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[米価攻防](上)政官主導で揺り戻し
値上げ論議、需給は後回し
今秋に収穫する2015年産米の価格を巡る駆け引きが激しくなっている。政府は14年に急落した米価の回復に向け手を打つが、思惑通りに進むかは予断を許さない。
2014年産米の店頭価格は前年比1割程度下落した(都内のスーパー)
「14年産のような米価を繰り返してはならない」。昨秋から断続的に開かれているコメを主題にした自民党の会合。出席した議員からはこのような声が相次いでいる。
批判の対象になったのがJAグループが生産者に一時金として支払う概算金だ。コメ離れや在庫増加を背景に、14年産は東北産の主要銘柄で前年比2〜3割下落した。JAグループなどがコメ卸に販売する相対取引価格も14年産は60キロ1万2045円(全銘柄平均)と前年よりも16%安く、06年産の調査以来最低になった。
政治家の声に呼応するように農林水産省は、JAグループやコメ卸をメンバーにした米の安定取引研究会を昨年12月に立ち上げた。今年3月末に概算金や卸への相対販売価格は、過去5年間のうち最高値と最低値を除いた3カ年の平均値(5中3平均)などを基準とすべきだとする報告書を発表した。
価格設定の過程が見えにくい、との買い手のコメ卸などの声を踏まえたものだ。「5中3平均」を適用すれば、15年産の価格は14年産と比べ2割程度上がることになる。あるメンバーは「概算金の引き上げありきの議論だった」と証言する。
基準の適用を求められた全国農業協同組合連合会(全農)は、需給の改善が前提としながら、収穫前契約の相対販売価格は「5中3平均」をベースにする方針。上下に一定の幅を持たせ収穫後の需給を反映させる考えだ。契約数量を前年の1.5倍の140万トンに拡大し、概算金の引き上げに応えようとする。
買い手の反応はまだ読めない。大手卸の幹部は「スーパーなどへの納入価格競争も厳しい。基準適用はのめない部分もある」と話す。弁当などを製造する中食業者でつくる国産米使用推進団体協議会の福田耕作会長は「全農もコメ卸も値上げを言う前にコスト削減の努力をすべきだ」とくぎを刺す。
スーパーが一度下げた価格を上げるのは容易ではないとの見方もある。米穀安定供給確保支援機構(東京・中央)によると、4月の平均小売価格は1キロ330円で前年同月比12.2%安い。あるコメ卸の元には新米の値上がりを見越した取引先のスーパーから、古米になる14年産とのブレンドで価格を抑えた商品を販売したいとの要望が寄せられているという。
14年産の値下がりは、12年産の高騰時に使用が増えた輸入米からの回帰を呼び、大手牛丼チェーンなどは100%国産米に切り替えた。コメ卸、ヤマタネの山崎元裕社長は「価格を大幅に引き上げると国産米の消費がまた落ちるのではないか」と懸念する。需給を無視して無理な値上げを通そうとすれば消費者のコメ離れが加速しかねない。
コメの卸向け価格とは
▼コメの卸向け価格 卸向け価格には大きく分けてJAをはじめとする出荷団体が卸会社に販売する際の「相対取引価格」と、卸会社同士が需給に応じて在庫をやり取りするための「卸間価格」がある。いずれも産地、銘柄ごとに価格が設定される。相対取引価格は新米の出荷前に決定され、出回り後の変動は比較的小さい。卸間取引は需給によって価格が動きやすい。
[日経新聞6月5日朝刊P.19]
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(下)飼料米増産の大号令 補助金頼み、進まぬ地域も
「(政府がコメの生産・流通を統制する)食糧管理法時代に戻ったようだ」。農林水産省が5月中旬公表した2015年産米の生産調整(減反)の取り組み状況の表を見て、ある市場関係者はつぶやいた。生産数量目標や減産幅を上乗せした参考値を達成できそうかをまとめた一覧表で、都道府県ごとに○△×の評価が並ぶ。途中経過を公表するのは初の試みだ。
補助金が手厚い飼料用米の作付けを増やす生産者も多い(5月下旬、関東地方の水田)
農水省は主食用米の価格を回復させるため、飼料用米を増産して主食用米の生産を減らそうとする。14年産の主食用米の生産量は788万トンだったが、15年産は生産数量目標を751万トン、新たに設定した参考値を739万トンにした。参考値を達成した場合は別途、補助金を出す。4月からは部課長級の職員が主産地を行脚し、地域農協の組合長に飼料用米への転換を直接呼びかけている。
JAグループも飼料用米を前年比3倍強の60万トン生産する目標を掲げる。全国農業協同組合連合会(全農)が生産者から買い取り、グループの飼料会社などで使用する計画だ。売り先を確保することで生産者に安心感を与えようとする。
地域によって飼料用米に対する取り組みの差は大きい。飼料工場に遠いほど輸送コストがかかるのが影響している。農水省が5月末に発表した5月15日時点の生産計画でみると、工場が立地する青森県が全農の計画を24%上回ったのに対し、遠距離輸送が必要な秋田県は計画の30%にすぎなかった。日本全体でも計画の58%の35万トンにとどまった。
飼料用米の価格は主食用米の10分の1程度で、収入のうち補助金が大半を占める。農水省は食料・農業・農村基本計画で25年の生産目標を110万トンに拡大したことをアピールするが、「補助金の持続性に対する生産者の不安は大きい」(JA秋田おばこの大友忠常務理事)。
コメ生産・販売会社の米シスト庄内(山形県庄内町)は飼料用米ではなく、せんべい向けの加工用米などを作付けし生産調整する。佐藤彰一代表は「補助金ありきの飼料用米に頼るより、主食用米の新たな販路を開く努力が必要だ」と語る。
農水省は飼料用米の生産計画書の提出期限を従来の6月末から7月末に延長するなどして、主食用米からの一層の転換を働きかける考えだ。主食用米の田植えを終えていたとしても、用途を書き換えれば飼料用米として販売することができる。
飼料用米への誘導は、現在の米価では生産者が採算割れに陥りコメ生産が維持できなくなるとの危機感が背景にある。一方、「主食用米の概算金の引き上げが視野に入れば、生産者は飼料用米への転換に二の足を踏む」(コメ卸)との指摘もある。
2カ月後には早場地帯で新米の収穫が始まる。なりふり構わぬ需給引き締めによる米価維持策の答えは間もなく出る。
田上一平が担当しました。
[日経新聞6月6日朝刊P.19]
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農家への補填金、514億円で最大に 農水省、米価下落で
農林水産省は5日、2014年産コメの価格下落を受け農家に総額514億円(計5万8千件)の補填金を支払う見込みだと発表した。07年に発足した収入減少影響緩和対策制度に基づく支払いで、07年の313億円を上回り過去最大となる。
補填金は国と農家が3対1の比率で拠出している。減収額の9割までを補填する仕組みで、コメ以外には麦や大豆なども対象となる。14年産コメの60キログラムあたりの収入額は全国平均で約1万2千円で、過去5年間の標準的収入を3千円程度下回った。60キログラムあたり約2500円が農家に渡る見込みだ。
国は15年度予算で802億円を計上しているため、支払いに問題はないという。
[日経新聞6月6日朝刊P.5]
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