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「待機老人52万人・待機児童2万人」そんなわけないだろ…
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150606-00000011-pseven-soci
NEWS ポストセブン 6月6日(土)7時6分配信
世の中に存在する様々な「数字」。これを鵜呑みにして良いものなのだろうか……。こうした「数字」を元に、様々な問題点について、元経済産業省官僚でNPO法人社会保障経済研究所代表の石川和男氏がこれから「もの言う数字」として論を展開する。第一回は待機児童と待機老人に関する「数字」についてだ。
* * *
政府が作る数字には「不都合な数字」がたくさんある。その代表格が「待機児童」と「待機老人」。
厚生労働省は、「待機児童」を「保育所の入所申込みをしたが、未だ入所できていない児童」と定義し、待機児童数は「2014年4月現在で2.1万人」と言う。しかし、この数字はおかしい。
2014年4月現在、就学前児童(0〜5歳児)は631万人、保育所定員は234万人、保育所利用児童数は227万人。これに比べて待機児童数2.1万人とは0.3%程度。これはあまりにも小さいではないか。それなのに、待機児童問題が大きな政治的課題になっているのはなぜか。
答えは簡単。待機児童の定義があまりにも狭いからだ。待機児童は何かと問われたら、私も含め多くの人は、保育所の入所申込みをしているかどうかではなく、「幼稚園や保育所に入れていない就学前児童」と答えるのでないだろうか。
政府がこれまで保育行政の対象にしてきた待機児童の定義は、「保育所の入所申込みをしたが、未だ入所できていない児童」に過ぎず、それ以外の多くの「保育所の入所申込みに至っていない児童」を含んでいない。
そこで、「保育所の入所申込みをしたが、未だ入所できていない児童」だけでなく、「何らかの保育サービスを必要とする待機児童(つまり、潜在的な待機児童)」の数を弾き出してみた。
私が算出すると、細かい計算式はここでは省略するが、数えられていない「潜在的な待機児童」の数は185万〜345万人となる。この数字のバラつきの理由は、前提条件の置き方によって幅があるからだ。厚労省が発表している数字とは、定義が異なるとは言え、あまりにも違う。桁が二つ
も違う。
12年11月22日付の日本経済新聞に「待機児童解消遠く 潜在数300万人超す 民間推計 厚労省の想定上回る」と題する記事が掲載されている。この記事に出てくる民間推計とは、私が発表した推計のこと。保育施設不足が深刻であることを、数字を以って強く訴えた。
2013年4月、安倍政権は待機児童解消加速化プランを策定し、従来にないほどに待機児童解消に向けて動き始めた。それから2年が過ぎた現在、まだまだ待機児童解消にはほど遠い。待機児童を巡る数字は、政府にとっては、たいへん「不都合な数字」なのだ。
次に「待機老人」。
厚労省の定義では、特別養護老人ホーム(特養)に入所できない高齢者のこと。2013年度現在52万人。介護施設の中で「終の住処(ついのすみか)」となるのは特養だけなので、特養の待機老人が即ち、子どもや孫の世話にならない終の住処の待機老人。
この数字も、やはりおかしい。
特養入所も含めて、費用の9割が補助される介護保険の適用には要介護認定が必要。2015年1月現在で認定者は601万人。居宅など介護予防サービス受給者は420万人、施設サービス受給者は特養52万人を含め90万人で、計510万人に保険が適用されている。
要介護認定者でも介護保険を受けられない人は90万人。さらに、介護は家族ではなくプロ任せにすることで、子どもや孫など現役世代に迷惑をかけないことが介護保険の真の趣旨なので、特養以外の介護保険サービスの受給者460万人も待機老人となる。この460万人と先の90万人の計550万人が待機老人という計算になる。これは、厚労省による“待機老人52万人”の10倍を遥かに超える数。
政府が出す数字には要注意だ。数字が実態とかけ離れていると、政治家がどんなに素晴らしいことを語っても、結局は一瞬の美辞麗句で終わることになるからだ。
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