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日本株は続落、円安一服と短期過熱−輸出一角、不動産に売り カネ余り第二幕 5月に売れを無視した賢明な判断 債券下落 
http://www.asyura2.com/15/hasan97/msg/302.html
投稿者 rei 日時 2015 年 6 月 03 日 11:10:14: tW6yLih8JvEfw
 

日本株は続落、円安一服と短期過熱−輸出一角、不動産に売り
2015/06/03 09:24 JST 

  (ブルームバーグ):3日の東京株式相場は続落して始まった。為替の対ドルでの円安一服やギリシャ情勢の不透明感が嫌気されているほか、長期連騰後の持ち高整理の売りが続き、電機やゴム製品など輸出関連株の一角、不動産や銀行、食料品、海運株中心に安い。
TOPIX の始値は前日比5.72ポイント(0.3%)安の1668.49、日経平均株価 は100円4銭(0.5%)安の2万443円15銭。
午前の為替市場では円が対ドルで124円前後と、東京株式市場の前日終値時点の124円64銭に比べ円高方向に振れている。2日には2002年12月以来の高水準となる125円5銭を付ける場面もあったが、その後は円安の勢いが鈍った。今週は、5日に米国の金融政策に影響を与え得る5月の米雇用統計が発表予定で、ギリシャによる国際通貨基金(IMF)への3億ユーロの返済期限も迎える。
前日の日本株は下落したものの、1日までのTOPIXの12連騰中の上昇率5.5%に対し、下落率は0.3%にとどまった。サイコロジカルラインはTOPIX、日経平均株価とも92%、相場の買われ過ぎ・売られ過ぎを判断するテクニカル指標の1つである相対力指数(RSI)は2日時点でTOPIXが71%と、なお買われ過ぎの70%以上にある。
SMBC日興証券投資情報部の西広市部長は、「当局者によるけん制発言がなされた経緯もあり、急激なドル高に対する反対の値動きへの警戒感が出ている」と言う。日本株についても、「足元の株価水準に短期的な過熱感が残っている」と指摘した。
また、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスへの不安感もある。韓国保健福祉省は、新たに5人のMERS患者を確認したと発表、感染者は合計30人になった。西氏は、「訪日客の増加を期待していたが、韓国で感染が広がってきている状況から、もし感染が広がってくると多少なりとも影響が出るとの警戒感がある」としている。
東証1部33業種はゴム、海運、不動産、食料品、電気・ガス、化学、銀行、医薬品などが下落。金属製品、ガラス・土石製品、精密機器、非鉄金属は上昇。売買代金上位では東京電力やみずほフィナンシャルグループ、ブリヂストン、三井不動産、大東建託が安く、LIXILグループやHOYA、大阪チタニウムテクノロジーズは高い。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 長谷川敏郎 thasegawa6@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Sarah McDonald smcdonald23@bloomberg.net 院去信太郎
更新日時: 2015/06/03 09:24 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPC9J46KLVRA01.html


 

コラム:カネ余り第二幕、株価上昇の背景=熊野英生氏
2015年 06月 2日 20:53 JST
熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

[東京 2日] - 2万円を突破した日経平均株価が、目先どんどん株価が上昇していきそうだというストーリーを合理的に説明することは、エコノミストにはつらいところだ。

何しろ、最近の日本の経済指標は悪いものが目立つ。足元のファンダメンタルズだけでは説明しづらい。4月の消費支出が大きく減少し、生産統計も4―6月にかけて低調だ。5月上旬に発表された決算は良かったが、それは過去の業績拡大である。日本の景気は、「長い目でみて良くなっていく」と婉曲話法を用いて説明せざるを得ない。

そこで発想を逆転させて、「景気が足踏みするから余剰マネーが株価を押し上げている」と説明してみよう。すると、すっきりと説明できる。これは日本のみならず、米国や中国にも共通することだ。

