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2015年5月22日のFSOC(金融安定監督評議会)での講演で、「年内に利上げすることが適切」と話したFRBのイエレン議長(ロイター/アフロ)
円安は年内128円まで、130円にはならない 値動きのパターンから予測するドル円相場
http://toyokeizai.net/articles/-/72006
2015年06月04日 村田 雅志 :ブラウン・ブラザーズ・ハリマン通貨ストラテジスト 東洋経済
ドル円相場について、期間が長めのチャートを眺めてみてほしい。リーマンショック後の値動きは、(1)レンジ内での推移、(2)上昇(もしくは下降)トレンドでの推移、の二つのパターンをおおむね繰り返している。
たとえば、今年のドル円の値動きをみると、
・1月初め〜1月中旬:1ドル=121円から116円ちょうど近辺まで下落((2)のパターン)
・1月下旬〜2月上旬:117〜119円での推移((1)のパターン)
・2月中旬〜3月上旬:122円ちょうど近辺まで上昇((2)のパターン)
・3月下旬〜5月中旬:118〜121円での推移((1)のパターン)
・5月下旬〜6月2日:125円まで上昇((2)のパターン)
となっている。5月下旬から始まったドルの対円での上昇は、1ドル=118〜121円というレンジから、次の新しいレンジにシフトするプロセスであると考えられる。
■FRBが相次いで年内利上げのメッセージを発信
レンジ相場を続けてきたドル円が5月下旬に上昇基調に転じた最大の理由は、利上げ開始に対するFRB(米国連邦準備理事会)の意欲を市場が感じ取ったためと考えられる。
ドル円がレンジ相場で推移していた4月から5月中旬にかけては、市場では米国の経済指標の弱い結果を受けて、利上げ開始は先送りされるとの見方が強まっていた。第1四半期の米国のGDP(国内総生産)成長率は、4月29日発表の速報値で年率0.2%増と前期の同2.2%増から大きく鈍化。5月13日に発表された4月の米小売売上高が前月比横ばいと、市場予想に反し伸び悩んだ。
4月のFOMC(連邦公開市場委員会)声明では、現在の事実上のゼロ金利政策の解除(利上げ)にあたって、労働市場の情勢を示す指標や、インフレ圧力やインフレ見通しの指標、金融市場の状態や国際情勢を含めた幅広い情報を考慮して判断していくとの説明を維持していた。第1四半期だけでなく4月になっても米景気に力強さがみられないのであれば、FRBは利上げ開始を先送りすると考えるのが自然である。
こうした利上げ先送り観測が後退したきっかけは、サンフランシスコ連銀が5月18日に公表した論文だ。同論文は、第1四半期の米国のGDP成長率は季節調整が不十分なために過度に押し下げられていると指摘。季節調整を2度かけることで季節性を取り除くと、第1四半期のGDP成長率は年率1.8%増になるとの推計結果が示された。同論文に関する報道が広がると、ドル円は4営業日ぶりに120円台に回復した。
その後、FRBのイエレン議長は5月22日の講演で、年内のいずれかの時点で利上げに着手し、金融政策の正常化プロセスを開始するのが妥当と考えると明言。また、フィッシャー副議長は25日の講演で、2018年末には政策金利が3.25〜4.00%の水準に上昇するだろうとの見通しを示した。FOMCに大きな影響力を及ぼすFRB議長、副議長の両者が、金融政策の正常化(事実上のゼロ金利政策から脱却し、政策金利を一定の水準に引き上げること)に対し強い意欲を示せば、市場は利上げ開始観測を強めざるをえない。
■日本側から円安を進める材料は出にくい
黒田総裁の発言から、日本銀行の追加緩和観測は遠のいている(撮影:尾形文繁)
しかし今回のドルの対円での上昇トレンド((2)のパターン)はすでに終了したと思われる。
一部で期待の強い日本銀行の追加緩和は当面、見送られる可能性が高いほか、日本政府の関係者からは、急ピッチな円安を警戒する姿勢が示されている。日本サイドから円安材料が出にくい以上、ドルが対円でさらに上昇することは見込みにくい。
ドル円は6月2日午前に1ドル=125円台を一瞬付けたが、すぐに反落。本稿執筆時点(6月3日東京市場)では124円ちょうど近辺でのもみ合いが続いている。
6月5日に発表される5月の米雇用統計が無難な結果となれば、ドル円は6月のFOMCまでは(1)のレンジ内での推移というパターンを続けるとみるべきだ。新しいレンジは1ドル=122〜125円と想定される。
6月のFOMC声明では、第1四半期の米国の景気減速は一時的で、第2四半期以降は持ち直し基調が強まった、との判断が示されるだろう。またイエレン議長の会見では、利上げ開始時期に関し「経済指標の結果次第」とのスタンスを変えないまでも、利上げ開始を可能にする環境が整うとの見方を示すのではないか。
■年内は128円程度がメド
この場合、ドル円は再び上昇トレンド((2)のパターン)に戻る可能性がある。ただ日本サイドからの円売り材料が出にくい状況に変わりはなく、年内のドルの対円の上値メドは128円程度とみるべきだろう。一部からはドル円が年内に130円を付けるとの見方も示されているが、そこまでドル高・円安が進めば、米国内からもドル高を懸念する声が強まりやすく、日本でも円安によるコスト増を指摘する声が強まりやすい。
仮にFOMC声明やイエレン議長の会見内容が、4月のFOMCと同様に慎重な表現・内容となれば、米利上げ開始観測も一服し、多少のドル安円高に振れる可能性もあるが、その場合でも(2)のパターンが維持され、1ドル=122円程度と思われる。
6月のFOMCで米国の利上げ開始観測が一服したとしても、9月が近づけば利上げ開始観測は再び高まるだろう。タイミングは見定めにくいものの、ドル円が年内に再び上昇トレンド局面((2)のパターン)に入り、一段高を記録する展開に変わりはないとみられる。
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