。すなわち「定義」と「ブレイクダウン(細分化)」である。
各種の「用語」の定義を考え、さらに数字を「一番大きな数字」からブレイクダウンしていくわけだ。
例えば、「日本は世界一の借金大国」というレトリックについて考えてみよう。このレトリックを「日本政府は世界最大の負債を持っている」と定義した場合、明確な「ウソ」になる。
とにかく、一組織として世界最大の負債を「絶対額」で抱えているのは日本政府ではない。アメリカ連邦政府である。
“世界一”という言葉を入れている時点で、言い逃れ不可能な「ウソ」だ。
そもそも、日本政府はいざ知らず、日本国は「借金大国」であるどころか、世界一のお金持ち国家なのである。「国の借金」という言葉の定義を考えればわかる。
「日本の借金」あるいは「国の借金」とは、本来は政府の負債ではなく「日本の対外負債」を意味する。
財務省統計によると、日本の対外負債は'14年末時点で578兆4160億円だ。確かに、日本は500兆円を超える「国の借金」が存在する。
とはいえ、日本は逆に945兆2730億円の「対外資産」を保有しているわけだ。結果的に、日本は366兆8570億円の対外純資産状態になっている。
純資産(=資産−負債)が多い人のことを「お金持ち」と呼ぶ。日本国の対外純資産は、2位の中国の1.7倍に達しており、世界最大だ。
日本国は「国家」として見た場合、世界一のお金持ち国家なのである。これは統計的に「歪めようがない真実」だ。
世界一のお金持ち国家「日本国」の中で「日本円が発行できる」日本政府が「日本円建て」で「日本国民から」借りているのが、財務省やマスコミのいう国の借金の正体である。
しかも、現在は日銀の量的緩和政策により、政府が実質的に返済しなければならない負債が、'14年末時点で70兆円も減っている。
言葉を定義していくだけで、国の借金のウソが次々に暴かれていく。さらに「一番大きな数字」からブレイクダウンすると、より真実がクリアになる。
日本の全経済主体は総計で6458兆円もの負債を保有している。とはいえ、負債があるということは、バランスシート(貸借対照表)の反対側に必ず資産もある。
「誰かがおカネを借りた(負債)とき、誰かが貸している(資産)」ため、負債と資産は必ず同額になるのだ。
というわけで、日本の全経済主体の資産総計は6836兆円だ。日本全体で見れば、資産が負債を379兆円上回っている。
実は、この「日本の資産総額」から「日本の負債総額」を差し引いた純資産が、先に登場した「対外純資産」そのものになる。若干、数字は違うが、379兆円の方は日銀統計の速報値段階の数字で、四捨五入などの理由からも財務省統計と差が出る。
図を見れば、政府(地方自治体含む)には確かに約1200兆円の「負債」があるが、同時に552兆円の「資産」もあることがわかる。しかも、552兆円は金融資産のみで、インフラストラクチャー(経済活動や社会生活の基盤を形成する構造物)などの固定資産は入っていない。
実は、日本政府の負債はネット(純負債=負債-資産)で見ると、対GDP比で他の先進国と同程度に過ぎない。
IMFなどの国際機関では、政府の負債はグロスではなくネットで見るのが常識である。例えば、「100億円の借金がある」人の銀行預金が99億9900万円あった場合、
「何だ、実質的な借金は100万円か」
という話になる。
何しろ、日本政府の金融資産額は「世界最大」(アメリカ連邦政府より多い)であるため、グロスのみの金額(負債額)をクローズアップさせ、ネット(純負債額)を語らないのは、異常としか言いようがないのだ。
国の借金のウソに限らず、我が国では様々なウソが真実であるかのごとく流布されている。この種のウソに騙されないためにも、読者には是非とも「正しく考える」を実践して欲しい。
三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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