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都心一等地の無料ショールームがヤバすぎる!来場者殺到!大日本印刷の“壮大な”狙い
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150603-00010005-bjournal-bus_all
Business Journal 6月3日(水)6時2分配信
2013年、かつて食品スーパーがあった東京・市ヶ谷の外堀通り沿いに1つの施設が誕生した。「コミュニケーションプラザ ドットDNP」という体験型ショールームだ。
入場無料のこの施設を運営するのは大日本印刷(DNP)。近くに本社や多くの関連施設を構える世界最大級の総合印刷会社である。ビジネス現場のIT化が進み、新聞や雑誌・書籍の発行部数も厳しい状況が続くが、同社の連結売上高1兆4621億1800万円(15年3月期)のうち、約96%が印刷事業だ。
そんな業界最大手の「印刷屋さん」が、体験型ショールームを運営する狙いはどこにあるのか。これを分析するために、まずは施設の中身を紹介しつつ考えてみたい。
●暮らしを支える事業の「見せる化」
ドットDNPは「本と写真の未来を体験しよう。」がコンセプトで、DNP市谷田町ビルの1〜2階と地下1階フロアで展開する。
地下は、幼い子連れ客を意識した構成で、授乳室やベビーカー置き場、ロッカーも備わっている。例えば「Enjoy! フォトパーク」と呼ぶコーナーでは、写真について訴求しており、「撮る、作る、飾る、思い出を残す」がコンセプトだ。体験型撮影機はプリクラに似ており、シールではないが画面デザインを選び撮影したものが1枚の写真となって出てくる。
「デジタルえほんミュージアム」では、国内外のデジタル絵本を揃えて、子どもが操作しながら、画面の音や動きを楽しむことができる。平日午後の筆者の取材時も、就学前の幼児が遊んでいた。作家やクリエイターの企画展も開催しており、子ども目線で伝えている。
1階には同社“広報担当”の「DNPenguin(ディーエヌペンギン)」というキャラクターが案内する「DNPenguinハウス」を設置。このペンギンがDNPを毎日勉強しているという設定で、勉強の成果として同社の事業を紹介する。今や生活必需品となったICカードは1983年に同社が開発したそうだ。ペンギンは動画共有サイト「YouTube」でも発信しており、そこでは日本で作られているペットボトルの約3分の1は、同社が開発した無菌充填システムで作られるといった情報が得られる。
「hontoカフェ」もある。ランチも提供しており、来館者は通常のカフェのように利用できる。テーブルには端末が置いてあり、同社が運営する電子書籍ストア「honto」の電子書籍も試せるようになっている。
そして2階はイベントゾーンとして、未来をつくるイベントや展示会、ワークショップなどの体験型コンテンツを提供している。これはよく見かけるセミナールームの機能だ。
●これまで欠けていた「生活者目線」を学ぶ場
「当社は1876年に『秀英舎』という名で創業し来年で140年ですが、その歴史のほとんどを出版印刷や商業印刷などの受注型で過ごしてきました。BtoB(企業対企業)ビジネスで、一般消費者を意識しないでもやってこられたのです」
こう話すのは、同館館長の中島良彦氏だ。かつて同社マーケティング情報開発室長を務め、日本マーケティング協会の活動も長い中島氏は、「当社で最もマーケティングに精通する人材」(同社役員)だという。
もともとDNPは「こんな体裁にしたいが、どうすればよいか」といったお客の要望に対して提案し、その品質が認められて受注を増やしてきた歴史がある。例えば、1956年から「週刊新潮」(新潮社)の印刷を手がけて、その後の出版社系雑誌の発行を支えたり、食品ではキャラメルやインスタントラーメンの個別印刷・包装を開発した。受注産業であり黒子役だったのだ。
だが、常態化した出版不況など外部環境が悪化する中、それまでの「待ちの姿勢」では事業拡大が見込めなくなった。そこで近年、同社が行ったのが「自ら踏み出す」能動的な姿勢だ。経営では、国内外の企業をM&A(合併や買収)するなど、事業の多角化も進める。電子書籍ストアの運営もその一環だ。
前述した総売上高の96%を占める印刷事業も、紙媒体・電子媒体などの情報コミュニケーション部門、パッケージ印刷などの生活・産業部門、ディスプレイ開発などのエレクトロニクス部門の3本柱で展開する。だが、その中身は一般には知られていない。
だからこその「見せる化」なのだろう。ペンギンのキャラクター開発にも携わった中島氏は、こう説明する。
「まずは垣根を低くして、当社を知っていただきたいのです。認知度は高まってきました。5月23日には来館者は700人を超え、体験コーナーでは整理券を発行してお待ちいただく状況でした。SNSの情報で知り、ものづくり工房の体験を希望される方の中には、遠くからキャリーバッグを引いて来られる方もいます」
●会社が「進む方向性」の象徴でもある
もともと大日本印刷が長年の歴史で培ってきたのは、印刷技術と事業活動の中で収集してきた情報だ。それを21世紀が始まった年に、事業ビジョンとして「P&Iソリューション」として掲げた。「P」はPrinting Technology(印刷技術)、「I」はInformation Technology(情報技術)の頭文字だ。事業で培った技術や知見を生かし、顧客や社会の課題を見つけて解決したいという思いを込めたという。
12年からは「未来のあたりまえを作る。」を経営スローガンに掲げた。週刊誌の体裁やICカードの開発など、過去に提案したものは「現在の当たり前」になったが、それをより一層進めることで、社員が受け身の姿勢から能動的な姿勢に変わることも目指す。
東京都内の一等地で無料の体験型施設を運営することへの、社内からの疑問や批判の声もあっただろう。だが、行う意義はありそうだ。中島氏はこう続ける。
「ドットDNPを運営することで、生活者の本音の情報が直接入ってくるようになりました。社内に向けては『会社はこの方向に進む』という意思表示にもなっています」
そんな同社が掲げる行動指針の中心を成すのは「対話」だ。当たり前に思われるかもしれないが、待ちの姿勢から能動型に舵を切ったからこそ、この言葉をかみしめる必要がある。
入場無料のドットDNPだが、総合受付で氏名などを記入して入館手続きをしなければならない。カフェだけを利用したい人から、不便だという声があるのも事実だ。このカフェも自分たちで運営しているといい、未経験だった運営に戸惑いながら、改善して使い勝手を高めていく。来館者からの要望や苦情も、新たな「情報」となるのだろう。
高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
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