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現役時代の延長ではない老後の資産運用
http://diamond.jp/articles/-/71574
2015年6月9日 後藤順一郎 [アライアンス・バーンスタイン株式会社 クライアント本部戦略ソリューション室長、兼DC推進室長] ダイヤモンド・オンライン
これまで数回にわたり、社会保障審議会企業年金部会での議論についてお話ししてきました。経済協力開発機構(OECD)が後押ししているライフサイクル型の投資信託(ターゲット・イヤー・ファンド)を、日本の確定拠出年金(以下、DC)でも活用する方向で、現在国で検討されています。この背景には、公的年金からの給付額は、公的年金の被保険者数の減少などの分だけ削減されることになっており、特に若くなればなるほど給与対比の公的年金水準が低くなっていくことがあります。
つまり、公的年金の減少分を自助努力であるDCでカバーしてほしいというのが国のメッセージなのです。今までは公的年金で国民の老後を支えるという方針でしたから、これは政策の大転換といっても過言ではありません。一方、DCではまだまだ運用をせずに元本確保型商品(預金や保険商品)に預けている人が多く、このままでは将来、DCが公的年金の代替としての機能を十分に果たせなくなるのではないか、と国が懸念しています。だからこそ、このようなDC加入者に資産運用を誘導し、資産形成を促す改革を進めようとしているのです。具体的には、国はDC加入者が運用する商品を選ばなかった場合に自動的にお金を振り向ける先である「デフォルト商品」を、元本確保型商品からターゲット・イヤー・ファンドをはじめとする長期分散投資を実践する投資信託に変えるということを目指しています。
この改革は現役世代の資産運用を改善するものですが、実は国が問題視しているのはこれだけではなく、退職後の資産運用についても懸念しています。というのも、現在、定年退職時にDC加入者の8割弱の人が一時金で受領しているからです。先ほども述べたように、国はDCを公的年金の代替として活用することを望んでいるため、当然、年金での受け取りを望んでいます。DC資産を年金化する方法には、終身年金商品を購入する方法とDC口座において老後も投資信託で運用しながら引き出す方法がありますが、インフレのリスクに晒される可能性を考慮すれば、今後は運用しながら引き出すことも必要になってきていると言えます。
そこで今回は、老後に運用しながら引き出す際の留意点についてお話ししたいと思います。
■積立局面と引き出し局面は状況が大きく異なる
積立局面においては、ドルコスト平均法、つまり定時定額で投資することが一般的ですが、この方法では、たとえ投資している投資信託の基準価額が下がったとしても、安いときにたくさん購入することで平均購入単価が下がるため、下落後のちょっとした基準価額の回復でも利益が出ることがある、と以前の連載で説明しました。では、引き出し局面はどうでしょうか?
ここでは具体的な例を挙げて考えます。現在100万円あり、ある投資信託で5年間運用するとします。その投資信託の運用リターンのシナリオとして、5年間の平均リターンは同じですが各年のリターンが異なる二つのシナリオを考えます。一つ目は、毎年順調にリターンを獲得するも最後に大きなマイナスを被るシナリオ(1)=(5%、5%、5%、5%、▲15%)、二つ目は、逆に最初に大きなマイナスを被るもその後は毎年順調にリターンを獲得するシナリオ(2)=(▲15%、5%、5%、5%、5%)です。
まず100万円に加えて積立投資で毎年10万円ずつ拠出する場合を見てみましょう。ドルコスト平均法では、最初に大きな下落があったほうが、投資信託を安くたくさん買えるため、利益がより出やすくなります。実際、最初に大きな下落を経験するシナリオ(2)の資産額は5年後に約159万円となりますが、最後に大きく下落するシナリオ(1)では約150万円となるため比べると・が多くなります。つまり積立局面においては、最初に大きな下落を被っても影響が軽微ですが、最後に被るとその影響は大きくなります。
次に、100万円から毎年10万円ずつ引き出す場合を考えます。結論から言うと、今度は逆に最後に大きな下落があるシナリオ(1)の資産額は5年後に約56万円となり、最初に大きく下落するシナリオ(2)の約48万円と比べて多くなりました(※投資信託の手数料や税金等は考慮していません)。
■リスクの取り方は今の資産額の大きさと関連
では、なぜこのような結果になってしまうのでしょうか? 資産運用を行うときには、リスクとリターンを考慮するのはもちろん、運用資産額の大きさも重要になります。なぜなら、同じリターンであっても資産額が異なれば、金額で見たときの影響度も異なるからです。10万円の▲10%は1万円の損失ですが、1000万円の▲10%は100万円もの損失になるということです。
これを踏まえると、積立局面においては資産額が大きい退職直前に大きなマイナスを被るとダメージが大きくなります。引き出し局面では、退職直後の資産額がまだ大きな時に大きなマイナスを被ると、資産額の減少スピードが速まってしまうのです。
■結局ライフサイクル投資が重要
別の言い方をすると、まだ若く資産額が小さいときには大きなマイナスからの影響が限定的であるため、高いリスクを取ることができますが、資産額が積み上がるにつれてマイナスとなったときの影響が大きくなるため、次第に低リスク化していくこと、つまりライフサイクル投資が望ましいのです。そして、さらに大事な点は、退職直後は人生において最大水準の資産が積み上がっていますから、大きなマイナスとならないよう配慮した運用が必要になるということです。高い分配金欲しさに安易にリスクの高い商品に手を出さない慎重さを持ちましょう。
今回の川柳
運用で 注意が必要 引き出し局面
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