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離婚マネー786万円!「年金分割」で損するのは夫か妻か
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150610-00015481-president-bus_all
プレジデント 6月10日(水)8時45分配信
■FPが、夫と妻にあえて真逆の「耳打ち」をする理由
「離婚したので、これからのお金を考えたいんです」
と、離婚したての方からご相談をいただいたときに、必ず説明するのが離婚時の年金分割のことです。
「なんですか、それ? 」
という言葉が返ってきたら、アドバイスは2つに分かれます。
ご相談者が、男性(会社員)の場合は、
「元奥様からの年金分割の請求がないことを願いましょう」
女性の場合は、
「元ご主人に、年金分割の請求はできそうですか? 」
と確認します。
男女でアドバイスが異なるには理由があるのですが、その前に、離婚にまつわるお金の話からお伝えします。
離婚を巡るお金で有名なのが、「財産分与」「慰謝料」「養育費」ですが、実は、この3つのお金に加えて、「離婚時の年金分割」があります。
▼意外と知られていない離婚時の年金分割
仮に離婚時に分割された厚生年金の「平均額」を65歳から85歳まで20年受け取るとしたら、その総額は768万円! (下記の年金分割(2)に出てくる「合意分割」月額3.2万円×12カ月×20年の合計額。婚姻期間10〜15年が主)。
おまけにこの分割された年金は一生のことなので、離婚時の年金分割は老後にも関わる大事なお金なのです。
離婚時の年金分割とは、「夫婦で支えあったからこそ、仕事をして、厚生年金保険料を納めることができた」という考えのもと、離婚する際には、結婚している間の厚生年金記録を当事者間で分けることができる制度です。
例を挙げると、夫が会社員、妻が専業主婦の場合、「夫が会社員として働けたのは、妻が家庭を守り、夫を支えてきたからでしょう」という考えから、結婚していた間の夫の厚生年金の半分を元夫ではなく、元妻が受け取ることができる制度なのです。
注意点は、分割の対象となるのはあくまでも「厚生年金(共済年金)」ということと、離婚時の年金分割には2種類あるということです。
【年金分割パターン(1) 3号分割】
第3号被保険者期間の厚生年金記録を2分の1ずつ分割する。
→(例)夫が会社員、妻が専業主婦の夫婦が離婚した場合で考えてみましょう。
妻が第3号被保険者(夫の扶養)となっている間に、夫が納めた厚生年金保険料に対する厚生年金が年10万円だとすると、この半分の5万円が、妻が将来受取可能な金額となります(夫の年金は5万円分減ります)。離婚後、仮にずっと独身で定年まで仕事をして厚生年金保険料を払ったとして、その厚生年金額が年30 万円ならば、元妻が将来もらえる厚生年金額の合計は5万円+30万円で35万円になります。つまり、元妻が自分の年金を受け取る際には、離婚時の3号分割で受け取った5万円も、自分の年金として一生受け取ることができるのです。
<平均データ>
・申請件数:769件
・最も申請が多い年代:30代
・最も申請が多い婚姻期間:2〜3年
・離婚による年金額の変動:月額約2000円(年間約26,000円)
※出典:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」より
続いて、「年金分割パターン(2) 合意分割」を見ていこう。
■「時効の壁」で年金をもらい損ねる元妻
【年金分割パターン(2) 合意分割】
婚姻期間中の厚生年金記録があり、当事者の合意または裁判による按分割合が決まった場合、最大半分までを分割する。
→(例)夫婦共働きの会社員(第2号被保険者)で、結婚している間に夫が納めた厚生年金保険料に対する夫の厚生年金は30万円、妻は20万円だった場合で考えてみましょう。
最大半分まで分割ができるので、夫婦でいた間の合計50万円を2で割った25万円がそれぞれの受取額ということになります。つまり、将来元夫が年金を受け取るときには、本来の受取額(30万円)よりも5万円減額となり、元妻は結婚していた間の元夫からの年金5万円を、自分の年金(20万円)に上乗せして受け取るのです。
<平均データ>
・申請件数:17,462件
・最も申請が多い年代:40代
・最も申請が多い婚姻期間:10〜15年
・離婚による年金額の変動:月額約32,000円(年間約387,000円)
※出典:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」より
さて、ここまで離婚時の年金制度についてお伝えしましたが、冒頭のアドバイスを思い出してください。
男性は「元奥様からの請求がないことを願う」、女性は「離婚時の年金分割の請求を! 」ということでしたね。
多くの家庭では、男性が会社員として働き、女性は専業主婦か仕事をしていても男性よりも収入が低いことが多いためにこのようなアドバイスになるのですが、ここには「時効の壁」があります。
▼年金分割の請求をあえてしない妻
離婚時の年金分割の請求は、「離婚の翌日から2年」と定められています。
そのため、年金を分割する側に立つことが多い男性には、元奥様が年金分割のことを知らないまま2年が過ぎれば、年金を分割しなくてもよいから、黙っておきましょう……ということになります。それを聞いた男性は「はい、そうします」と姿勢を正して、真剣な顔をして答えます。
その反対に、受け取ることが多い女性が相談にいらっしゃった時には、2年の時効がありますから、知らなくて請求していなかったという事態にならぬよう、離婚後の早い時期に元夫と話し合いをすることを考えるようにお伝えしています。
すると、女性の場合は意外と請求しようと思う人が少ないのです。「もう関わりたくないので、いらないです」という人や、「それを言ってまたもめるぐらいだったら、自分で働いたほうがいいです」という人もいます。女性の離婚時の覚悟の強さも請求率の低さと関連しているかもしれません。
もちろん、気持ちや経済的なことだけでなく、DV(ドメスティックバイオレンス)のように、離婚の原因や状況によっては、お金よりも命が大切! ということもあります。
これから離婚を考える方は、制度を知ったうえで請求する、しないを検討していただきたいと思っています。
■年金分割を請求するのはわずか「8%」
参考までに、平成23年の離婚は24万1370組です。それに対して、離婚時の年金分割が申請されたのは1万8231件。離婚者の中には、厚生年金は関係なく、国民年金だけに加入していた自営業夫婦もいらっしゃいますが、それでも離婚した夫婦の約8%しか請求していのが実態です。
なぜ、こんなにも請求率が低いのか。
前述した女性の離婚に対する気持ちもあるでしょうが、この離婚時の年金分割制度の認知後が低いことも8%という請求率につながっているのではないかと思います。
時効が2年と言っても、離婚届けを出した後から年金分割の話し合いをするというのは、時間的にも精神的にも労力がかかることが予想されます。
これから離婚届けを出される方は、「財産分与」「慰謝料」「養育費」に加えて、「離婚時の年金分割」も考えておいてくださいね。慰謝料は一時のものですが、年金は一生ものですから。
ファイナンシャルプランナー 前野彩=文
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