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男女の「おごり、おごられ」は単なるお金の問題ではない あなたを悩ます「めんどい人々」解析ファイル
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投稿者 rei 日時 2015 年 6 月 10 日 08:52:43: tW6yLih8JvEfw
 

 

男女の「おごり、おごられ」は単なるお金の問題ではない

 

 世の中にはびこる「めんどい人々」を分析し、解決策を探っていく当連載。今回は、ある「めんどい状況」について考えていきたい。それは、男女の「おごり、おごられ」問題についてだ。

男女平等の世の中でも、男性が女性におごるのは当たり前…?

 男女の「おごり、おごられ」については、度々ネットで議論になり、その都度、大きな盛り上がりをみせている。筆者も「おごり、おごられ」について、何度も記事にしてきた。

 結果から言うと、多くの女性が「デートでは男性におごってもらいたい、もしくは多めにお金を出してほしい」と思っている。サンケイリビング新聞社のサイト「シティリビングWeb」などの調査でも、7割の女性が「男性にデート代を支払ってもらいたい」と考えていることが分かったそうだ。

 一方、男性も「できれば、女性にデート代をおごりたい」と思っている人が多い。財布の状況や相手との関係性によって違ってくるとは思うが、「絶対に割り勘でなければ嫌だ」と意固地になっている男性は少ないはずである。

 だから、記事にするまでもなく、初めから答えは出ているのだ。「可能な限り男性がおごり、難しい時は少し多めに払うか、割り勘にする」という平和な解答が簡単に導き出せそうである。

 それなのに、なぜ「おごり、おごられ」の議論がこんなにも面倒くさくなるのか。

 筆者が分析したところによると、「議論の非対称性」「社会的な承認欲求」「コミュニケーションの問題」という3つのキーワードに集約されることが分かった。

男性のカツラ代を負担してくれるのは誰か?

 まず1つ目のキーワード「議論の非対称性」について。

 女性が男性に「おごってほしい」と考える理由によくあるのが、「女性のほうが私生活にお金がかかっているから」というものだ。

 以前、ブロガーで作家の伊藤春香(はあちゅう)さんが自身のブログに投稿した「女の子が一ヵ月に使う美容費について。」という記事が反響を呼んだ。内容の要点をまとめると、「女子は美容費にお金をかけているんだから、男子はおごりなさいよ」ということ。そして、「あくまで主観」と断わったうえで、1ヵ月にかかる美容費を7万円と試算している。

 女性の「美しさ」に対する投資は、男女関係に必要な「経費」だという意見もある。

 しかし、筆者がダイヤモンド・オンラインの記事で反論したとおり、この主張は明らかに無理がある。女性に美容費がかかるからおごらなければならないなら、男性がカツラを購入した場合、その分の料金をおごってもらえるのだろうか。絶対にそうはならないはずだ。

 男性が美しい女性が好きなように、女性だってイケメンが好きなのだから、男性の「美しさ」に対する投資も認めてほしいところだが、カツラの経費を落としてくれる女性なんて、どこを探してもいないだろう。

 つまり、初めから議論が「非対称的」なのである。「男性は女性におごるべき」という結論が最初にあり、そこから議論がスタートしているのだ。

 この非対称性意見に対して、男性は違和感を覚える。「できれば、おごりたい」と思っている男性でも、こういった「はなから勝ち目のない議論」を吹っかけられると、バツの悪さを感じてしまう。

 相手がグーを出すことがわかっているのに、チョキを出し続けなければいけないジャンケンを永遠にさせられているような、なんとも言えない苦痛を感じてしまうのだ。

 さらに、「別に美容費をかけてくれなんて頼んでいない」などと反論しようものなら大変だ。たちまち、「ケチな男」の烙印を押されてしまう。「男性は女性におごるべき」という前提が覆らないかぎり、男性にとっては“無理ゲー”なのである。

 これが「おごり、おごられ」の議論が、面倒くさくなる原因の1点目である。

「おごり、おごられ」で支払われるのは「貨幣」ではない

 2点目は「社会的な承認欲求」についてだ。

 働く女性が増え、男性と女性との収入差は以前より縮まった。男性より稼いでいる女性も大勢いるだろう。それを理由に「割り勘にするべきだ」とする男性の意見もある。

 しかし、実際にはすでに指摘したとおり、「男性が女性におごるべき」という固定観念は、男女ともに強く残っている。この固定観念があるため、男性は「おごらなければ、男の沽券(こけん)にかかわる」と思うし、女性のなかには「おごられないと、女性としての価値を否定された気持ちになる」と思う人もいる。

 女性のなかに「絶対おごられないと嫌だ」という強硬派が一定数いるのは、これが原因だ。

 はあちゅうさんの記事ばかり参照して恐縮だが(筆者は彼女のファンなのだ)、「女子の賢者タイムは時間差でやってくる」という投稿では、食事は割り勘でよくても、男女の“機微”にかかわる状況では「男性に支払ってもらいたい」と考える女性が多いとされている。

