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激変する社会:男性受難の時代
2015.6.2(火) The Economist
(英エコノミスト誌 2015年5月30日号)
先進国で男性の肉体労働者が苦境に立たされている。彼らは適応することを覚えなければならない。
先進国は男性受難の時代を迎えている© Can Stock Photo Inc. / hikrcn
一見すると、家父長制度は繁栄しているように見える。世界の大統領や首相の90%以上は男性だし、ほぼすべての大企業のトップも男性だ。男性は金融、テクノロジー、映画、スポーツ、音楽、さらにはお笑いでも優位に立っている。
男性は世界の多くの地域で、Y染色体を持つというだけの理由で、今なお社会的、法的特権を享受している。
だから、男性の苦境を心配するのは、奇妙なことに思えるかもしれない。
だが、懸念の根拠はたくさんある。男性は最上位層だけでなく、底辺にも固まって存在する。男性は女性に比べて、投獄されたり、子供から引き離されたり、自殺したりする人がはるかに多い。
大学の学位を取得する人は女性より少ない。先進国の男子は、基礎数学、読解、科学で完全に落第となる率が、女子に比べて50%高い。
低学歴男性の苦悩
とりわけ、あるグループは厳しい苦境に立たされている。先進国の学歴の低い男性は、過去半世紀の間に労働市場や家庭で生じた大きな変化への対応に苦労してきた。技術と貿易により肉体労働の価値が下がったことで、学歴の低い男性は職場での役割を見つけにくくなっている。
それに対して、女性は男性よりも優れたスキルを活かし、医療や教育といった成長分野に次々と進出している。教育の重要性が高まる中、男子は学校でも女子に後れを取るようになった(最上位層は除く)。
製造分野で職を失った男性は、多くの場合、二度と仕事に就けない。そして、無職の男性は、恒久的な伴侶を見つけにくい。その結果、スキルの低い男性は、仕事も、家族も、将来の展望も持てないという、不快きわまりない状況に陥ってしまう。
核家族から核分裂家族へ
政治的に左派の立場を取る人たちは、経済的要因に注目する傾向がある。彼らに言わせれば、男性の雇用機会の減少が、貧困を定着させ、家族を壊している。米国では、高卒の男性の実質賃金は、1979年から2013年までの間に21%減少した。一方、高卒の女性の賃金は3%上昇した。米国では、生産年齢の高卒男性のおよそ5分の1が職にあぶれている。
右派の立場を取る人たちは、家族の崩壊を懸念している。
女性の大多数は、経済的にも家庭内でも力になってくれるパートナーを持つことを好む。なまけ者とチームを組むくらいなら、独りで生きていくことを選ぶだろう。
ところが、パートナーとして選べるのは、そうしたなまけ者ばかりなのかもしれない。米国では、無職の男性が家事や家族の世話に費やす時間は、同様の状況に置かれている女性の半分にすぎず、テレビを見ている時間はずっと長い。
こうした状況が、労働者階級の家族の崩壊につながっている。エリート層ではいまでも両親のいる家庭が標準的だが、貧困層ではそうした家庭が姿を消しつつある。先進国では、婚外子の割合が1980年から3倍に増加し、33%に達している。従来型の製造業が衰退した一部の地域では、その割合は70%を超える。
破綻した家庭で育った子供たちは、両親のいる家庭の子供に比べて学歴が低く、ドロップアウトする率も高い。その後の収入も少なくなる。さらに、自身も安定した家庭を築くのに苦労しがちだ。
男らしさを捨てなくても看護師や美容師になれる
こうした右派と左派の主張は噛みあわないことも多い。だが、この2つの説明は、互いに矛盾するものではない。経済にも社会の変化にも責任があり、両方の原因が互いに助長し合っているからだ。
さらに、これらの問題は、いっそう悪化する可能性がある。技術の進歩は今後もさらに多くの産業を破壊的に変革し、社会に利益をもたらす一方で、スキルを磨けなかった労働者を余剰人員に変えるだろう。
シンクタンクの経済協力開発機構(OECD)の予測によれば、ひとり親家庭の絶対数は、今後もほぼすべての先進国で増え続けるという。父親のいない家庭で育つ男の子は、そうでない場合に比べて、永続的な人間関係を築くのに苦労するケースが多い。こうして、男性の機能不全の連鎖が生じる。
こうした問題に対して、何ができるのだろうか? 解決策の一端は、文化的姿勢の変化にある。
過去数十年で、中間層の男性は、子育てに参加する必要性を学び、自分たちの行動を変えてきた。労働者階級の男性も、それに追いつく必要がある。女性は、女らしさを捨てなくても外科医や物理学者になれることを学んだ。
男性も、従来の肉体労働がもう戻ってこないことを受け入れ、男らしさを捨てなくても看護師や美容師になれるのだと理解しなくてはならない。
政策立案者も力を貸すべきだ。というのも、愚かな法律がこの問題を悪化させているからだ。
米国は、非暴力的な犯罪を犯した若い男性を大量に刑務所に閉じこめ、出所後の就職を難しくすることで(例えばジョージア州では、重罪を犯した者は、豚の餌やり、消火活動、葬儀場での仕事をするのを禁じられている)、結婚に適した男性の頭数を減らしている。
多くの先進国は、結婚や同棲をした際に給付金を打ち切ることで、貧困者が家庭を作るのを妨げている。
教育制度や職業訓練の見直し
ネットサーフィンの傾向でうつ予備軍が分かるか?米研究
男子は学校でも女子に後れを取るようになった〔AFPBB News〕
愚かな法律の廃止よりもさらに重要なのが、教育制度の見直しだ。現在の教育制度は、ほとんどの男性が肉体労働をしていた時代に作られたものだ。
政治家は、男子の学力不足が深刻な問題であることを認識し、その解消にとりかからなければならない。
誰のためにもなる賢明な政策の中には、特に男の子に大きな恩恵をもたらすものがある。幼児教育は、男の子に社会的認識を与え、言語能力や社交スキルを発達させる機会となる。
職業訓練制度が成功しているドイツなどの国は、学業の意欲が低い男子生徒のモチベーションを高め、就職に導くという点で、アングロサクソン諸国よりも効果を上げている。とはいえ政治家には、訓練生が工場よりも病院で職を得る可能性が高い時代に合わせて職業訓練制度を改革することが求められる。
より一般的には、学校をもっと男の子にとって過ごしやすい場所にする必要があるだろう。
男の子は女の子に比べて、走り回るのを好むものだと認識すべきだ。
リタリン(注意欠陥多動性障害=ADHD=の治療に用いられる向精神薬)を処方したり、落ち着きのなさを叱ったりするよりも、組織化されたスポーツやエネルギーを使うゲームをたくさんさせる方がいい。
男性のロールモデルをもっと提示する必要もある。小学校で雇用する男性教員の数を増やせば、心を通わせられる大人の男性を男の子の身近に置くと同時に、男性が消防士だけでなく教師にもなれるのだと教えることができるはずだ。
男女平等の拡大は、戦後の時代のとりわけ大きな成果の1つだ。性別に関係なく自分の大望を実現できる可能性は、これまでになく大きくなっている。だが、男性の中には、そうした新しい世界にうまく適応できていない人もいる。今こそ、彼らに手を貸すべき時だ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43923
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