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ギリシャの首都アテネの議会に掲げられたギリシャ国旗〔AFPBB News〕
ギリシャ危機、見込みのない2つの改革案 債権団の提案もギリシャの提案も解決策にならない理由
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43984
2015.6.9 Financial Times JBpress
(2015年6月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
テーブルには、今、2つの提案がある。1つは債権団からの提案、もう1つはギリシャからの提案だ。2つに共通していることは、どちらもギリシャ経済を修復しない、ということだ。双方はうわべを取り繕うことさえしていない。どちらの提案も、きっぱり拒絶されるべき代物だ。
欧州の実務家が長い交渉に入ると、常に、技術的な詳細に没頭してしまい、本質的に大きな構図を見ることができなくなる。
彼らは2016年のプライマリーバランス(債務の利払い前の基礎的財政収支)の黒字が国内総生産(GD)比1.5%であるべきか、それとも2%であるべきかという議論に何週間も費やしておきながら、一見、自分たちのさまざまな予想の誤差がプライマリーバランスのこの小さな差より何倍も大きいことに気づかないようだ。
経済外交を担う人々は事の本質、すなわち、ギリシャがユーロ圏内で存続し、いずれ繁栄できるようにするという協議のそもそもの目的を見失った。
■2つの提案の問題点
それほど寛大ではない説明もある。彼らは単に、無関心なのかもしれない。一部の債権者は、何が起きようとも、今やっていることを継続することだけに関心を持っている。
こうした債権者は特に、ギリシャに対する融資が絶対に返済されないことを正式に認めることを拒む。彼らは自分たちがギリシャに関して自国の有権者をミスリードしたことを知っており、少なくとも自分が現職にとどまっているうちは、真実を暴かれたくないのだ。
一方、ギリシャのアレクシス・チプラス首相にとって最大の目標は、権力の座にとどまることだ。融資を繰り延べし、問題がないふりをする「extend and pretend」式の合意――交渉が成功裏に終わるとしたら、結果はその種の合意になる可能性が高い――は、チプラス氏にとって都合がいいかもしれない。
また、それゆえ、交渉担当者には都合がいいが、ギリシャ経済の助けにならないひどい合意が成立する確率も高いわけだ。
では、2つの提案のどこが間違っているのか。まず、ギリシャの提案は不正直だ。
一方、債権者側の提案は、実行不可能だが、ギリシャが支払い義務を果たしながら債務を持続可能な水準に減らすために必要なレベルの緊縮財政を要求している。これは悪い組み合わせだ。
ギリシャの提案が不正直なのは、数字の計算が合わないからだ。ギリシャが提案している財政調整は、GDP比3.5%のプライマリーバランスの黒字――債権者が要求し、チプラス首相が同意すると言っている条件――を達成するために必要な規模よりも緩やかだ。
チプラス氏は債権者に向かって、こう言っているに等しい。「あなた方が好きな数字を何でも喜んで書こう。いずれにせよ、私はごまかすんだから。もし相互信頼の喪失が問題なのだとしたら、この提案は問題を解決するものではない」
■ギリシャが通貨同盟内で欧州北部と共存する道
一歩下がってみると、解決策を見つけるのは難しくない。必要なのは緊縮策の緩和、より多くの公的部門の改革、そして賢明な債務再編だ。ロンドン・ビジネス・スクールのリチャード・ポーテス氏が同僚らと共著した最近の論文で報告しているように、これが、ギリシャ問題の有力専門家らが最近開いた会議で出た圧倒的な結論だ。
ここで我々が話しているのは、例えば採用と解雇といったイデオロギー的な改革や団体交渉の廃止などではなく、信頼できる徴税、近代的な行政、実用的な法制度といった社会的に有益な改革だ。
ギリシャの公的部門のインフラが近代化されなければ、ギリシャと欧州北部の大部分とが同じ通貨同盟の中で共存できる見込みはない。それは、終わることのない構造的停滞につながる可能性が極めて高い。
では、「夏の包括的な交渉に向けて時間を稼げるため、ギリシャは今、悪い取引を受け入れるべきだ」という議論はどうか。この議論の問題は、前提が間違っていることだ。ギリシャが今の取引を受け入れたら、次の合意のベースも受け入れたことになる。財政の計算は変わらないからだ。今、緊縮を受け入れたら、受け入れたことになるのだ。
チプラス氏にとって一番いい交渉戦術は、債権者側の提案をきっぱり拒否し、何らかの賢明なプラン、うまくいく可能性のあるプランを携えて交渉の席に戻ってくることだ。
そうしたプランは、チプラス氏が現在提案している以上の改革を盛り込んでいなければならない。例えば年金や付加価値税について、同氏の有名な「レッドライン」を越えて踏み込む必要がある。
現実的なプログラムでは、ギリシャは今年、プライマリーバランスの均衡だけを約束し、将来は経済動向と連動して小幅な黒字を目指すことになる。これは債権者にとっては受け入れられないかもしれない。それには、もう時すでに遅し、かもしれない。だが、少なくともチプラス氏は道義的に優位な立場を主張することができる。
同氏の現在の提案はその部類に入らない。考えられる最悪の結果は、新たな「extend and pretend」型の合意であり、改革されず、現金が枯渇したギリシャが永続的な不況にはまり込むことになる。
■ギリシャにとっては、ユーロ離脱は最悪の選択肢ではない
そのような道筋の最終的な結果は、市民社会と民主主義の破綻かもしれない。悪い取引は、最終的なユーロ圏離脱の可能性も高くするだろう。グレグジットとして知られる後者は、良い選択肢ではない。ユーロ圏はギリシャの離脱に合理的な利益を持たない。
しかし我々は、ギリシャの観点からすれば、グレグジットは最悪の選択肢ではないということを理解しなければならない。我々は今、ギリシャ演劇のマクベスの瞬間に近づいている。「やってしまったら、すべてが難なく終わるのであれば、早くやった方がいい」という局面だ。
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