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シャープと東芝をダメにした歴代トップたちの内部抗争 企業の暴走は止められるのか
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150607-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 6月7日(日)6時0分配信
東京証券取引所は、6月1日から「コーポレートガバナンス・コード」の適用を開始した。これにより、日本企業のコーポレートガバナンス(企業統治)は強化されるのだろうか。具体的な事例を見ながら検証してみよう。
●大塚家具
最近、コーポレートガバナンスに関連して耳目を集めたのは、大塚家具の経営権をめぐる親子対立である。同社の業績は2000年代前半まで右肩上がりだったが、01年12月期の営業利益75億円をピークに悪化した。創業者の大塚勝久氏は、自社株買いに伴うインサイダー取引が摘発されたのを機に、09年に長女の久美子氏に社長を譲り、会長に退いた。ところが、トップ人事は二転三転する。
久美子氏のもとで、大塚家具はリーマン・ショック後の景気後退もあって業績が伸び悩む。14年7月、業を煮やした勝久氏は久美子氏を解任。自ら社長に返り咲き、会長を兼務する。ところが半年後の今年1月、同社は久美子氏の社長復帰を発表。勝久氏と久美子氏が、それぞれの人事案を通すために委任状争奪戦を繰り広げた。
大塚家具は、経営をめぐる主導権争いを抑制する機能や仕組みが整っていなかった。同族企業が単なるプライベート・カンパニーであれば、お家騒動がこれほど騒がれることはない。問題は、同社がジャスダックの上場企業であることだ。どちらが経営権を持つべきか、株主の判断に委ねられた。
3月27日に開催された株主総会では、久美子氏は社内取締役を5人から4人へ、社外取締役を2人から6人へそれぞれ変更するなど、ガバナンスの強化を押し出した議案を上程し、出席議決権の61%の賛成を得て可決され、騒ぎはひとまず落ち着いた。
●シャープ
シャープは15年3月期、2223億円の最終赤字に陥った。中期経営計画によれば、国内3500人の希望退職を募り、大阪市にある本社ビルは売却。副社長と専務の計4人が責任を取って6月で取締役を退く。
危機の背景には、コーポレートガバナンスの欠如がある。その象徴が近年混乱を重ねたトップ間の抗争だ。
よく知られているように、町田勝彦氏は1998年に社長に就任した当時「テレビをすべて液晶に変える」と宣言し、04年に液晶専用工場の亀山工場(三重県)を稼働させるなど「液晶のシャープ」の土台を築いた。07年、次期社長として49歳だった片山幹雄氏を指名。液晶のエキスパートである片山氏は、液晶事業の拡大路線を走り、07年に大阪・堺に液晶の新工場を建設することを発表。08年3月期には過去最高益を叩き出した。ところが、同年9月のリーマン・ショックに襲われた。
片山氏は、それでも09年に堺工場を稼働させる。液晶をめぐって、亀山、堺両工場の総投資額は9450億円に上った。結果、拡大路線は裏目に出た。12年に責任を取るかたちで町田氏は相談役、片山氏は代表権のない会長に退いた。そして、次期社長に奥田隆司氏を指名したのは、片山氏ではなく町田氏だったといわれている。
シャープは12年、再建のために提携先を探して奔走し、迷走する。町田氏が先頭に立って進めた台湾・鴻海精密工業との資本提携は交渉が頓挫する。一方、奥田氏から交渉を委任された片山氏は、米半導体大手のクアルコムやサムスン電子と接触して出資を取りつけるなど、社内は混乱した。代表権のない町田、片山両氏が、最前線で経営に関与していたことは“二頭政治”といわれるなど、ガバナンスの欠如を露呈した。
そして13年3月期の赤字が5453億円と過去最悪となり奥田氏が社長を退くと、次期社長として高橋興三氏が就任。この人事も不透明で、さまざまな憶測を呼んだ。誰がどこで何を決めているのか、よくわからなかった。
トップの対立に伴う事業戦略の迷走が、現在の危機的状況の遠因であることは間違いない。
●東芝
インフラ工事等の不適切会計が問題となっている東芝はどうか。14年3月期までの3年間に、営業損益ベースで500億円強の影響が見込まれ、第三者委員会の調査によってさらに膨らむ可能性が指摘されている。
