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危うい「東京圏高齢者の追い出し作戦」 介護・医療サービス不足にお手上げか(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/15/hasan97/msg/529.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 6 月 10 日 00:34:05: igsppGRN/E9PQ
 

                    「首都圏高齢者は地方に引っ越し」を推進するが…


危うい「東京圏高齢者の追い出し作戦」介護・医療サービス不足にお手上げか
http://diamond.jp/articles/-/72942
2015年6月10日 浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)] ダイヤモンド・オンライン


 有識者らで作る民間研究機関「日本創生会議」(座長・増田寛也元総務相)の分科会、「首都圏問題検討分科会」が6月4日、2025年までの医療・介護状況を発表し大きな話題を呼んでいる。報告書「首都圏高齢化危機回避戦略」では、一都三県(東京都、神奈川、千葉、埼玉県)の東京圏では75歳以上の高齢者が急増し、深刻な医療・介護サービス不足が起きるとして、高齢者の地方移住を提言したからだ。


 その移住先として、函館市、旭川市など北海道6市をはじめ、青森市、秋田市など東北5市、高松市、徳島市など四国7市、北九州市、別府市、熊本市など九州7市と、全国41地域を挙げた。


「首都圏高齢者は地方に引っ越しを」と主張するこの提言は、厚労省が掲げる「地域包括ケアシステム」に逆行するとともに、国民の自由な生き方、尊厳をも否定しかねない大きな問題をはらんでいる。


■東京圏の介護サービス利用者は2025年までの10年間に175万人増!


 同会議は、昨年5月に少子化で人口減少が続くため、2040年になると存続が危うい全国869の市区町村を「消滅可能性都市」と指摘し、当該自治体や住民にショックを与えた。消滅都市と指摘された自治体が、その後急きょ、少子化対策に力を入れ出すなど影響は大きい。その第2弾である。今回の提言は看過できないのは、先例があるためだ。


 まず提言内容を見て行こう。


 医療と介護サービスを利用し始めるのは75歳を迎えてからが多数。その75歳に団塊世代が到達する2025年までの10年間に、東京圏では75歳以上が397万人から572万人となる。175万人もの増加数は全国の3分の1を占める。高度成長期に団塊世代が一挙に地方から流入し、そのまま高齢化するためだ。


 これに伴い、介護サービスの利用者は東京圏で45%も増加し172万人になる。入院患者数から推定した医療需要も東京圏で22%増える。全国平均の増加率ははそれぞれ32%と14%に過ぎない。2番目の増加率の近畿圏の36%、16%をも大きく上回り、東京圏が突出している。


 東京23区内と千葉県で不足する介護ベッドを、従来は、余裕のある東京多摩地区と神奈川県、埼玉県で補ってきた。だが、25年になると、その3県を含めて大幅な不足に陥ってしまう。


 25年時点で必要な46万のベッド数に対して、15年の総ベッド数は33万しかなく、13万ベッドが足りない。10年間でこの不足分を供給するのは極めて難しい。そのため、介護施設に入所できない要介護高齢者があふれ出ることになる。「介護難民」となる懸念もある。



資料:東京圏の後期高齢者収容能力/出所:日本創生会議HPhttp://www.policycouncil.jp/pdf/prop04/prop04_1.pdf

 介護施設が2040年時点で「特に整っていない」首都圏の地域として、提言で挙げているのは、都心部への通勤サラリーマン層が多い都市だ。東京都は荒川、足立、葛飾を除く20区と立川、三鷹市。神奈川県は横浜南部と厚木、藤沢の2市。千葉県は船橋、松戸、成田、市原の4市。埼玉県は川越、所沢の2市である。


■「地方移住」推進へ 「お試し移住」案も


 そこで、解決策が地方移住となるわけだ。地方は施設や人材にゆとりがありサービス費用も安い。「東京圏は一極集中で一見、(人口が膨らみ)勝ち組に見えるかもしれないが、抱えるリスクは大きい。地方移住を選択肢に入れるべきだ」と座長の増田氏は記者会見で強調した。