金融緩和の効果が効いているから、先行きの強気予想に基づき、資産価格の上昇が後押しされるという説明である。株価上昇は、マネタリーな要因なのだ。

<アベノミクス当初の勢いに匹敵>

日経平均株価は、6月1日まで12営業日連続で上昇した(2日に記録は途絶えた)。時価総額は、東証一部だけで600兆円に達した。これは1―3月の名目国内総生産(GDP)の1.2倍に相当する。対名目GDP比の倍率がこれだけ上がったのは1989年12月以来である。

株価を押し上げる要因として注目されるのは、海外投資家の活発な取引である。2015年4月の東証一部の売買金額は79.7兆円まで増加した。委託売買の約7割が海外投資家だから、その影響力を抜きには語れない。

現在の株式市場における海外投資家の活発さは、アベノミクス当初の勢いに匹敵する。最近の売買金額は、アベノミクスに反応して株価が急上昇していた2013年5月のピーク時(83.2兆円)に接近している。

背景には、世界の株式時価総額の膨張に加えて、円安によって円ベースの投資額が膨らんでいることもある。円の価値は、名目実効為替レートでみて、2012年末のアベノミクス開始時に比べて購買力が24%低下し、海外通貨に比べて割安になっている。

世界のマネーの規模が膨張しているときは、マクロ的にみて割安になっている円資産が買いやすくなるという傾向が生じる。年内利上げの姿勢を改めて示した5月22日のイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長発言をきっかけに円安が加速し、その傾向に拍車をかけたと考えられる。

<中国の金融緩和も一因>

世界的な過剰流動性は、米利上げを控えて、実は拡大ペースを強めている可能性がある。日本では2014年10月に追加緩和が行われ、欧州でも2015年3月に量的緩和が実行に移された。国際取引所連盟(WFE)の統計では、世界の株式時価総額が2015年4月末で74兆ドルと、すでに2007年のピーク時(64兆ドル)を抜いて膨張している。

米国から海外に投資される株式売買の金額は、2015年4月までの1年間で9.2兆ドルと、ピーク時だった2008年の77%に達しているにすぎないが、ドル高の進行が、米国発の投資パワーを高めている可能性がある。

ドルの価値は、株式売買のピーク時より1.22倍も上昇しているので、たとえドルベースの金額が以前より小さくとも、外貨建ての株式投資へのインパクトは大きくなっているという見立てもできる。

世界の株式時価総額を引っ張っているのは、日本株の時価上昇と言いたいところだが、日本を尻目に、中国株式の膨張が著しい。上海総合指数は6月1日時点で対前年比2.37倍と急上昇している。

最近の上海総合指数には、やや危なっかしいところがあって、5月28日には前日比6.5%下落し、「すわ暴落か」と思わせた。だが、このときは、その翌々日の6月1日に前日比4.7%上昇と急反発して、水準を戻している。

中国の株価上昇を演出するのは、やはり金融緩和である。中国の株価上昇がテンポを速めたのは、2014年12月頃からのことである。ときを同じくして、中国人観光客が2月の春節以降も大挙して日本にツアーで訪れ、旺盛な買い物をしたことが話題になった。

中国人観光客の1人当たり旅行中支出額(2015年1―3月)は、25.3万円と全外国人旅行者の平均金額の1.77倍と突出している。いわゆる「爆買い」である。そのエネルギー源のひとつは、中国の株高なのかもしれない。

<カネ余り第二幕は短命か>

最後に、このカネ余りが一過性のものかどうかを考えたい。FRBの利上げが実行されれば、それは確実に金融引き締め効果を発揮するだろう。カネ余り第二幕の賞味期限は、金融引き締めの実施がずるずると間延びして、利上げが近そうで遠いという距離感が続く間であろう。筆者は、カネ余り第二幕はそれほど長期間続きそうにないとみている。

一番知りたいのは、これからのFRBの引き締め度合いである。資産価格に及ぶ影響は、米利上げ実行後の引き上げ幅と利上げペースによって変わる。現在は、それが見えない。FRBが景気拡大とバランスをとって慎重に進めるという楽観論も根強い。だから、まだカネ余りが逆回転して吸収されるプロセスには入っていないとも言えるのだろう。

