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[十字路]手放しでは喜べない円安の進行
2014年度の日本経済の名目成長率は1.4%にとどまった(実質成長率は1.0%減)。国民全体で分かち合うべき所得のパイはわずかしか増えていない。一方、企業収益総額の大半を占める上場企業の経常利益は前年比6%以上増えて、史上最高水準を更新したもようだ。
所得のパイを分け合うのは企業と家計と政府の3部門だが、この年は消費税率の引き上げで、政府部門の所得である税収も増加した。ということは、それ以外、つまり家計と、非上場の相対的に規模の小さな企業の分け前が大きく減少したことになる。
大きな企業の収益が増加した主因は売り上げ増加であり、景気低迷下での増収に貢献した主役は円安だ。輸出で受け取った外貨の円換算額が著しく膨らんだのだ。
しかし、為替差益や差損が生じるのは外貨建て貿易に限られる。14年度の外貨建て貿易額は18兆円超の大幅赤字だった。差益よりも差損の方がはるかに大きく、日本全体で見れば円安が進むほど純差損額が拡大する。
円安の進行は企業収益を改善させるといわれているが、それは大きな企業、中でも上場企業が中心だろう。円安は差損額の拡大を通じて所得のパイ全体を縮小させる。その下で大きな企業の収益が拡大するなら、小さな企業や家計の分け前がそれ以上に減ってしまうのは避けがたい。
上場企業の収益拡大がもたらす株価の上昇に文句をつける人はいないだろうが、その原動力をこれ以上円安に依存すべきではないだろう。誤解を恐れずに言えば、為替相場は経済ファンダメンタルズ自体が動かしているのではなく、それらを格好の材料と考える市場参加者の思惑の振れが決めているのだ。その意味で、そろそろ政治が主導して市場の思惑に影響を与えるべき時が来ていると思う。
(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査本部長 五十嵐敬喜)
[日経新聞6月2日夕刊P.5]
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