 東京圏で施設整備を増やそうにも、土地の確保が難しく自治体の費用負担がかさむ。人手不足を地方から調達すれば、「地方都市の消滅が加速する」と言う。結果として「(需要に応えようと)東京都内で自己完結させるのは難しい」と断言する。


 さらに、増田氏は「元気なうちから移住してもらうため、医療・介護体制がどういう地域で整っているかを示すことが課題だ」と話す。



資料:医療・介護ともに受け入れ能力のある地方/出所:日本創生会議HP


 提言では、「移住に適した地域」として、41都市を示した。青森、盛岡、富山、福井、岡山、松山、高松、長崎、熊本、北九州など県庁所在都市が19もある。全体の半分近い。首都圏に近い都市生活を継続して営めることを配慮したようだ。過疎地域を敢えて外している。


 この移住策に関心のある人には、「お試し移住」を支援することも盛り込んでいる。


 移住策のほかに、今回の提言では、外国人介護人材の受け入れ推進や空家の医療・介護施設への転用、情報・ロボットの活用、日本版CCRC構想の推進など「危機回避」の道を示した。


 提言を受けて、増田氏も加わる政府の「日本版CCRC構想会議」が具体的な仕組みを今夏にもまとめる。担当の石破茂地方創生相は、「高齢者の地方住み替えを推進する」としており、菅義偉官房長官も「地域の消費需要の喚起や雇用に維持につながる。地方創生の効果が大きい」と前向きな姿勢だ。


 CCRC(Continuing Care Retirement Community)とは、米国で広がっている余暇サービス付きの大規模な富裕高齢者向け集合住宅。介護施設とは異なり、健康な高齢者だけが移住してスポーツや生涯学習などを楽しむ。大学と連携した形も多い。


 政府は昨秋、地方創生策を考える「まち・ひと・しごと創生本部」を立ち上げ、その有識者会議には日本創生会議から増田氏や慶大の樋口美雄教授が参加しており、政府の政策との連動が強いと見られている。


■できるだけ自宅に近い環境が推進されてきたのに…


 では、今回の地方移住策が本当に適切であるのだろうか。いろいろの問題がある。まず第一には、厚労省が掲げる「地域包括ケアシステム」に矛盾する施策であること。


 地域包括ケアは、どんなに高齢になり、あるいは要介護状態が進んでも、これまで住み続け慣れ親しんだ地域で各種の在宅医療や介護サービスを受けながら、最期まで暮らし続けましょう、ということだ。


 地域包括ケアの考え方は、日本だけでなく、欧州ではすでに定着している。要介護高齢者が遠隔地の大規模な病院や施設でずっと居続けるのは、暮らしとは言えない。尊厳を損なうとの考えから、「脱病院」「脱施設」に舵を切っており、20年前から加速させている。


 自宅介護が適わなければ、できるだけ自宅に近い環境の近所のケア付き住宅への引っ越しが推奨されてきた。「第二の自宅」という位置づけだ。


 創生会議の移住提言は、こうした生活者としての当然の思いに反する。ベッドの多寡によって、高齢者を駒のように動かすようなものである。長い間の地域での暮らしで培ってきた「絆」を簡単に断ち切り、縁もゆかりもない地方に住むという発想は、数字のお遊びでしかない。


 もちろん、定年後の田舎暮らしを希望する人は、「どうぞ自力でご自由に」である。だが、この提言は税金が絡む。移住提案がCCRC構想に直結し、新型交付金を投入する施設作りにつながる恐れがある。税をかけてまで器を作り、移住を促進するのは大いに疑問である。


 東京都杉並区が静岡県南伊豆町に特養を建て、同区の特養の待機高齢者を移住させる計画案を作り、国交省の検討会で昨年了承された。区民約50人が入所する特養を2018年に開設する。今回の提言の先駆けと評価する識者もいるが、「待った」である。


