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輸出に大きく依存する韓国企業が不振にあえいでいる(写真は韓国・蔚山の造船所)
韓国経済に激震、輸出が6年ぶりに2ケタ減 日本向けは、香港、ベトナムに抜かれ5位に後退
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43943
2015.6.4 玉置 直司 JBpress
輸出立国を掲げ、貿易依存度が5割を超える韓国の輸出の不振が続いている。5月の輸出額は約6年ぶりに2ケタ減となった。主力製品の輸出がほぼ全域向けで不振だった。世界的な景気回復の遅れに円安が追い討ちをかけている。
2015年6月1日、ソウルのホテルで尹相直(ユン・サンジク)産業通商資源部長官と中国の高虎城商務相が中韓自由貿易協定(FTA)に署名した。両国間の貿易拡大への期待は強い。
だが、この日、産業通商資源部は、深刻な統計を発表した。「5月の輸出入動向」(速報値)だ。
それによると、5月の輸出額は423億9200万ドルで前年同月比10.9%減だった。輸出は2015年1月に前年同月比1%減となり、マイナスに転じた。その後も2月3.3%減、4月4.5%減、5月8.0%減とマイナス幅がどんどん拡大し、ついに2ケタの減少になってしまった。
輸出が2ケタのマイナスになったのは、リーマンショックの影響で世界景気が一気に冷え込んだ2009年8月以来、約2年ぶりのことだ。
■輸出頼みの韓国経済、半導体とスマホ以外はほぼ全滅
韓国経済はもともと「内需が小さく、輸出頼み」の構造だ。その輸出が不振で、2015年の経済成長率も2%台に落ち込むとの懸念が強まっている。
輸出を品目別に見ると、半導体やスマートフォンなどは好調だった。半導体は、パソコン向けDRAMは不振だったが、スマホ向けのメモリーやシステム半導体の輸出が好調で、5月の輸出額は前年同月比4.8%増の51億4000万ドルだった。
スマホも好調だった。産業通商資源部は「LG電子が5月末に米国市場で第4世代(G4)対応の新機種を発売したことに加え、サムスン電子が、ギャラクシーS6の対日輸出を本格化させた」ことで無線通信機器の輸出額は前年同月比26.6%増の30億9000万ドルとなったと説明した。
だが、他の主力製品はほぼ全滅だった。石油関連(前年同月比40.9%減)、家電(同34.7%減)、船舶(同33.4%減)、石油化学(同22.8%減)、鉄鋼(同19.2%減)など、韓国の主力輸出製品が軒並み2ケタ減となってしまった。自動車も前年同月比7.9%減だった。
造船業界では、身売りや再編が続いている。また、現代自動車は、海外事業担当の責任者を急遽、入れ替えるなど対応に必死だ。
■現代自動車株が急落
この統計が発表になった翌日の6月2日、現代自動車グループ企業の株価が急落した。輸出環境の悪化で業績先行きへの不安感が高まったためだ。
現代自動車の株価は、前日比10.36%(1万6000ウォン)下落し、13万8500ウォンになった。4年9カ月ぶりの安値だ。部品メーカーの現代ウィア、現代モービスや起亜自動車の株価も一斉に下落した。
仕向け先国・地域を見ると、中国向け(前年同月比3.3%減)、米国向け(同7.1%減)、欧州連合(EU)向け(同9.0%減)と総崩れだった。
日本向けはもっと打撃を受けた。輸出額が前年同月比13.2%減少したのだ。対日輸出は、1月19.9%減、2月23.3%減、3月23.5%減、4月12.4%減とずっと2ケタ減が続いている。
1〜5月の韓国からの累計輸出金額を見ると、日本向けは前年同期比18.4%減の111億ドル。ついに香港、ベトナムに抜かれ5位になってしまった。
■貿易黒字は高水準維持、さらなるウォン高への懸念も