 はあちゅうさんが記事中で「とにかく女子をみじめな気持ちにさせないことが重要」としていることからも分かるとおり、筆者に言わせればこの場合、「おごり、おごられ」の際に支払われるお金は「貨幣」ではなく、「承認」である。承認としての貨幣なのだ。

 男性は「男の沽券」を守るためにおごるし、女性は「女の価値」を守るためにおごられたい。その背景には、平成になって四半世紀以上経ってもなお日本人を縛り続けている古い固定観念があり、それは容易に崩すことはできない。

 だから、「男女平等なら、割り勘が当たり前だろ」という男性の意見は、ある側面では正しくはあるが、まったく説得力を持たない。固定観念に縛られた「社会的な承認欲求」がある限り、一般論では片付かない問題なのだ。

「可能な限り男性がおごり、難しい時は少し多めに払うか、割り勘にする」というリベラルで平和な結論は、こうして「めんどい議論」に絡め取られてしまうのである。

「おごり」に見返りを求める男性たち

 最後に「コミュニケーションの問題」を見ていこう。

 まず、「そもそも、デートとは何か」という問題がある。男女が食事をしに行くことを「デート」と思う人もいれば、そうでない人もいる。

 筆者が取材したところによると、「デートはおごってもらいたいけど、男友達との飲み会は割り勘」と考えている女性は多い。「その気がない人におごってもらうと、気があると勘違いされたり、変に恩着せがましく思われたりするのが嫌だ」というのだ。

 しかし、デートの基準は曖昧である。男性としては、「これってデートなの?」と聞くのも野暮だし、かといってデートのつもり満々でおごって、女性から拒否されてしまっても寂しい。まるで、答えの出ないポーカーゲームのようなコミュニケーションをしなければいけなくなる。

 実際に、筆者は付き合っていない女性におごるのは苦手である(おごることもあるが)。なぜなら、おごる行為自体が、相手に対して「自分は“男性”である」と表明しているように感じてしまうからだ。向こうの女性にとって筆者が“男性”でなかった場合、なんとも所在なさげな気持ちになってしまう。

 もちろん、女性にとっても面倒くさいコミュニケーションが発生する。「おごってもらうのが当たり前と思っている女性は嫌だ」という男性がたくさんいるからである。

 おごってもらう女性としては、いつ財布を出して“払うそぶり”を見せるのか、どのように、どのタイミングで感謝の気持ちを伝えるのかなど、複雑なコミュニケーションの作法に気を配る苦労が生じてしまう。

 さらに面倒くさいのは、男性の中には「おごった見返り」を求めてくる輩がいることである。

「年上の男性からおごってもらった飲み会の帰り道。その男性が突然、手をつないでこようとしたので断ったら、『えー、あんなにおごったじゃん!』と責められてしまいました。それなら、おごる前に『これには手つなぎ料も入ってるけど、どうする?』って聞いてほしいよ!と思いました。ちなみに、会計は5000円ほどでした……」(30代/女性)

 5000円ぽっちで、そこまで恩着せがましいのは驚きである。男の沽券はどこに行ったのやら……。

 さらには、こんな声も。

「合コンでおごってもらったとき、『こっちが払ってやるんだから』的な感じで、思いっきり見下した態度を取られました。頭にきたので、一次会で解散して女子だけでカラオケ行きましたね」(30代/女性)

 こうした「コミュニケーションの問題」が現場でたびたび起こっているため、「おごり、おごられ」の議論は私怨をともなった感情的なものになりやすいのだ。

世に盗人の種が尽きないように……

 最初に指摘したとおり、「おごり、おごられ」問題の結論はすでに出ている。「可能な限り男性がおごり、難しい時は少し多めに払うか、割り勘」にすればいいのだ。その都度、臨機応変に対応すればいいだけである。

 また、女子からは「飲み会では、男性の方が多く飲んで、多く食べている」という意見もたくさん寄せられた。これには、一定の説得力がある。

「大学時代の同級生(男性)から突然電話がかかって、『今近くにいるから飲みに行かない?』というお誘いがきました。サシ飲みです。食事とお酒は7対3の割合で相手の方が多く飲み食いしていたのですが、会計は割り勘でした」(30代/女性)

 こういたケースは、もはや「おごり、おごられ」以前に、マナーの問題である。男性が多く飲み食いした場合は、少なくとも多めに払うくらいの心遣いが必要だ。

 しかし、すでに紹介したとおり、「おごり、おごられ」の議論はとにかく「めんどい」ことになりがちである。ここまでくると、男性の筆者としては、「もう、四の五の言わず全額支払わせてくださいよ!」と言いたい気持ちになる。金銭的な負担より、精神的な「コスト」のほうが圧倒的に上回っているからだ。

 世に盗人の種が尽きないように、「おごり、おごられ」の面倒くささも永遠に尽きることがないであろう。書いていて「めんどい」気持ちになってきたので、今回はこれくらいで終わりにさせていただきたい。

あなたを悩ます「めんどい人々」解析ファイル 

 当連載についてご意見がある方は、筆者のTwitterアカウントにご連絡いただきたい。全てに返信できないとは思うが、必ず目を通したいと思う。

http://diamond.jp/articles/-/72947  

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