米長期金利に注目すると、5月22日のイエレン発言以降、利上げ予想に反応して上昇するのではなく、むしろ若干低下気味である。米経済が本当に強くなっている確証が得られていないので、利上げの時間軸はまだそれほど前倒しされていないのだろう。

したがって、もしも6月上旬以降、強めの米経済指標の公表が相次げば、利上げ予想が地に足のついたものに変わり、米長期金利を上昇させることで、少しずつ資産価格にも抑制圧力が働いてくるだろう。

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here)
http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0OI15Z20150602

5月に売れを無視した賢明な判断-ローブ氏リターンS&Pの倍
2015/06/03 09:45 JST 

  (ブルームバーグ):資産家のダニエル・ローブ氏は「5月に売って逃げろ」という市場の格言を無視するつもりだと先月の初めの段階で述べていたが、賢明な判断だったことが証明された。
ローブ氏が率いるヘッジファンド運営会社サード・ポイントは5月がプラス1.9%、年初来ではプラス5.7%とS&P500種株価指数の上昇率のほぼ倍のリターンを達成した。
主に株式取引を行う他のファンドマネジャーの運用成績はもっと良かった。非公開情報であることを理由に関係者が匿名を条件に語ったところでは、ラリー・ロビンス氏のグレンビュー・キャピタル・マネジメントの主要ファンドはプラス6.2%、デービッド・アインホーン氏が創業したグリーンライト・キャピタルはプラス3.6%、マーク・キングドン氏のキングドン・キャピタル・マネジメントの株式ファンドはプラス4.7%の運用成績を残した。
企業の合併・買収(M&A)の増加やバイオ関連株、中国株の上昇がヘッジファンドの追い風となる一方、一部のファンドマネジャーはドル高と欧州ソブリン債の下落を見越した投資で利益を出し、ここ数年ベンチマークに後れを取っていたヘッジファンド業界の運用成績が押し上げられた。
ライオンゲート・キャピタル・マネジメントのリック・ティシュ共同最高投資責任者(CIO)は「5月は幾つかのストラテジーの限定されたファンドにとって好調な月となった」と指摘。運用成績が最も優秀だったヘッジファンドには、アジア株やヘルスケアとテクノロジー分野のM&Aに賭ける投資を行ったファンドが含まれると述べた。
原題:Loeb Wins by Ignoring ‘Sell in May’ as Hedge Fund Returns Jump(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Simone Foxman sfoxman4@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Anne Riley ariley17@bloomberg.net Pierre Paulden, Mary Romano
更新日時: 2015/06/03 09:45 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPCDZT6K50XX01.html


債券下落、欧米債安や30年入札控え売り先行−長期金利は一時今年最高
2015/06/03 10:23 JST 
  (ブルームバーグ):債券相場は下落。長期金利は今年の最高水準を付ける場面があった。前日の欧州債相場の大幅下落を受けて、米国債が続落したことへの警戒感から売りが先行した。あすに30年債入札を控えていることも重しとの見方も出ている。
3日の長期国債先物市場で中心限月の6月物 は、前日比29銭安の147円20銭で取引を開始した。直後に147円15銭と日中取引ベースで5月26日以来の安値を付けた。
現物債市場で長期金利 の指標となる新発10年物国債の339回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値より3.5ベーシスポイント(bp)高い0.47%で開始。3月10日、5月12日、同14日に付けた昨年11月以来の水準に並んだ。その後は0.46%に戻している。
SMBC日興証券の山田聡シニアクオンツアナリストは、30年債入札実施が重しである上、ドイツや米国など海外金利の上昇も重なり、朝方から売り圧力が強まっている印象と指摘。ただ、米10年債利回りは5月半ばの2.3%台に届かず、ドイツ10年債利回りも直近のピーク以下だとし、「日本の10年債利回りが0.47%を上抜ける場面があっても、ある程度は買い下がって良い水準。いずれは良い買い場だったとの認識になりそう」と話した。
2日の米国債相場は下落。10年国債利回りは前日比8bp上昇の2.26%となった。欧州債の大幅下落につられて売りが優勢となった。欧州各国がギリシャのデフォル ト(債務不履行)回避に向けて取り組む中、逃避需要が後退。ドイツ10年物国債利回り が0.7%台に急上昇したほか、欧州主要国の債券相場が軒並み下げた。
日本銀行はこの日午前の金融調節で、今月2回目となる長期国債買い入れオペ3本(総額1.175兆円)の実施を通知した。残存期間3年超5年以下の買い入れ額は、日銀が前週末に発表した当面の運営方針で示した通り、前回の3750億円から4000億円に増額となった。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 山中英典 h.y@bloomberg.net;東京 赤間信行 akam@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Garfield Reynolds greynolds1@bloomberg.net 山中英典, 青木 勝
更新日時: 2015/06/03 10:23 JST


