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急上昇する中国株価のきな臭さ 読めないバブル崩壊のマグニチュード ――熊野英生・第一生命経済研究所 経済調査部
http://www.asyura2.com/15/hasan97/msg/525.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 6 月 10 日 00:08:05: igsppGRN/E9PQ
 

上海株の異常な上昇基調。投機マネーの暴走、バブル崩壊、中国経済減速ともなれば、日本経済が被るリスクは計り知れない


急上昇する中国株価のきな臭さ 読めないバブル崩壊のマグニチュード――熊野英生・第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト
http://diamond.jp/articles/-/72944
2015年6月10日 熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],高田創 ダイヤモンド・オンライン


 最近、2015年の日本の金融市場にとって最大のリスクは、FRBの年内利上げと並んで、中国株リスクかもしれないと感じさせる。


 上海総合指数は、5000ポイントを超えて、対前年比2.5倍である。2014年12月頃から急上昇し始めた株価は、今年の3月以降はさらに加速度を増している。その一方で、危険なくらいに変動率(ボラティリティ)が高い。5月28日には前日比▲6.5%は下落したが、5営業日で終値は元に戻った(図表1参照)。▲6.5%と言えば、株価20000円のときに▲1300円の下落に相当する。6月4日は、寄り付きから一時▲5.4%下落した後、+6.4%まで上昇して高値引けとなった。現在の株価は、2007年のピーク(6092.057)に迫ろうとしているようにも見える(図表2参照)。


 変動率の高さは、投機的取引に参加する投資家たちが、他者に同調して売買を繰り返すことによって生じるのだろう。個々の投資家が高い期待収益率を望むほど、値動きがリスク愛好的に変わっていき、その変動率の高さを魅力的だと錯覚してしまう。こうした急上昇の局面がずっと続くとは考えにくい。




■投機マネーの暴走も?金融緩和のひずみ


 上海総合指数の上昇は、減速している中国経済の成長率とは対称的である(図表3参照)。むしろ景気テコ入れのために、中国人民銀行が2014年11月21日以降、金融緩和に動いたことに反応している。11月以降の金融緩和策は、預金準備率の引き下げ、追加利下げと短期間で5回も打ち出されている。


「新常態」(ニューノーマル)の達成のため、金融緩和が必要だとしても、金融緩和に反応して投機マネーが暴走すると、かえって中国株の値動きがコントロールできなくなるように思える。この点は、理解できない。



 はっきり言えば、上海株の急上昇は金融緩和に依存するバブルに見える。バブルならば、完全に管理することは不可能である。これまで余剰マネーは、不動産バブルが弾けて、次に理財商品にシフトし、さらに株式市場へと、リレーのバトンを渡すように移動していった。不動産や理財商品の損失が、株価上昇のキャピタルゲインによって、帳尻が合わせされているのであろうか。


 すでに、株価上昇を支える歯車もいくらか狂い始めている可能性がある。2007年の中国株の上昇のときは、ホットマネーの暗躍が騒がれたが、この半年間に関してはホットマネーが中国から資金流出していると言われる。


■気になる中国経済の行方 株価暴落なら日本経済にダメージも


 上海の株式市場の波乱が無視できない理由は、その存在感が以前よりも大きくなっているからである。上海証券取引所の規模は当時の1.8倍に膨らんでいて、現在の方がはるかに大きく、すでにドル・ベースで東京市場を抜いている(図表4参照)。仮に株価が暴落すれば、自ずと損失のインパクトは大きくなるだろう。



 最近の上海証券取引所の時価総額は5.6兆ドルと、中国の名目GDPの50%にも達する(名目GDPはIMF予測値)。たとえば、上海総合指数が1年前の水準まで下がると仮定すると、そこで失われる時価総額は名目GDPの29%に相当する。


 ただし、誤解してはいけないのは、中国の株価暴落が欧米市場の株価暴落とは異なる点である。もしも欧米株価がクラッシュすれば、海外マーケットへの連鎖的波及という反応を示すだろう。中国の株価下落は、独立的な存在になるだろう。


 むしろ、中国の株価暴落の影響は、中国の実体経済の悪化を通じて、日本経済にダメージを与えると考えられる。そこで実体波及のタイムラグや認知のタイムラグが生じるだろう。


 たとえば、中国経済の実態面での悪化は、(1)中国に進出した日本の現地法人の売上・収益悪化、(2)日本から中国への輸出減少、(3)中国人観光客の減少、というルートが悪影響として及んでくるだろう。


 日本の輸出のうち、中国本土向けは18%を占める(2014年)。輸出入額で見て、日本の最大の取引相手国は中国である。中国にある現地法人の数は7807(2013年度)であり、日本企業の全現地法人の売上高の18%を占めている。


 観光客については、先に日本政府が外国人観光客の需要を2兆円から4兆円に倍増する野心的な計画を発表した。しかし、中国人観光客の旺盛な購買力が、自国の株価上昇を背景にして増えてきたのならば、株価暴落によって、日本の観光産業も大損害を被る。


■中国で万一のことが起きても超巨大経済対策は考えにくい


 一方、そうした波乱に対して、中国政府もしかるべき対応を採ってくると予想されるが、有効な景気対策のカードはあるのだろうか。2008年11月は4兆元の経済対策を打ち出して、総需要対策で景気支援を行った。しかしその弊害は大きく、今後同じような超巨大経済対策を繰り返すとは考えにくい。どういったテコ入れ策を選択するのかは見えにくい。


 なお、中国の実体経済の悪化がもたらす影響は、有形無形にじわじわと広がるだろう。かつて、リーマンショックのときは、世界のGDPに占める割合は7.2%(2008年・IMFデータ)だったが、2015年は15.0%と2倍以上に存在感が大きくなっている。その需要抑制効果は大きいはずである。


 過去の教訓で言えば、資源価格の下落が誘発される悪影響はあるだろう。目下、原油価格は、一旦3月を大底に持ち直してきたように見えるが、再び下落する可能性もある。資源価格が従来よりも大きく下げれば、企業の中には損失を被る先も少なからず表れるだろう。


 

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