韓国からの輸出額が、香港やベトナムに抜かれることなど、つい数年までは想像もできなかったことだ。ちなみにベトナムにはサムスン電子のスマホや家電の大型工場があり、部品や材料などの輸出が増加しているようだ。
5月は輸入も前年同月比15.3%減少して361億ドルだった。40カ月連続で貿易黒字を計上し、金額も63億ドルと高い水準を維持した。
しかし、輸出入ともに2ケタ減少で、喜んでいられない。特に、黒字が積み上がることで先行きウォン高が進む懸念もあるのだ。
どうしてこんなに輸出が減少したのか。
「毎日経済新聞」(6月2日付)は、「輸出ショック」という記事で、最近の輸出不振の原因を3つ挙げている。
1つは、中国依存度の高さだ。韓国の対中輸出依存度は25%で、輸出先の国・地域としては圧倒的な存在だ。中国経済への依存度を高めることで韓国は輸出を伸ばしてきたが、そのブーメラン効果が出ていると指摘している。
韓国の対中輸出は、5月で4カ月連続で前年同月比マイナスとなった。これが輸出全体の減少の大きな原因だ。
「毎日経済新聞」は、6月2日付の1面トップが「危機の輸出・・・6年ぶり2ケタ墜落」だった。中韓FTAよりも、目先の輸出減がより深刻なのだ。
2つ目が、価格で勝負してきた輸出戦略の問題だ。
価格競争力がない製品はすでに生産拠点が韓国外に移っている。では韓国は何を生産して輸出するのか。ここ数年のウォン安でこうした戦略を考えてこなかったツケが回ってきた。
■日中に挟まれる「サンドイッチ現象」に円安が追い討ち
3つ目は2つ目の原因と密接に関係がある。主力輸出品目が10年前とまったく変わっていないことだ。
アベノミクスが始まってからの急激な円安は韓国企業に大打撃を与えている〔AFPBB News〕
携帯電話機、自動車、造船、石油化学、半導体、ディスプレー、石油製品、鉄鋼――。この8品目は10年前も今も韓国の主力輸出製品だ。
これら8品目は、10年前は、日本製より安く、中国製より高品質だった。円安で日本製品の価格競争力が高まり、中国製品の品質が向上した。日中間に挟まれる「サンドイッチ現象」が出ているのだ。
さらに追い討ちをかけているのが円安だ。円安は単に日本向けの輸出に打撃を与えているだけではない。韓国企業の製品は、日本企業と競合する場合が多い。自動車、機械、鉄鋼などの製品で、韓国製品が海外市場で競り負ける事態が続出しているのだ。
■アベノミクス批判が一転、「日本の教訓に学べ」
「日本の教訓に学べ」。韓国メディアでは最近、こういう記事が多くなっている。日本製品の競争力が向上し、企業の業績が良くなっているのは、円安だけが理由なのか。そうではなく、超円高の時に、コスト削減や製品開発、新市場開拓などの努力を続けた。円安になって、この間の対応が、大きな効果を挙げているという分析だ。
日本経済に対する見方は最近になってがらりと変わってきた。
2年6カ月ぶりに開催された日韓財務担当閣僚会議に出席するため5月23日に訪日した崔Q煥(チェ・ギョンファン=1955年生)副首相兼企画財政部長官は、東京で韓国メディアの在京特派員と昼食会を開き、次のように評価した。
「以前は、韓国は(強力なリーダシップがある)大統領制だからいろいろなことができると日本の方がうらやましがった。過去の日本は何も手が打てない構造だったが、安倍首相が対応手段を確保した。政治的な安定を背景に構造改革の成果が出ている」
2014年9月には「アベノミクスと言うがお金を印刷する以外に何があるのか」と批判していた人物の発言から見れば様変わりだ。
崔Q煥副首相はさらに「どんなに一生懸命に対策を考えてもうまくいかない。労働、教育、金融、公共部門の4大改革を通して構造改革を実現しなければならないのに、国会の協調が全然ない」と嘆いてみせた。
輸出不振で、2014年に3.3%だった韓国の成長率は、2015年に2%台に落ち込むという悲観論が強まってきた。
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