東芝の問題もまた、背景にはトップの対立がある。報道されているように、前会長の西田厚聰氏と副会長の佐々木則夫氏の間には、深い溝があるのだ。
05年に社長に就任した西田氏は、原子力と半導体に傾注し、米原子力大手ウエスチングハウス買収など積極的な投資で拡大路線をとった。しかし、08年のリーマン・ショック後、巨額赤字に転落。09年、西田氏は次期社長として二人三脚で原子力分野を推進してきた佐々木氏を指名し、会長に退いた。しかしその後、両氏は対立を深める。
13年には、佐々木氏の後任として田中久雄氏が社長に就いた。しかし、西田氏は会長に留まり、佐々木氏は1945年以来設けられていなかった「副会長」の職につけられる。同時に、一度常任顧問に退いていた室町正志氏が、取締役に復帰した。この人事の背景には、経団連会長の座を狙っていた西田氏の思惑があるといわれている。
さらに14年、西田氏が相談役に退くと、室町氏が佐々木氏を飛び越して社長経験がないまま会長に就任。佐々木氏は副会長に留まった。これもまた、西田氏の思惑といわれている。
経営トップ陣のゴタゴタが、不適切会計問題に直結するとはいい切れない。しかし、まったく無関係ともいえないだろう。ガバナンスの働かない組織内では、さまざまなかたちでほころびが生じる。
●コーポレートガバナンス・コードは、不祥事の抑制に働くのか
6月1日から適用が開始されたコーポレートガバナンス・コードは、安倍政権が打ち出した「日本再興戦略」の一環として策定された。昨年制定された「スチュワードシップ・コード(責任ある機関投資家の諸原則)」とともに、コーポレートガバナンス強化の“車の両輪”といわれる。
コーポレートガバナンス・コードの適用によって、経営への監視・牽制効果、企業の競争力、収益力の向上に加え、経営の透明性を確保して海外からの投資を呼び込む効果などが期待されている。
コーポレートガバナンス・コードには、「株主の権利・平等性の確保」「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」「適切な情報開示と透明性の確保」「取締役会等の責務」「株主との対話」が定められている。具体的には、独立性の高い社外取締役を2人以上選任、女性活用や事業持続可能性への対応の公表などが求められる。
では、コーポレートガバナンス・コードの適用は、日本企業のガバナンス強化の切り札となり得るのか。
大塚家具はジャスダック上場企業なので、コーポレートガバナンス・コードの対象外だが、株主総会前の段階で2人の社外取締役がいた。実は今年1月15日、社外取締役や社外監査役の6人から会長兼社長の勝久氏(当時)に対して、コンプライアンス体制の強化や適切な開示および株主に対する適切な対応などの要望事項が提出された。その意味で、コーポレートガバナンスは機能しなかったわけではない。しかし、勝久氏は聞く耳を持たず、“外部の目”はトップの暴走を止められなかった。
シャープは、08年に執行役員制度を導入した。複数の社外監査役に加え、09年以降、1人、もしくは2人の社外取締役を設置している。東芝は03年に指名委員会等設置会社(当時の委員会等設置会社)に移行した。しかし、両社とも混乱を避けることにはつながらなかった。
確かに、コーポレートガバナンス・コードの適用によって、経営の効率化が進んだり、不祥事に抑制が働くことはあるだろう。株主、とくに海外の投資家に対して経営の透明性をアピールする効果が期待できる。しかし、コードの適用が万能ではないこともまた、ここまでに挙げた事例から容易に想像がつく。
企業の評価基準をめぐっては、リーマン・ショック後に大きく変わった。「量」よりも「質」が問われるようになった。実際、経営陣の間に確執や抗争があれば当然物事がなかなか決まらないし、経営のスピードも落ちる。会社が一つにまとまって前に進むことができないなど、弊害があまりにも多い。その意味で、経営の「質」を問うコーポレートガバナンスの重要性は増す一方だ。
企業は私物ではなく、消費者や社員、地域社会、株主などステークホルダーとつながった「社会の公器」であることを、経営者は以前にも増して何倍も肝に銘じなければいけない。また、企業の存在意義を明確に定め、経営理念に基づいた運営を行うことが求められるのである。
(文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家)
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