コラム:原油価格65ドルは底値ではなく天井か
2015年 06月 2日 17:43 JST
Fiona Maharg-Bravo and Kevin Allison

[マドリード/シカゴ 1日 ロイターBREAKINGVIEWS] - 石油大手各社は原油相場に自信過剰になっている。原油価格は今年1月に付けた6年ぶり安値からは約40%反発し、足元も強含みで推移している。しかし、北海ブレント先物が1バレル当たり65ドル、WTI先物が同60ドルという現在の価格は、底値というよりは天井だろう。

多くの業界関係者は、そうは考えていないようだ。一部の石油サービス会社は年内に北海ブレントが70ドル半ばまで上昇するとみている。英石油大手BGグループ(BG.L)を700億ドルで買収する英蘭系メジャーのロイヤル・ダッチ・シェル(RDSa.L)は、石油価格が2018年までに90ドル前後まで回復すると想定している。また一部の人は、設備投資の大幅削減がシェールオイルを含む供給に影響を与え、再び原油相場を押し上げるとみている。

しかし、そうした見方はシェールオイルの潜在力を過小評価しているかもしれない。ゴールドマン・サックスの推計によれば、シェールオイルは採掘コストが下がり、採算ラインが60ドル程度にまで落ちている。シェールオイルは掘削に多大なエネルギーを消費するため、石油価格の低下もコスト削減につながる。

ゴールドマンは、米国のシェールオイル3大生産地域であるイーグルフォード、バッケン、パーミアンでは一段のコスト削減余地があるとみている。もしそれが実現した場合、シェールオイルの採算ラインは2020年までに50ドルに下がる可能性がある。

石油輸出国機構(OPEC)の中心的存在である低コスト産油国のサウジアラビアにとって、シェールオイルの弾力的生産は、市場シェア維持への決意をさらに強めさせるものだ。原油価格の上昇はアルゼンチンのバカムエルタ鉱区など、シェールオイルへの投資を促進させるだけだ。

ゴールドマンの楽観的なシナリオによれば、OPEC非加盟国の深海油田や液化天然ガスなど新たなプロジェクト抜きでも、OPECと米シェールオイルの追加生産だけで、2025年までは世界の石油需要の伸びを十分カバーできるという。また、調査会社IHSは、シェールの生産技術を従来の油田に応用すれば、世界で約1400億バレルの生産が新たに可能だと考えている。

原油安は新たな需要も刺激するが、それでも石油業界は何年も供給過剰に直面するとみられる。つまりそれは、価格に一段の下押し圧力がかかることを意味している。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0OI0RZ20150602


 株高持続に必要な日銀の新たなマンデート=木野内栄治氏
2015年 06月 1日 19:39 JST
木野内栄治 大和証券 チーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト

[東京 1日] - 1日の東京株式市場で日経平均株価は12営業日連続の上昇となった。12連騰は戦後の長い歴史の中でも同率3位となる珍しい現象で、1988年に13連騰して以来27年ぶりの出来事だ。

