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学生からすれば、「平等な評価」という建前でありながら門前払いを食うのは納得がいかなくて当然だろう
「学歴フィルター」問題から新しい就活の形を考える
http://diamond.jp/articles/-/72851
2015年6月10日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員] ダイヤモンド・オンライン
■暗黙の学歴フィルターが露見したゆうちょ銀行の炎上
目下、大学4年生は長きにわたる就職活動期間にある。経団連の申し合わせで大学3年生の3月から会社説明会など企業と学生の接触が解禁され、8月からいわゆる採用の「内定」を出していいというのが一般的なゲームのルールだ。学生には、奇妙に不自由である一方で、多くの場合長々続く就職活動は、本当にご苦労なことだと思う。
本来的には正しいこのルールを無視する企業もあるが、各社の人事部同士が徹底的な競争を避けたいと考える談合的意図もあって、おおむね建前のスケジュールを踏まえて就職・採用の活動が進行している。
もっとも、企業・学生双方で実質的な「抜け駆け」があるのが現実であり、「内定を出すことの確約としての内々定…」のようなものは既に出回っている。
こうした状況下で、たまたま「ゆうちょ銀行」が、就職案内のセミナーの参加希望者に対して、所属大学で差別をしていることが明らかになり、ネット空間で大いに話題になった。
いわゆる偏差値があまり高くない大学の学生としてセミナーに出席しようと申し込むと「満席」で断られる一方で、所属大学を東京大学として申し込もうとすると簡単に出席の予約が取れるといったことが発覚したのだった。暗黙のうちに使おうとした「学歴フィルター」が露見した。
■アンフェアな扱いが知られるのは企業にとっても「アウト」
企業の採用活動にあって、今回のゆうちょ銀行のような「学歴フィルター」の存在が明らかになることの影響はどのようなものか。
「学歴フィルター」が使用される背景の一つに、近年、就職活動を支援するサイトを通じて、学生が数多くの会社に「エントリー」が可能になったことがある。会社によっては、数千・数万と押し寄せる就活学生のエントリーシートを建前上は平等に選別しなければならないが、物理的にそれは無理だ。
エントリーシートを扱う下請け業者に読ませる会社もあるが、このときに、学生の所属大学で優劣を付けるように予め指定しておく場合がある。就職説明会は会社が学生と直接接触することができ、事実上の選考を始めることができる機会だが、今回のゆうちょ銀行はその申し込みを処理するシステムに、大学による選考上の優劣を外部からも分かるような形で直接組み込んでしまったことが失敗だったと推測される。
学生の所属大学によって差を付ける「学歴フィルター」は「フェアではないが、有効だ」と考えられる。
個々の学生の能力を平等に評価するという建前で募集を行っている以上、学歴フィルターの適用に学生側から見て不公平感があるのは当然だ。違法ではないとしても、企業の行動として「社会的にまずい」とも言えるだろう。企業の一般的なコンプライアンスの指針に照らして判断するとしても「アウト」だろう。
今回、日本全国のどの地域に対しても同等のサービスを提供することが会社の存立基盤に関わる精神である日本郵政グループのゆうちょ銀行にあって、この種の不公平な扱いが世間に知られたことは大変皮肉であった。
■企業が学校名を選考に使うのは現実面からやむを得ない
しかし、全てのエントリーを平等に扱って選考を行うのは、多くの大企業、特に就職人気の高い企業にとって膨大な手間とコストの掛かる作業になる。何らかの基準でフィルターを設けることは、経済合理的だ。
大学生が共通に受けられる学力試験でもあれば、その結果を利用することが考えられるが、現状では、大学入学時の学力を測る大学の入学試験の結果が、本人のビジネス的問題処理能力と最も相関が高い指標だと考えるのは現実的だ。
現行の日本の大学教育で学生の基礎的な能力が伸びるとは考えにくいし、大学で得る知識がビジネスに直接役立つ訳ではない。大学の成績が有効な指標になるとは思えない。
近年、系列高校からの自動進学や推薦入学、AO入試(いわゆる「一芸入試」)による入学者が増え、学生の学力が低下してブランド価値を落としている私立大学が複数あるが(企業側の人事担当者はこうした私大の学生の履歴書では高校名も見るらしい)、こうした要因でデータの精度が落ちることがあるとしても、今のところ大学名によるフィルターは企業側にとって有効だ。
また、もともと企業側に優れた人材の評価能力があるわけでもない。彼らが、大学名を選考に使うのはやむを得ないことだと理解すべきだろう。
ゆうちょ銀行の場合、「いっそのこと学歴フィルターを事前に公開してくれればいいのに」という声がネットの書き込みなどにあった。門前払いを食わされた学生は余計な手間と悔しい思いをしたわけだから、気持ちは分かる。
しかし、会社としては、自社に多くの大学の出身者を抱えていることでもあるし、世間的な反感を買う可能性も大きく、ビジネス的な判断として公開は無理だろう。
では、どうすればいいのか。
■「社員の推薦状」を応募の条件にしてはどうか?
全国の大学生を相手に実施される共通の学力テストのようなものがあれば、企業側はその点数で学生を予備選考する事ができるし、大学生の学力を上げるためにも好ましく思えるが、残念ながら、これは現実的ではないだろう。多くの大学が、学生の成績による格付けを嫌うだろうし、大学教育の自由に関する建前にも反するので、反対しそうだ。
一方、現状では、企業側が暗黙のうちに学歴フィルターを使うことは前記のような事情もあってやむを得ない。
問題を企業側から見ると、学歴フィルターから漏れるが、能力ややる気のある学生をいかに選考プロセスに乗せていくかだ。同時に学生に対しても、できるだけフェアに選考される機会を提供したい。
一つの方法として、応募に当たって、社員からの推薦状を求めるのはどうだろうか。例えば、「応募に当たっては、当社の社歴5年以上の総合職社員から推薦状を取ること」と決めて、これが満たされたら一次選考に進むことができるとする。
推薦した学生の選考の結果(採点)は推薦状を書いた社員にフィードバックされ、その優劣を推薦者の評価の一部に反映させる。採用するに足る良い学生を推薦した社員には人事評価上のプラスポイントを与え、不適切な学生を推薦した社員には少なくともダメ出しを行う。
採用したい大学の出身者をいわゆる「リクルーター」として使う方法に実質的に似る面があるが、推薦者の責任はもう少し重い。
学歴フィルターの内側の学生であっても、企業側から見て明らかに不適格な候補者は少なくない。社員がリスクを取り手間を掛けて推薦状を書くか否かは、人材評価上有力なフィルターになるだろう。
学生側から見ると、入社したい会社の社員と何らかの「縁」を作ることが必要になるが、これはほとんど全てのビジネスにあって必要な種類の能力だろう。ある社員には推薦状を書いてもらえなくても、別の社員に気に入ってもらえば先の選考に進めるのだから、この選考方法は、学生の入社意欲の強弱とプラスの相関関係を持つはずだ。
推薦状を書く社員に対しては、会社にとっての人材採用の重要性を印象づけることになるし、推薦状の書き方も含めて、人材評価と人事マネジメントの有効な研修になるだろう。
もともと企業の勝手であるはずの学歴フィルターが外に出て問題になるのは、インターネットを通じて大量のエントリーを受け付けることから始まる「雑な採用活動(!)」をしているからではないか。広く大量の応募を受け付けることを、丁寧な採用と勘違いしない方がよい。一般論として採用にはもっと力を入れるべきだろうし、選考の時期や方法も含めて、もっと各企業独自の方法があっていい。
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