 同検討会では、「南伊豆町は杉並区と交流を続けてきた経緯があるので特別に認める。一般的に遠隔地での特養建設を了解したのではない」という注文が付いた。「諸般の事情でやむなく」というのが同検討会の判断だった。委員の1人、高橋紘士・国際医療福祉大学教授(当時)が、締めくくりの会議で切々と反対論を述べた事実を忘れてはなるまい。


■脱「病院死」の流れにも逆行


 次いで、この提言の第2の問題は、病院と施設に偏った発想が土台にあることだ。


 ベッド不足の根拠となった将来需要は、いずれも、現在までの病院と施設の増加率をそのまま2025年まで延長させて想定したものだ。「量」の考えだけで、「質」への考慮がない。


 医療も介護も今や大転換期にあるはずだ。一昨年8月の「社会保障制度改革国民会議」の報告書では、医療への抜本的な発想転換を要請している。「治す医療」から「治し支える医療」へ、「病院完結型」から「地域完結型」へ、「延命、救命」から「QOL(生活の質)の維持」へと画期的な標語を並べて意識改革を促した。


 介護では、15年前の介護保険制度の発足以来、「在宅重視」が基本的考え方である。病院や大規模施設での長期にわたる「療養」は、とても日常生活の延長とは言えない。できるだけ、自宅や同じ地域内での暮らしが求められている。


 そのために、厚労省は在宅サービスの柱として小規模多機能型居宅介護や定期巡回随時対応型訪問介護看護(24時間訪問)の普及に力を入れ出した。


 併せて、医療からも在宅療養支援診療所と訪問看護ステーションの普及を促進しようと、昨年と今年の医療報酬、介護報酬ではかなりの増額を実現させたばかり。


 厚労省だけでなく、国交省はこれら4サービスをサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に併設する「拠点型サ高住」を地域包括ケアの主役に位置付ける方針を4月に表明した。


 サ高住は、株式会社を含めてあらゆる民間事業者が参入できる。その半数近くでは、すでに訪問介護やデイサービスが併設されている。よりケア充実度が高い小規模多機能型や24時間訪問を併設すれば、看取りが視野に入り、「終の住処」へと進化する。


 介護保険で最も報酬の多い療養型病床を廃止し、サ高住に転換してこうした在宅サービスを活用するのが、大きな流れである。まして、急性期病院での長期療養は早急に終止符を打たねばならない。


 利用する高齢者にとっては、トイレ付きで18m2以上の個室が保障されるサ高住は自宅に最も近い環境のケア付き住宅である。経済的にも入院生活よりもはるかに負担は軽い。


 提言は、現状の病院と施設をそのまま10年後にも同じように必要とみるスタンスを脱していない。在宅医療と在宅介護を主役に育てていく発想が欠落している。


 高齢者やその家族が「病院死」に疑問を抱く動きが広がりつつある。延命治療一辺倒の病院の考えに不信感も高まってきた。国民の意識が大きく変わろうとしている。


 病院死が80%近い現状を「異常」とみる人が増えつつある。欧州各国ではほぼ50%前後と低い。自宅や集合住宅での看取りがさらに増えつつある。


 足元の意識転換がじわじわと進んでいるにも関わらず、一足飛びに地方移住を解決策とするのは、高齢者自身からも相手にされないだろう。


■「元気」を前提にする危うさ


 第3の問題は、移住対象者を「元気高齢者」としていることだ。日本版CCRCが制度としての受け皿になりそうだが、CCRC本家のアメリカでは、その「元気・健康」が続かないため、修正を迫られている。


 今は元気でも、いつでもすぐに要介護者になる可能性が高いのが高齢者である。女性に多い転倒しての大腿骨頸部骨折、脳梗塞や脳溢血などの脳卒中、それにがんを含めて突然症状が現れる。ゆるやかに表れる認知症も想定しなければならない。


 高齢者の5人に1人が認知症になる可能性が指摘されている。認知症の「大敵」のひとつは、リロケーションショックと言われる。生活の場が突然変わることによって、理解が及ばず、混乱、動揺し始め、認知症が一気に表面化することだ。


