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6月3日に開かれたLIXILの緊急記者会見。藤森義明社長はいつもと変わらない強気姿勢だった
LIXIL、優良子会社はなぜ破産したのか 異変を告げた銀行の「督促状」
http://toyokeizai.net/articles/-/71470
2015年06月07日 杉本 りうこ :週刊東洋経済編集部 記者
「当社のグローバル戦略は長期的視野に立ったもの。不退転の決意で継続する」「3年後には株主価値を出す。それが株主に対する経営責任だ」LIXILグループの藤森義明社長は6月3日に開いた緊急記者会見で、そう語った。
会見では、中国子会社・ジョウユウ(本社・独ハンブルク)の不正会計にからみ、自社の損失が総額660億円に上ると発表。従来見込んでいた額がさらに1.6倍に膨らむという内容で、報道陣からは経営責任を問う質問も少なくなかった。だが、藤森社長は時折、笑顔すら見せつつ、いつもと変わらぬ強気の姿勢を貫いた。
■成長戦略に疑問符
発覚したのは実に深刻な不正だった。4月1日に連結子会社化した水栓金具の中国メーカー、ジョウユウ(本社・独ハンブルク)が、巨額の簿外債務を抱えていると判明。金額は確定していないものの、LIXILが計上する損失額を上回るというから、700億円以上の債務を隠していたと推定される。また、売上高や利益の改ざんもあるという。優良企業とされていた同社の実態は債務超過で、5月22日にハンブルク裁判所に破産手続きを申し立てている。
今回の一件で、2013〜2015年度の決算に総額660億円の損失を計上するが、純資産が約6400億円あるLIXILにとって、今回の損失そのものは屋台骨を揺るがすものではない。ただ、2019年度に海外売上高1兆円を目指し、外資の同業を立て続けに傘下に収めてきた藤森義明社長の成長戦略に、疑問符がつき始めたことは間違いない。
ジョウユウは、2014年1月に水栓金具の世界大手・独グローエを買収した際、その子会社として手に入れた。過去5年間で売り上げを2倍に伸ばし、営業利益率も2ケタ台。中国全土に4000店の販売網を持ち、中国市場への橋頭堡となるはずだった。また、福建省に持つ大規模な生産拠点でLIXIL傘下のほかのブランド製品も生産し、コスト競争力を高める原動力にするという青写真もあった。
「ジョウユウからの支払いがない」──。不正発覚のきっかけは4月13日、中国のある銀行からLIXILに届けられた一通の督促状だった。
買収当初、グローエとジョウユウは出資比率が5割以下の持ち分適用会社だったが、4月1日に株式を追加取得し、両社を子会社化したばかり。寝耳に水ともいえる通知を受けて特別監査を実施すると、売上高や負債、手元現金などの額に、財務報告とは大きな乖離があると判明。監査から1カ月足らずで破産手続きに追い込まれた。
■日系金融機関から巨額の与信
ジョウユウはLIXIL傘下に入ったことを生かし、日系金融機関からの巨額の与信を獲得している。同社の2013年12月期の売上高は約3・6億ユーロ(約500億円)だが、2014年7月末には香港子会社が三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行の3メガバンクから、計3億ドルの融資枠を取り付けた。
そのうち1・5億ドルは実際に借り入れが行われ、野村ホールディングス傘下のノムラインターナショナル(香港)がアレンジする銀行団借り入れと、英スタンダードチャータード銀行からの借り入れの返済に大半が充てられた。さらに2014年末までに8000万ドルの借り入れも行い、セラミック工場などの生産設備増強に投じられた。
ジョウヨウが融資枠を得たのはLIXILの子会社となる前だが、今年4月に特別監査を始めた後、メガバンク3行からの要求があったため、LIXILはこの借入の債務保証に応じた。今回計上する損失660億円のうち、債務保証にかかわる特別損失が半分を占めており、残りはジョウユウの株式価値分になる。
ジョウユウが上場していた独フランクフルト証券取引所では、近年、中国企業の不祥事が続発している。2014年9月に起こった福建省の靴メーカーの経営トップ失踪などを受け、取引所が中国企業に対する積極誘致策の見直しに動いているとの報道もあった。
グローエの買収に伴って開いた2014年1月の会見。立って説明をしているのがデイビッド・ヘインズCEO
こうした事例を深刻に受け止めていれば、子会社化する前に、LIXIL本体から役員を派遣するなどし、経営状況に目を光らせることもできた。
だが、ジョウユウの経営を実際に見ていたのは、グローエのデイビッド・ヘインズCEOだけだった。ヘインズ氏は2011年からジョウユウ監査役会メンバーだ。2014年6月から事業会社LIXILの取締役を兼任し、ジョウユウの経営状況について藤森社長に直接報告する立場にあったが、結果的にはこの情報ルートも適正に機能しなかったといえる。
問われるプロ経営者の真価
今回の一件のほかに、カーテンウォールの世界最大手・伊ペルマスティリーザの買収後には、不採算受注の発覚などから、幹部らを大量解雇しており、「M&Aによる成長戦略に対し、株式市場では疑問が生じ始めている」(野村証券の福島大輔アナリスト)といった声も上がっている。
LIXILは遅延していた2014年度決算を6月8日に発表し、6月26日に株主総会を開催する。いずれの場でも藤森社長は冒頭のように、強気の姿勢を示すと予想されるが、投資家はもはや、手放しでは買収攻勢を評価しないだろう。プロ経営者・藤森社長の真価が問われる局面だ。
(「週刊東洋経済」2015年6月6日号<1日発売>「核心リポート03」を加筆)
LIXILグループの会社概要 は「四季報オンライン」で
http://shikiho.jp/tk/stock/info/5938
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