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シャープ、裏目に出た「蓄積の戦略」と「まじめな企業文化」 銀行団は救世主となり得るか(Business Journal)
http://www.asyura2.com/15/hasan97/msg/385.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 6 月 06 日 07:31:10: igsppGRN/E9PQ
 

シャープ、裏目に出た「蓄積の戦略」と「まじめな企業文化」 銀行団は救世主となり得るか
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150606-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 6月6日(土)6時0分配信


 ある銀行員は言う。

「3月末から4月はじめは、忙しくて大変なんです」

 銀行といえば、朝早くから夜遅くまで働くハードワークで知られる。さぞかし、仕事で忙殺されているのだろうと思いきや、それだけではなかった。

「前の支店長が転勤になり送別会が終わったかと思えば、次は新支店長の歓迎会です。支店長ともなれば、大きなケーキが用意されます。支店で働く私たちにとっては、もっとも大切な行事なんです」

 実は、この「お祝いごと」に沸いていたのは、大阪・堺にあるみずほ銀行の支店。堺といえば、シャープの運命を決めた因縁の土地である。いうまでもなく、戦艦大和よろしく、不沈の「戦略兵器」として建設された大規模な液晶パネルコンビナートが、暗い影を落としている地である。下手をすれば、「平成の軍艦島」になりかねない。

 60インチ型以上の大型パネルを効率良く生産できる最先端の液晶コンビナートが竣工したとき、同社の経営者だけでなく従業員も期待に胸を膨らませていた。誰もが「大きく羽ばたくシャープ」を疑わなかった。ところが、リーマンショック後の消費低迷によりテレビが売れなくなり、液晶パネルの需要は激減して在庫の山となった。さらに、台湾、韓国メーカーの追い上げにより、価格競争の波に飲み込まれていった。

 その近所にあるメインバンクの支店で、「支店の一大イベント」を催し、祝杯をあげていたのだから皮肉である。その後、「お客さんからシャープのことについて聞かれたら、『何も知りません、と言っておくように』と緘口令が敷かれた」という。4月下旬、次のように報道されたからだ。

「みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行は、それぞれ1000億円、総額2000億円の金融支援を行うことを内定した。融資額を優先株に転換するデット・エクイティ・スワップ(DES)と呼ばれる方法で行う」

●液晶テレビ事業の開花

 ここで、銀行の守秘義務の対象になってしまったシャープの栄枯盛衰を復習しておこう。

 かつてシャープは、国内テレビ市場で松下電器産業(現パナソニック)、ソニーに続く東芝と「万年3位」の座を競い合ってきた。シャープはブラウン管を持っていなかったため、販売したいときに増産できず商機を逃してきた苦い経験から、キーデバイス(基幹部品)の強化に取り組んできた。その結果生まれたのが液晶だった。最終的な目標は、テレビのキーデバイスとして液晶を使い、ブラウン管テレビ時代の雪辱を果たすことだった。ブラウン管並みの画質にするまでには長い年月を要した。だが、町田勝彦氏が社長に就任し、大きな転機を迎える。

 町田氏が社長に就任して2カ月後の1998年8月、町田氏自らが「シャープは2005年までに、国内で販売するカラーテレビをすべてブラウン管から液晶に置き換える」と宣言したのだった。この発言をした翌日、「シャープ、ブラウン管テレビを全廃」といった見出しが全国紙に躍った。販売店だけでなく、社員にとっても晴天の霹靂と受け取れる報道だった。町田氏も「2005年に」とマニフェストを発したからには、有言実行しなくてはならなくなったが、そこには確かな勝算があった。既存事業を捨て、新規事業にリプレイスすべき条件を満たしていたからである。結果的に、テレビがブラウン管から液晶やプラズマなどのフラット・ディスプレイに移っていった中で、液晶テレビ(国内市場)でダントツ1位に躍り出た。

