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『ブラックバイト』(大内裕和、今野晴貴/堀之内出版)
なぜ彼らは辞められない? 若者を使い潰す「ブラックバイト」の実態
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150601-00006780-davinci-ent
ダ・ヴィンチニュース 6月1日(月)11時30分配信
●貧困層の学生を狙う「ブラックバイト」とは!?
「ブラック企業」とは労働法を無視したり、法を悪用するなどして、従業員に長時間労働などを強いる企業のことである。そして近年では、その仕組みがアルバイトにまで波及してきた。本来ならアルバイトが負う必要のない責任を押し付け、シフト外の労働を呼び出しなどで強要する──これがいわゆる「ブラックバイト」である。
こういうとき、普通は「バイトがイヤなら辞めればいいのでは?」と思うことだろう。しかし実際には、そう簡単な問題ではないのである。『ブラックバイト』(大内裕和、今野晴貴/堀之内出版)では、そのあたりの事情が詳しく述べられている。
まず本書で語られているのは、深刻な学生アルバイトの現状である。特に家庭があまり裕福でなく、学費をバイトで賄わないと勉学が続けられない勤労学生が、ブラックバイトの被害に遭いやすい。つまりバイト代の確保が必要不可欠であるがゆえに、そう簡単に辞めることができず、不当な要求にも耐えてしまうのだ。
ではその不当な要求とは何かといえば、最初に来るのが「職場への過剰な組み込み」である。まずバイトは「週に3日」というように、バイトに入るシフトを決める。しかしブラックバイトでは、本人の意思に反したシフトを入れられたり、シフトの入っていない日であっても、緊急の呼び出しが頻繁に行なわれるのだという。結果として学業に支障の出る学生たちも数多く、これでは本末転倒だ。
さらに問題なのが「低賃金」だ。仮にバイトの募集要項に「950円」とあったとしても、研修期間などを理由に、自治体の最低賃金が700円ならば大体740円くらいからスタートする。バイトリーダーになるなど責任のある仕事をこなせば多少は上がるが、それでも800円程度なのだという。その上、接客から商品管理まで仕事はバイトの範疇を超え、多岐に渡って割り当てられる。責任は重くなっても賃金は上がらないという、極めて劣悪な環境なのである。
ここまで来れば、さすがに学生たちも不満を抱くだろう。しかしそれでも仕事を辞めないのはなぜか。それは「職場の論理に従属させる人格的支配」が行なわれているからだと本書は説く。つまりパワハラや暴力、契約書による支配、損害賠償などの金銭請求といったことで、バイト学生たちを縛り付けているというのだ。このような手口で、ブラックバイトは若者を使い潰していくのである。
そもそも学生がバイトをしなければならなくなったのは、バブル経済破綻以降に進行した「家庭の貧困」が理由にある。親の稼ぎだけでは大学へ進学できなくなったため、その一部、ないしは全部を学生自身が負担しなければならなくなったのだ。本来ならそういう学生のためにあるのが「奨学金制度」なのだが、実は日本のそれは海外と違って、返還しなくてはならない。しかも有利子の奨学金も多いため将来的な学生の負担は減らず、その返済も見越してますますブラックバイトから抜け出せなくなっていく。これは日本の制度的な問題であり、そういう意味では国家がブラックバイトを助長していると本書は指摘している。
●ひとりで悩まず、相談を!
結局、これは日本の社会制度も含めての問題であり、学生は極めて深刻な立場に置かれているといえる。しかしブラックバイトに従事している学生に強く言っておきたいのは、その状況を甘んじて受け入れる必要はまったくないということだ。基本的に、いかに契約があろうと、合意がなかったり労働者に著しく不利だったりするものは無効となる。抜け出せないような状況に思えても、解決する方法は必ずあるのだ。本書でもその解決策を教えてくれている。簡単にいうと企業を取り締まらせるために「労働基準監督署」へ告発することや、会社に約束を守らせるため裁判や労働審判に訴えること、そして労働組合を使って会社にさまざまな要求をしていくというものだ。
これらの解決策にいえることは、いずれも誰かの協力を得ているということ。役所や弁護士などに、まずは相談してみることが解決の第一歩だ。役所に頼みづらいなら、NPO法人がある。本書の著者のひとり、今野晴貴氏が代表を務めるNPO法人「POSSE」や、そのスタッフが作った「ブラックバイトユニオン」など、話を聞き手助けをしてくれる団体は数多いし、それこそ親兄弟でも構わないのだ。ブラックバイトに悩む人は、とにかくひとりで抱え込まずに誰かに話していただきたい。複数の力が集まれば良い知恵が浮かぶかもしれないし、何より仲間がいれば心強い。そうやって声を上げていけば、いずれ状況を変えるための大きな力になってくるはずだ。多くの人がこの事実を認識し、一刻も早く「ブラックバイト問題」が解決することを願って止まない。
文=木谷誠(Office Ti+)
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