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金融審議会が行われている中央合同庁舎第7号館。第3回のワーキング・グループでは地方銀行のヒアリングが予定されている Photo by Takahisa Suzuki
銀行と証券の“壁”撤廃論議が規制緩和で再燃
http://diamond.jp/articles/-/72855
2015年6月9日 週刊ダイヤモンド編集部
規制業種の銀行にとって千載一遇のチャンスが来た。首相の諮問機関である金融審議会で規制緩和案が話し合われているのだ。業務範囲の拡大によるIT活用や異業種進出などがうたわれたが、その場へ呼ばれた銀行は、議論の中では傍流だったある問題を持ち込んだ。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)
銀行グループがアマゾンや楽天のようなEC(電子商取引)モールの運営をする日が来るか。はたまた、ITベンチャーを買収して傘下に収める日が来るか──。
5月19日、金融制度について議論する首相の諮問機関、金融審議会で「金融グループをめぐる制度のあり方に関するワーキング・グループ」の第1回が開催された。
主な議題は、銀行持ち株会社の機能や業務範囲などを制限している規制の再検討だ。環境の変化で今の実態に合わない規制を改め、銀行グループの競争力を高める算段だ。背景には「金融環境が大きく変わり、これまでのビジネスモデルでは成り立たない」(福田慎一・東京大学大学院教授)といった危機感がある。
その金融審の中で、銀行グループの業務範囲拡大によるECモールの運営やIT事業への積極投資、ベンチャー企業の買収などをできるようにする規制緩和案が挙がったのだ。
そして、5月26日に行われたワーキング・グループの第2回では3メガバンクの経営企画部長らが呼ばれ、銀行側が現状認識や規制緩和要望について語った。その中には前述の目新しい、華やかな案も含まれてはいた。しかし、実はそれまでの議論の中では傍流だった、ある宿願も銀行界の要望として俎上に載せてきたのだ。
それは主に銀行と証券の間に築かれた顧客情報共有の“壁”、ファイアウォールに関する規制緩和だ。現在、3メガはグループ内の銀行と証券の連携を深め、顧客との取引の幅を広げようとしている。しかし、利益相反や銀行による優越的地位の濫用などの防止のため、顧客の情報共有はハードルが高い。
また、銀行と証券の兼職は認められているが、その場合は「ホームベース」ルールが適用される。銀行と証券のどちらに“本籍”を置くかを決め、そちらの顧客情報にしかアクセスできなくなるのだ。
実際に兼職制度を採っているみずほ銀行では、「さまざまなシミュレーションを基に、大企業などの取引先数が多い銀行の持つ情報の方が有益だと判断して、ホームベースを銀行に決めた」(みずほ銀行関係者)経緯がある。
ただ、そのために証券サイドの目線では不都合な面も出た。例えば、ある企業が株や債券を発行するとしよう。その場合、発行体企業は機関投資家に向けて説明会を行うが、最も知りたいのは機関投資家たちがどれくらい株や債券に需要を出してくれるかだ。
ところが、銀行ベースの兼職者では証券の顧客である機関投資家の感触といった情報を発行体にフィードバックできないのだ。これは「米国や欧州ではあり得ない制約で、非常にやりづらい」(みずほ証券幹部)という。
米国では「金を貸したところが証券業務も引き受けるのが当たり前で、銀行と証券の連携は普通」(メガバンク系証券会社幹部)で、欧州でも「ユニバーサルバンク」と呼ばれる、銀行と証券が一体の経営形態が一般的だ。「日本市場のファイアウォール規制のために、グローバル共通のシステムに手を加えて対応している」(外資系金融機関幹部)という話もある。
そんな中、前出のメガバンク系証券会社幹部は「日本だけが銀行と証券の連携について厳格過ぎると思わないではない」とため息をつく。金融当局の検査もファイアウォール規制については「ガチガチにチェックされる」。実際に「ある企業の株引き受けシェアが10%から15%に上がったというだけで、銀行の情報や立場を利用した優越的地位の濫用があったのではないかと疑われた」という。
「シェアアップ交渉をするのは当然。当局が違反を疑うのは簡単だが、こちらが無実だというのは『悪魔の証明』で難しい。非常に面倒だ」と不満をぶちまける。
■情報共有の規制緩和 顧客のためか 銀行界の我田引水か
こうした銀行と証券のファイアウォールをめぐる規制緩和の要望は、今に始まった話ではない。銀行界は機会をうかがっては議題に挙げ、多少の成果を出してはきたが、もう一段の規制緩和を求めているというわけだ。
ただ、「顧客ニーズに合った総合的な金融サービスを提供するため」という銀行側の言い分をそのまま受け止める人は多くない。あるメガバンク幹部も「中小企業では、銀行の融資も証券の株・債券引き受けも全部任せますと言われやすいが、大企業になるほど逆方向に働く現実がある」と自ら認めるところだ。
また、個人客にしても銀行と証券の口座の中身や資産内容について情報共有されてしまうことに抵抗感を持つ人も多い。
何ともデリケートな話だけに、議論の行方を注視しておく必要があるだろう。
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