 町田氏は、大画面テレビ用液晶パネルを増産するため、亀山第1工場(三重県亀山市)に加えて、06年10月に亀山第2工場も稼働し、生産の国内回帰を実現した。その背景には海外事業部長時代の苦い経験があった。プラザ合意(85年)以降、急激な円高に直面し、日本メーカーは生産拠点を相次いで東南アジアへ移した。その結果、努力しなくても低コストで生産できるようになり、町田氏は「その後10年間、(シャープの)生産技術は進化しなかった」と話していた。

 町田氏は佐伯旭氏(2代目社長)が種をまき、辻晴雄氏(3代目社長)が液晶を部品としてだけでなく自社製品に活用する「液晶スパイラル」という戦略を推進し、液晶テレビを誕生させた。それを町田氏は引き継ぎ、液晶テレビ事業を開花させ、売り上げを急拡大した。ここまでは、長期政権のもと、シャープの蓄積が奏功したといえよう。

●「蓄積」というシャープの遺伝子

 そして、町田氏を後継した片山幹雄(5代目)社長は液晶のさらなる発展を期待したが、今から思えば、絶好調だった町田社長時代に新事業の種をまき、育てるべきであった。それが片山社長時代に開花し新しい食い扶持になっていれば、リーマンショックのような想定外の外的要因や、サムスンをはじめとする韓国・台湾メーカーの液晶分野における猛迫によるダメージを軽減できたはずである。
 
 町田氏も新しい種をまいてはいたが、3兆円企業の大所帯を食わせていくには、力不足の事業ばかりであった。「液晶テレビの大成功」という果実を手にし、同事業はまだまだいける、いや、さらに拡大していかないといけない、と判断したのだろう。そして、片山氏は、町田氏の路線を継承し、さらに発展拡大しようとした。「蓄積」というシャープの遺伝子からして順当な戦略的意思決定であると考えられた。

 予見力の重要性を強調していた町田氏が、なぜ新規事業育成という点でそれを十分発揮できなかったのだろうか。皮肉な論理に聞こえるかもしれないが、蓄積を重んじ、先輩(創業者や前社長)を尊重する企業文化ゆえ、液晶に肩入れしすぎ、その結果「液晶一本足打法」と揶揄されるようになったのだろう。

●かつての三洋と同じ状況

 現社長(7代目)の高橋興三氏は就任直後から「けったいな文化を変える」と発言している。具体的には、上司を「社長殿」「部長殿」など二重の敬称で呼ぶ、事前の目標数値を下回ると「×」がつく減点主義の評価、根回しが横行し社長訓示を聞くだけの「セレモニー」と化した会議、部署内で簡単な報告事項にも形式ばった書類を準備する、といった悪しき慣習である。

 たしかに、筆者も取材を通してシャープのこのような企業文化を垣間見た。良く言えば、同社の社員はそこまでしなくてもと思うぐらいまじめなのだが、悪く言えば、そのまじめさが外ではなく内に向かっている節があった。それは、同社の歴代社長が強いリーダーシップを持つ重たい存在であったということと裏腹である。社長が求める以上に、社員が雲の上の人として崇めてしまった感があった。その行動特性は、上司と部下の関係にも現れていた。

 高橋社長は、1事業で1兆円よりも、100事業で100億円ずつ売るという「脱・液晶一本足打法」を訴え、事業の新陳代謝を促している。ロボティクス、スマートホーム/モビリティ/オフィス、ヘルスケア・医療、教育、食/水/空気の安心安全、革新商品などの6分野で150の新規案件を検討していた。

 ところが、事は思い通りに進まなかった。14年秋からシャープの業績は再び下降し始めた。中国向けのスマートフォン用液晶パネルとテレビの販売が急速に落ち込んだことが主な原因だ。貧すれば鈍する、を絵に描いたような状況に陥った。三洋電機の元部長は、「かつての三洋と同じ状況になってきた」と話す。たしかに、「けったいな文化」がどうのこうのと言っている場合ではなくなってきた。

「いたずらに規模のみを追わず、誠意と独自の技術をもって、広く世界の文化と福祉の向上に貢献する」

 佐伯氏が、創業者・早川徳次氏の意をくんで73年に定めた経営理念の一節である。この文言に反し近年、シャープはいたずらに規模を追ってしまった。だが、それよりも罪なのは、液晶という既存の主力事業ばかりに目が行き、「誠意と独自の技術をもって」新規事業をタイムリーに創出せず、大いなる端境期をつくってしまった結果である。