 福祉先進国のデンマークで1990年代に提唱された高齢者への3つの心配りがある。(1)自己決定権の尊重(2)残存能力の活用(3)生活の継続性の維持――である。このうちの(3)は、認知症ケアの要諦でもある。


 認知症になる前の生活をできるだけ続けること。そうした配慮があれば、より重度になることを遅らせ、普段の暮らしが続けられるという。


 リロケーションショックを招かないような対応は、あらゆる高齢者に言えることだろう。


 東京圏から地方に移住すれば、まず食生活への違和感が起きる。和食独特の味付けが地域によって異なるからだ。関西人が上京すると、東京の濃い味のうどんになかなか馴染めない。学生でも抵抗感があるという。まして、年長者には受け入れ難いだろう。


 このほか、言葉(方言)や近所付き合いなども地域差がある。薄れてきたとはいえ、若者と違って、すぐに溶け込むのが難しいのが高齢者である。MCI(軽度認知障害)レベルではあっても、日常生活に不安を抱く高齢者には、移住先が別世界のように受け止められてしまう可能性もある。リロケーションショックに繋がる。


 米国にはCCRCが約2000ヵ所あり、75万人ほどが入居しているといわれる。大手事業者が運営するアリゾナ州のCCRCを訪問したことがある。立派な図書館や広いプールなどが広大な敷地に備わり、いかにも富裕層の別天地そのものであった。


 だが、歳月の経過とともに認知症を患う入居者が次第に増えていく。「当初の開設時には想定していなかった」と事業者も認めざるを得ない。そこで、敷地の一角に新たに認知症者向けの専用棟を作り、ケアに追われる事態となっていた。


 日本でも、元気高齢者向け施設として「失敗」した経験がある。ケアハウスだ。1990年代に建設が相次いだ。入居者が、食事や入浴に介助者を必要とされると、退去を迫られる。住民から「いずれ退出しなければならないなら」と敬遠された。


 現実には、いったん入居すると退出先が見つからないケースが多く、ケアに不得手な事業者を悩ませる。やむを得ず在宅サービスを探したり、特養入居の申請に走らざるを得ない。


 つまり、高齢者の生活には、必ず介護サービスを当初から想定しなければならない。そんな教訓が日米の過去の事例から導き出されるはずだ。


 今回の提言には以上のような問題点を抱えているが、「なぜ、首都圏には医療・介護サービスが増えないのか」という疑問を投げかけた「功績」はある。その答えの一つは、医療・介護の地域格差にありそうだ。この連載の25回目で「東京23区の報酬が低すぎる」と指摘した。人材不足と施設不足の原因でもある。解決できそうな「障壁」から着手すべきだろう。


 

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コメント
 
1. 2015年6月10日 07:24:33 : hgpjQOlLXE
空家、空地、空き部屋がゴマンとあり、将来規模拡大する仕事を求めている人もゴマンといる首都圏から、何でわざわざ親族や知人のいない地方に移住する必要があるのかわからない。
国が特養のようにほぼ全部介護してくれるなら別ですが、特養は減らしてる方向。
単純に首都圏に介護サービス付きや在宅介護型高齢者住宅を増やせば良いだけ。
非正規や契約社員とかの若者の正規雇用対策にもなる。
戸建てならリフォームや庭に離れとか、激安で売られている空家などを活用すれば、空家対策にもマッチする。
それと何で全国地域とかが特定されるのか?もわからない。
これに漏れた地域は損でしょう。

2. 2015年6月10日 08:24:15 : jXbiWWJBCA

地方依存は、安い建設コストと低賃金の若年介護労働者が可能にしてきたが

インフラ崩壊や若年労働者の枯渇が進めば、限界に達する

いずれ首都圏の郊外空き家のリフォームで施設を作り、比較的元気な高齢労働者による、老老介護が主流になっていくだろう


3. 2015年6月10日 23:37:21 : X9vgzqQqtc
医療介護に余裕と言ってるがもともと人口の少ない地域での話。
首都圏から大量の老人が移住すればパンクすることは目に見えているように思うが。

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