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[十字路]供給サイド経済と金融政策
米国経済は、第1四半期に雇用が堅調に増加する一方で成長率が大幅に鈍化した結果、雇用者1人当たりの産出量の伸びが大幅に低下した。この労働生産性の低下トレンドは、一時的なものではなく、今次景気回復局面を通して見られる現象でもある。また、米国では移民増加ペースの減速を受けて人口の伸びも鈍化しており、潜在成長率の低下が指摘されている。
需要の伸びが一定の時に潜在成長率が低下すると、供給の天井が下がる分だけ需給ギャップが縮小する。これは将来のインフレリスク要因だ。足元の需要下振れにもかかわらず、米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長が年内利上げを示唆する背景には、供給サイドの問題を意識している面がありそうだ。
一方、日本では、設備投資の増加に加え、女性と高齢者の就業率の高まりから潜在成長率は今後高まる見込みだ。これは、米国とは逆にインフレ抑制的だ。供給の天井が高まる条件の下でインフレを加速させるには、供給力の増加をさらに上回る需要の高い伸びが必要となる。しかし、足元で海外需要は、アジア経済の減速もあり伸び悩んでいる。その分、内需を押し上げる必要性が高まっているわけだが、インフレ率を短期間に大きく押し上げるほど内需を増加させられるかは疑問だ。
日銀には2つの選択肢が残されている。一つは2%インフレ目標を切り下げることだが、これは円高、株安を招き、期待インフレ率も低下させるので、現実的ではない。
とすると、「2%」は維持するしかないが、日銀が目標とする「2016年度前半ころ」の達成は至難の業だ。であれば、目標達成期限の再度の先送りは必至ということになる。そしてその際、追加緩和を行うと見る市場関係者は少なくない。日銀が市場の期待をうまく制御できないと市場は混乱する可能性がある。
(JPモルガン証券チーフエコノミスト 菅野雅明)
[日経新聞6月4日夕刊P.5]
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