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[スクランブル]メガバンクの戸惑い
持ち合い解消、期待が先行
日本時間夜の米雇用統計の発表を控え、方向感が定まらなかった5日の東京株式市場。目立ったのが3メガ銀行株の下落だ。メガ銀株は春先から、政策保有株、いわゆる持ち合い株の売却を通じて資本効率が高まるとの期待から買い進まれてきた。企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)導入を機にした「変わる日本企業シナリオ」に沿った動きだが、期待先行の側面も強かったようだ。
この日は一時3%安となった三菱UFJフィナンシャル・グループをはじめ、3行とも約2%下落した。6月にかけての相場をけん引したメガ銀株の上値が重くなった原因は何か。
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投資家が物色圏外にあったメガ銀株に、にわかに熱視線を送ったのは持ち合い株圧縮が進むとの期待が膨らんだことが大きかった。
無理もない。みずほフィナンシャルグループは1日、コーポレートガバナンス報告書を公表。「保有の意義が認められる場合を除き、政策株は保有しない」と明記した。三菱UFJも昨年来、取引先企業と保有株を巡り議論を重ねており、5日に三井住友フィナンシャルグループが開いたアナリスト懇親会でも持ち合い株圧縮がテーマになった。
銀行の保有株は株高で含み益が膨らんでいる。売却して自社株買いの原資にすれば、資本効率が一気に高まる――。5月下旬からこんなシナリオも広がった。
だが現実はそう簡単ではない。
「ここまで株価が反応するとは」。みずほFGの幹部は、持ち合い解消への期待の高さに戸惑う。報告書を公表した1日、行内では営業担当者を集めて「顧客企業の混乱を招かないように」と指示した。事前の了解なく、すぐに売却することはない、との方針を徹底するためだ。
三菱UFJ幹部も、みずほが一番乗りとなった報告書の公表について「うちは急がなくていい」という。取引先の理解を得るための説明を優先する狙いだ。
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メガ銀は数年来、簿価ベースで政策株を圧縮してきた。銀行の営業現場からすれば、残る保有分は売却に難渋する「岩盤」に近い。市場では「数年で半減も」との思惑も浮上するが、より現実的な時間軸と規模を見極める必要がある。
メリルリンチ日本証券の大槻奈那氏は「実際は長期戦。圧縮幅は1〜2割程度になるだろう」と見込む。3メガ銀の保有株の時価評価額は14兆円弱だから、その2割は3兆円規模。時間をかければ資本効率改善の即効性は薄れるが市場の需給への悪影響も薄らぐ。
期待が先行したとしても、政策保有株への「包囲網」は着実に狭まる。5日までロンドンで開かれた国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)の年次総会。各国の機関投資家が集まる会議で、銀行と企業の政策保有株も話題を集めたという。
ゴールドマン・サックス証券の田中克典氏は「政策保有株は銀行だけでなく日本企業全体の課題だ」と指摘する。企業は銀行の安定保有に頼らずに、市場とどう向き合うか。持ち合い解消で問われるのは企業統治のあり方そのものだ。
(田口良成)
[日経新聞6月6日朝刊P.16]
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