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世界経済回復の足かせとなっているのは?(Mazirama/PIXTA)
世界経済の回復を阻む意外な「真犯人」 景気が良くならない理由は案外単純だった
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2015年06月07日 ロバート・J・シラー :米イェール大学経済学部教授 東洋経済
米国の第32代大統領ルーズベルトは、大恐慌の真っただ中で就任演説を行い、「われわれが恐怖すべきことはただ1つ、恐怖そのものなのである」と訴えた。1933年3月当時、不況の具体的な原因があったわけではなく、問題は人々の心の中にあった。
今日もこれと同じことが起こっているのではないだろうか。2008年の世界金融危機からすでに7年が経つにもかかわらず、世界経済は多くの問題を抱えたままだ。
■恐怖心という重荷
恐怖心が原因で、個人は支出を差し控え、企業は投資を抑制している。その結果として景気が低迷し、人々は恐れたことが的中していると思い込み、さらに支出を控えるようになる。景気の沈滞がさらに悪化し、失望の悪循環が根付くようになる。すでに金融危機を脱したにもかかわらず、この危機が心理面に与えた悪循環から抜け出せないでいる。
グーグルで調べると、「フィードバックループ」(負の連鎖)という言葉が出版物の中に頻繁に現れ始めたのは、1930年代後半の大恐慌の頃で、主に電子機器に関連して使われていた。また1948年になると、偉大な社会学者のマートンが、「自己成就予言」と題する小論を書いて、「自己成就予言」という言い回しが広まった。マートンが典型例に挙げたのが、大恐慌だった。
しかし今や大恐慌の記憶は薄れつつあり、多くの人々は、今どきこんなことが起こりうるなどとは想像もしないだろう。そしてきっと、景気の低迷はフィードバックループよりもっと具体的な原因があって生じているに違いない、と考えているだろう。
しかしこれは間違いだ。金利が最低水準に張り付いているにもかかわらず、投資が急拡大していないことが、如実に示している。
たとえば新たな幹線道路建設の構想が政府にあるなら、今こそその時期だと判断すべきだ。仮に、幹線道路の建設に10億ドルかかり、無期限に通常の保守・修理が必要となり、毎年社会に生み出す予測純受益が2000万ドルだとすると、長期的な実質金利が3%では、採算が取れない。金利負担が便益を上回るからだ。しかし長期の実質金利が1%であれば、政府は資金を借り入れ、建設を実行すべきだ。これは健全な投資だと言える。
米国の30年インフレ連動国債利回りは、2000年に4%を上回っていたのが、今年5月4日には0.86%に下がっている。ほかの多くの国々も同様だ。
■「インスピレーション効果」の効力
1929年以降に米国が最も目覚ましい経済成長を経験したのは、1950年代と1960年代だ。当時の政府は、州間幹線道路システムに多額の資金を投じた。着手したのは1956年だった。いったん州間幹線道路システムが完成すると、人々は時速75マイル(約120キロメートル)で高速道路を走り、国土を縦横に移動して、商業の中心地との行き来ができるようになった。
今日の米国経済は相対的に堅調さを示している。その背景には、注目すべきインスピレーションを生み出している状況があるようだ。シェール革命は、一般的に米国で始まったと考えられているが、おかげでエネルギー価格が下がり、外国産石油への依存度が低下した。また、近年の通信技術の急速な進歩は、大部分をスマートフォンやタブレットのハードやソフトなどの技術革新に負っているが、これらの技術も米国が生み出した。
政府が支出を増やせば、景気をさらに刺激する可能性がある。世界中で複数の国々が政府資金による宇宙開発プログラムを打ち出し、大きなインスピレーション効果を生み出している。もちろん、先導したのは官僚ではなく科学者だ。
しかしこのようなプログラムには、資金の出所が政府か民間かを問わず、人々の心理に変化をもたらす力がある。人々はそこに、偉大な未来に向けての夢を託す。そしてインスピレーションには恐怖心を和らげる効果がある。恐怖心は、ルーズベルトの時代と同様に、今も経済発展にとっての大きな障害なのだ。
(週刊東洋経済2015年6月6日号)
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