その道中では、NYダウが大幅安にもかかわらず、外資系証券の買いが継続する日もあり、外国人投資家による日本株購入の強い意欲が感じられた。

1980年以降での日経平均10連騰以上の場面を見ると、多くの場合は連騰最終時点とほぼ同じ水準で1カ月以内に再エントリー可能な「押し」を作っている。やはり、短期的には「押し目」形成の懸念が考えられよう。

しかし、その後はいずれも長期上昇が続いている。いくつかのケースで株高に遅れて景気の底入れ時期が到来することから、景気不安が払拭(ふっしょく)されることを市場が先行して評価していたと考えられる。

今回も足もとは世界的な景気不安が拭えないが、時間の経過とともに景気回復局面入りが鮮明となるのではないか。日経平均の長期連騰は、長期的な株価の上昇トレンド入りを確認するサインだと言えよう。

<相場は昨年8月に酷似、背景に黒田総裁発言>

実は昨年8月にも日経平均は1980年代以降で当時同率6位という珍しい9連騰を示現し、その後、ドル円レートが年初来のもち合いの上限を上放れていった。今回もドル円レートは年初来のもち合いを上放れた。つまり、昨年8月と今年5月の株式・為替の相場状況は大変類似していると言える。特にドル円レートのチャートはそっくりだ。

ドル円レートの上放れに関しては、昨年8月と今回ともに米金融政策の転換を前にしたドル高が作用した点は大きい。前回は量的緩和の段階的縮小(テーパリング)終了、今回は利上げ実施を見込んだ動きだ。

ただし、米金融政策の転換はここ2年程度継続しており、むしろ直近で米国の経済統計は好調とは言い難い。それにもかかわらず、ドル円レートが上放れたのは、両場面ともに黒田日銀総裁が中央銀行主催のフォーラムで一層の雇用改善を目指すとも受け止められる講演を行ったことや、それによる追加緩和期待が外国人投資家の間に生まれたことが大きな要因だと思う。

具体的には、まず昨年8月23日のカンザスシティー連銀主催シンポジウム(ジャクソンホール会議)で、黒田総裁は30%ものパート比率を図示しながら、「パート労働者という流動的な労働力の需要が増加する局面を超えて、固定的な労働力に対する需要が増加し始めたことは、企業の成長見通しが改善し始めたことを示唆している」「今後そうした期待を裏付けるべく経済成長が持続すれば、フルタイムの労働者の増加も本格化していくと期待される」と述べた。

イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は、日本の雇用市場には多くのスラック(弛み)があると感じたに違いない。そして当時、土曜日の黒田総裁発言を経た週明け月曜日から、ドル円レートは窓をあけてドル高・円安となった。

今回は5月23日の欧州中央銀行(ECB)主催フォーラムで「女性や高齢者の労働参加率を高めることが必要」と構造改革の重要性を指摘し、「日本銀行による異次元の金融緩和は、デフレマインドを払拭することによって、構造改革を後押しすることになると考えている」と黒田総裁が述べた後の、ドル円レートの上放れだった。

女性の活用や高齢者の雇用促進を前提とすると、一層の金融緩和余地が発生することになる。実は、日銀の公式見解は、完全雇用がほぼ達成されており、需給ギャップはかなりタイトであるとの立場だが、その日銀の公式見解を黒田総裁が修正する気持ちがあり、追加策もあり得るとECBフォーラムに参加した各国中銀関係者は感じたのではないか。

もし日銀以外であっても中銀関係者に「日銀の黒田総裁はやる気だと思う」と囁(ささや)かれたら海外の市場関係者は真に受けるに違いない。実際、昨年はその後追加緩和を実行したので今回も期待が高まったのではないかと思う。

<総裁発言と公式見解の矛盾解消が必要>

ただし、今回も日銀による追加緩和が行われるとは筆者は思わない。これまでの日銀による説明では、原油価格下落による物価下落要因は期間限定で、原油下落とともに実質報酬がプラスに好転することで、経済活動や物価にはプラスの効果が期待できる。