●問われる銀行の力

 ところで、冒頭のみずほ銀行員は、一般人が持つ銀行のイメージとは裏腹な光景を口にした。

「銀行に勤めている女の人は、タバコを吸う人が多いんです。うちの支店の喫煙室も女性でいっぱいです」

 女性がタバコを吸うか吸わないかは個人の自由ではある。そして、支店などでは正社員だけでなく、非正規雇用の人が増え、働く人々が多様化しているという点を割り引いても、保守的な職場と見られてきた銀行の企業(職場)文化が変わってきたことを象徴するエピソードだ。

 かつて、みずほ銀行の前身の一つである富士銀行は、シャープのメインバンクとして苦境期に救いの手を差し伸べ、シャープは息を吹き返した。このようなバンカーの心意気を、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行は忘れないでほしい。

 金融は「経済の血」といわれ、なくてはならないものだが、一方で経営はカネだけではなく、ヒト、モノ、情報で成り立っている。銀行主導による改革の名のもと、新しいモノを生み出すメーカーの首を絞め、モチベーションを下げるようなことだけはやってはならない。現在、みずほ銀行は橋本明博氏、三菱東京UFJ銀行は橋本仁宏氏をシャープの取締役に置いている。事実上の銀行管理である。その割には、「銀行力」が発揮されていないのではないだろうか。

 銀行から見れば、経営改革が進まないシャープにしびれを切らしているのかもしれない。それにしては、すでに14年末には15年3月期に2期ぶりに赤字に転落することが明らかになっていたのに(最終損益が2223億円の赤字、前の期は115億円の黒字)、それまでに経営悪化を防ぐことができなかったのである。

 しかし、まずは切ることにより利益を出そうとする発想は銀行らしい。それを映し出したのが、5月14日に発表された中期経営計画である。その柱は、3500人の希望退職募集と社内カンパニー制の導入だった。高橋社長は、「社内カンパニー制により責任を明確にする」と表現しているが、赤字を出せば切り売りすることもあり得る銀行の意向を取り入れたものと考えられる。

 ある構造改革を断行した百貨店の元役員は「利益を出すなんて簡単なんです。切ればいいんですから。その後、成長を持続させることが難しいのです。それを実現できてこそ、構造改革と言えるのです」と話していた。

 みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行は、シャープが持続的に成長できるようになったときにはじめて、大きなケーキを用意して祝杯をあげていただきたい。シャープで働く優秀な人々の魂まで切らないことを切望する。
(文=長田貴仁/岡山商科大学経営学部教授<経営学部長>、神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー)

長田貴仁/岡山商科大学経営学部教授(経営学部長)、神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー


 

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コメント
 
1. 2015年6月06日 09:07:09 : tGU1vIJ6Yw
家電メーカーの中でも消費者のニーズに一番近いところで商品を企画するシャープのきめ細かさは他の家電には見られ無い良いところである。両開き冷蔵庫、洗濯槽に穴が無く清潔さをうたった洗濯機、電池交換式のコードレス掃除機、プラズマクラスターの除湿機、いずれも消費者目線の良いコンセプトである。しかしいずれも最後の詰めの甘さを感じる。例えば蓋を開位置に固定できない洗濯槽、電池の抜き差しがやりにくくフィルターが直ぐに詰まる掃除機、受水タンクの脱着がやりにくい除湿機。まさに今のシャープを見ているようである。せっかく黒字を出しながら、最後の詰めの甘さで赤字転落してしまう。家電の優等生も人材や技術を生かし切れずに苦しんでいるような気がしてならない。現場や技術を知らない経営陣、金勘定しか頭にない銀行、企業の将来を考えずに干渉してくる政府(外圧に負けて液晶技術を韓国に出すように圧力をかけた責任は重大である)、足を引っ張るだけ引っ張っておいて、いざとなると知らん顔。優秀な技術者を大勢抱えるシャープである。ここは逆境に負けずに、起死回生の大逆転を期待したい。

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