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(出所)総務省、第一生命経済研究所
低所得者層の増大と格差拡大は、今後さらに加速する 生活必需品の物価上昇が続く背景
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150610-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 6月10日(水)6時1分配信
最近の国内物価は全体としてはデフレ脱却傾向にあるものの、新興国の台頭により嗜好品の価格と生活必需品価格の二極化が生じている。具体的には、購入頻度が低い工業製品等は価格が上がりにくい一方で、食料やエネルギーといった日常的に購入する品目は、新興国の台頭やマネーのグローバル化などで価格が上がりやすい状況にある。そして、こうした物価のばらつきは、生活必需品の価格上昇によって、生活水準の二極化現象に拍車をかけてきた。
足元の消費者物価指数は伸びが鈍化している。しかし、食品等の値上げが相次いでいる割に物価上昇は緩やかに見える。そこで、消費者物価指数を生活必需品(食料、持ち家の帰属家賃を除く家賃、光熱水道、被服履物、交通、保健医療)と嗜好品(生活必需品以外)に分けて物価水準を比較してみると、嗜好品の価格上昇が限定的である一方で、生活必需品の価格は嗜好品と比べて明らかに上昇基調にあることがわかる。
特に生活必需品の中では、光熱水道と食料が上昇している。一方、薄型テレビやゲーム機、パソコン、デジカメといった嗜好品の価格上昇は限定的、つまり嗜好品価格の弱含みによって生活必需品の値上がりを緩和しているのが、近年の物価動向の実態だ。
このように、国内物価は食料やエネルギーが大きく変動してきたのに対し、それ以外の物価は上昇が限定的であり、これらについては新興国の台頭が影響している。なぜなら、新興国の需要急増が生活必需品の価格を押し上げる一方で、新興国企業の市場参入による競争激化が嗜好品の価格を抑制しているためである。
またサービス価格も、新興国の労働力との競争激化による国内の賃金伸び悩みが影響してきた。そして、こうした国内で十分供給できない輸入品の価格上昇で説明できる物価上昇は、「悪い物価上昇」といえる。
●「良い物価上昇」と「悪い物価上昇」
そもそも、物価上昇には「良い物価上昇」と「悪い物価上昇」がある。「良い物価上昇」とは、国内需要の拡大によって物価が上昇し、これが企業収益の増加を通じて賃金の上昇をもたらし、さらに国内需要が拡大するという好循環を生み出す。
しかし、2006年以降の物価上昇や10年以降の物価下落率の縮小は、輸入原材料価格の高騰を原因とした値上げによりもたらされ、国内需要の拡大を伴わない物価上昇により、家計は節約を通じて国内需要を一段と萎縮させた。その結果、企業の売り上げが減少して景気を悪化させたことからすれば、「悪い物価上昇」以外の何物でもない。
このように、生活必需品の価格が上昇してきた背景としては、(1)新興国での需要増加などにより輸入品の価格が上昇している、(2)先進国の量的緩和や新興国の外貨準備を起点とした投機マネーの流入が進んでいる、(3)異常気象により農作物の収穫量が減少している――ことなどがある。
特に、米国以外の金融政策が緩和傾向で推移する一方、新興国や途上国が今後とも生活水準を高めていくと見込まれる。こうなれば、世界の食料需給は中長期的には人口の増加や所得水準の向上等に伴うアジアなど新興国・途上国を中心とした需要の拡大に加え、これら諸国の都市化による農地減少も要因となり、今後とも需要が供給を上回る状態が継続する可能性が高い。つまり、食料品の価格は持続的に上昇基調をたどると見ておいたほうがいい。
●物価の二極化が、生活格差の拡大をもたらす
ここで重要なのは、生活必需品と嗜好品での物価の二極化が、生活格差の拡大をもたらすことである。生活必需品といえば、低所得であるほど消費支出に占める比重が高く、高所得であるほど比重が低くなる傾向があるためだ。従って、全体の物価が上がる中で生活必需品の価格上昇率が上回ると、特に低所得者層を中心に購入価格上昇を通じて負担感が高まり、購買力を抑えることになる。そして、低所得者層の実質購買力が一段と低下し、富裕層との間の実質所得格差は一段と拡大する。
さらに深刻なのは、国内の低所得者層が拡大傾向を示していることがある。こうした所得構造の変化は、国内経済がグローバル化への対応に遅れたことで富が海外へ移転し、日本国民の購買力が損なわれていることを表しているといえよう。そして、グローバル化の恩恵を享受できず競争圧力にさらされた低所得者層の拡大を生み出し、結果として労働者の所得格差拡大がもたらされてきたといえる。
一方、物価の二極化は、地域格差も広げる可能性がある。公共交通網の目が粗い地方では自動車で移動することが多く、家計に占めるガソリン代の比率も都市部に比べて高い。また、冬場の気温が低い地域では、暖房のために多くの燃料を使う必要があり、こうした地域にとって灯油代の高騰は大打撃だ。電気料金やガス料金も燃料市況に連動するため、原油やガスが上がれば光熱費も増える。
こうした状況に対し、日本銀行は中長期的な物価安定について「消費者物価が安定して前年より2%程度プラスになる」と定義している。しかし、コストプッシュで消費者物価の前年比が2%プラスに到達しても、それは安定した上昇とはいえず「良い物価上昇」の好循環は描けない。
従って、本当の意味でのデフレ脱却には、消費段階での物価上昇だけでなく、国内で生み出された付加価値価格の上昇や国内需要不足の解消、単位あたりの労働コストの上昇が必要となる。そしてそうなるには、賃金の上昇により国内需要が強まる「良い物価上昇」がもたらされることが不可欠といえよう。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト)
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