もっとも、今回、「女性や高齢者の労働参加率を高める」構造改革を異次元の金融緩和が「後押しする」と、金融政策の雇用改善効果を押し出しておきながら追加緩和がないとなると、昨年との比較において市場とのコミュニケーションに問題を発生させ、今後の黒田総裁によるコメントの市場や経済に働きかける力を弱めることになりかねない。

実際、現在の日銀の公式見解は「GDPギャップと潜在成長率の新推計」(2006年5月日銀レビュー)によれば、「65歳以上の労働力率は、男女とも低下傾向が近年はっきりしているだけでなく、もともと絶対水準が非常に低い。このため、高齢化の進行それ自体が、全体の労働力率に構造的な低下要因として作用している」とされる。こうした労働参加率の構造を改革することを後押しすると総裁自ら言っているのに、需給ギャップがタイトで完全雇用がほぼ達成されているとの見方は矛盾しているだろう。

不協和音とも言える発言は、他の日銀幹部からひっきりなしに聞こえてくる。そもそも、現在の「GDPギャップと潜在成長率の新推計」は量的緩和の解除を行ったときの理由付けだった。この需給ギャップなどの推計方式の変更を公式に打ち出すことが、日銀と市場とのコミュニケーションに齟齬(そご)をきたさない方策だと筆者は思う。

ちなみに、現在の推計方式では、パート比率の上昇は「基本的には、グローバル化のもとでの企業行動の変化、労働者側のライフスタイルの多様化、規制緩和の影響、などを背景にした構造的な動き」と捉えられているが、実際は人件費削減策の一環という側面が強かったと思う。就職氷河期に非正規労働に甘んじざるを得なかった多くの方から見れば納得がいかない前提だろう。

<雇用目標導入なら潜在成長率向上で株高へ>

さて、日経平均株価は直近12連騰となったが、日銀が一層の雇用改善を目指し金融緩和余地が大きくなることだけが、歴史的な値動きの背景ではないと思う。女性や高齢者の雇用促進、パート比率の縮小を目指し、現状よりもより多くの雇用を促すとなると、一時的には潜在供給能力が上昇し潜在成長率の向上につながりやすい。そして、成長率が高まれば株式バリュエーションの向上を通じて株高になるのは当然だ。

もちろん、女性や高齢者の労働参加率の上昇には限界があるので、潜在成長率の改善は一時的であるが、その間は景気が良いので資本投下が起こりやすい。そうした設備投資や研究開発投資の増加は、生産性の向上やイノベーションの促進につながりやすい。

ひいては人口減少問題にもプラスに働くと見ている。女性の労働力率と出生率を、経済協力開発機構(OECD)各国の1970年代以降でプロットすると、女性の労働力率が上昇すると当初は出生率が減少するが、5割を超えたあたりから出生率は改善する傾向がある。日本の女性の労働力率は現在6割程度なので、一段の女性の労働参加を促すうえでは働きやすい環境整備が不可欠で、結果、出生率の改善が起こると期待できる局面だ。

こうして見ると、雇用最大化を目指す金融政策は、日本の潜在成長率の向上を後押しできると考えられる。当然、歴史的な株価連騰に現れるような極めて本質的な政策と言える。筆者は最終的には日銀のマンデート(委任された権限)に雇用最大化を加えることが、国民経済の健全な発展や国民の幸福に資すると考えている。

前回の当コラム(here)で指摘したように、米FRBが物価安定に加えて雇用最大化のマンデートを課されることに至った経験を日本も活かすべきだと考えている。

*木野内栄治氏は、大和証券投資戦略部のチーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト。1988年に大和証券に入社。大和総研などを経て現職。各種アナリストランキングにおいて、2004年から11年連続となる直近まで、市場分析部門などで第1位を獲得。平成24年度高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。現在、景気循環学会の理事も務める。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here)
http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0OH1TQ20150601
 

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