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小宮一慶の「スイスイわかる経済!“数字力”トレーニング」
日経平均2万円台回復 バブルなのか?実力なのか?
• 2015.05.29コメント(3件)
日経平均が、2万円台を回復しています(5月28日現在)。円安が進んだこと、5月半ばに出そろった企業の2015年3月期決算が好調だったことなどが好感され、買い注文が優勢となっているのです。
ここで重要なのは、今回の株高はバブルなのか、あるいは経済の実力に裏打ちされたものなのか、という点です。確かに企業業績は比較的順調です。しかし、私はバブルの懸念もあると考えています。今回は、その点を見極めるために注目したい景気指標をピックアップしていきます。
日経平均が2万円台に GDPも堅調に推移している
20日、1-3月期の国内総生産(GDP)が発表されました。実額を示す名目GDPは前四半期比7.7%(年率換算)、物価変動の影響を除いた実質では同比2.4%となり、事前予想を上回る結果となりました。
内訳を見てみましょう。
GDPの55%強を支える個人消費を見ますと、実質では前四半期比0.4%増となっており、3四半期連続のプラスです。消費増税の反動減から回復しつつある様子が窺えます。
最も伸びているのは住宅投資で、実質で1.8%増となっています。住宅は、消費増税の影響から、2014年1-3月期以降、減少が続いていましたが、ようやく底を打ってプラスに転じました。
今回、実質GDPへの寄与度が大きかったのは在庫です。卸売業や小売業が「そろそろ消費が回復してくるのではないか」との見通しを立てたことで、在庫を増やしたのです。(ただし、売上高が予想通りに伸びていないので在庫が増えたとの見方もあります。)
このようにGDPを見る限り、国内経済は、徐々に拡大してきていると言えるのではないでしょうか。
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株価が実力を伴っているかを見極める必要がある
GDPだけでなく、企業業績も順調に回復してきています。5月中旬に出そろった上場企業の2015年3月期決算を見ると、特に製造業が好調となっています。冒頭でも触れましたが、こうした流れを受けて、日経平均株価は2万円台を回復しています。
ただし、この株高が実力を伴ったものなのかどうかは、慎重な見極めが必要です。ご存じのように、日銀は異次元緩和を続け、1年で80兆円もの資金を供給しており、市中にじゃぶじゃぶにお金をつけています。さらに、日銀は資金供給だけでなくGPIFとともに日本株を買っていますから、株価が下支えされている状況なのです。今、「官制相場」と言われている所以は、ここにあります。
以前、バフェット指数の話をしました。世界一の投資家であるウォーレン・バフェット氏が重視している指標で、株式の時価総額(株価×株数)を、実体経済の規模を表す名目GDPで割ったものです。バフェット氏は、これが1倍を超えるとバブルの懸念があると判断しています。
日本の場合、現在のバフェット指数は1.2倍程度まで上昇していますから、この基準で考えますと、バブル気味だと言えます。今の株価は、実力以上のものであるとの見方もできるのです。また、企業業績は好調だと述べましたが、海外で稼いでいる部分も少なくありません。
このように、今の株高が日本の実体経済に裏打ちされたものなのかという点は、十分に考えなければなりません。
では、肝心の実体経済はどうなっているのでしょうか。注目したいのは、製造業の生産状況を示す「鉱工業指数 生産指数」です。
この推移を見ますと、1月は102.1まで伸びていましたが、そこからじりじりと減少が続き、3月は98.1まで落ち込んでいます。悪い数字ではありませんが、それほどいいという状況ではありません。生産指数でみる限りは、なかなか天井を突き破れないという状況が続いています。
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中国人観光客の「爆買い」に支えられる
続いて、消費に関する指標を見ていきましょう。
「消費支出2人以上世帯」を見てください。昨年4月以降、ずっとマイナスが続いています。特に3月は前年比マイナス10.6と大幅な減少となっています。
これは、一年前の3月に消費税増税前の駆け込み需要が発生したことで、前年比で見た場合、その反動が出ているのです。ちなみに、昨年3月は同比7.2まで大きく伸びました。
不要不急の高級品の売り上げを示すと言われている「全国百貨店売上高」も、低迷が続いています。やはりこちらも、3月は前年同月の消費増税前の駆け込み需要の反動で前年比マイナス19.7まで落ち込んでいますね。昨年の同月は、駆け込み需要によって同比25.4まで伸びていましたから、当然の結果です。
ちなみに、2月だけ同比1.1と若干プラスに転じていますが、これは中国人観光客の「爆買い」の影響です。2月の春節の時期に、たくさんの中国人観光客が日本を訪れました。昨年2月は消費税増税前の駆け込み需要が発生していたにもかかわらず、それを今年は超えているというのは、爆買いのすさまじさを物語っています。
外国人の日本での消費は、年間2兆円強と言われています。そのうち5千億円強が中国人によるもので、さらにそのかなりの部分が2月の春節の時期に日本を訪れて消費していきますから、この月はどっと増えているのです。
次ページ:新設住宅着工は徐々に回復している
新設住宅着工は徐々に回復している
続いて、耐久消費財の推移を見てみましょう。
「新車販売台数」は、4月の数字が発表されており、31.9万台となっています。前年同月比ではマイナス7.5%です。国内での自動車販売は、今のところまだ消費増税の反動減を乗り越えられていないと言えます。
「新設住宅着工」は、どうでしょうか。年度で見た場合、2013年度は98.7万戸だったのが、2014年度は88.0万戸まで落ち込んでいます。ただし、月の数字を見ますと、徐々に回復してきている様子が窺えます。
以上のことから、消費全般を見ますと、消費増税以降、低迷が続いてきたと言えます。今のところ、十分に強いとは言い切れない状況ですが、私は4月以降は少し改善していくものと思っています。
次ページ:「消費者物価指数」と「現金給与総額」に注目
「消費者物価指数」と「現金給与総額」に注目
これからの日本経済を見極める上で、特に注目したいのは、「実質所得がプラスに転じるか」という点です。「消費者物価指数」と「現金給与総額」を見てください。
3月の「消費者物価指数」は、前年比2.2%。このうち2%が消費増税分ですから、実質的に0.2%の上昇ということになります。4月以降は、前年比で見た場合には消費税上げの分が消えるので、おそらく0.2%前後で推移するものと考えられます。
これは、前年に比べての原油価格の下落の影響が依然として大きいこともあります。企業間の物価を示す「国内企業物価指数」を見ますと、消費増税の影響があるにも関わらず、ほとんど上昇していません。物価は、原油価格の動きも合わせてみることが大切です。
一方、「現金給与総額」を見ますと、3月は0.0%となっています。今までのところ、消費者物価上昇分を加味した実質賃金は減り続けていると言えます。
しかし、4月以降、企業の賃上げによってここが伸びてくれば、久しぶりに実質所得がプラスに転じる可能性があります。先ほども述べたように、物価上昇率の消費税上げ分がなくなり、物価上昇率が抑えられるからです。
ただし、一部の企業では、賃上げは6月に行われます。4月から6月にかけて給与がどれだけ上がるのか。また、7月に賞与を含めた給与がどれだけ上がるのか。この伸び幅が、消費者物価上昇分をどれだけ上回るのか、という点を見極めることが大切ですが、いずれにしても実質所得のマイナス分が昨年度に比べて小さくなることは間違いありません。
次ページ:輸出自体は好調に推移
輸出自体は好調に推移
もう一つの注目点は、「貿易・通関」です。
3月は、2年9カ月ぶりに貿易黒字となりました。円安によって輸出額が増えただけでなく、輸出全体の数量指数も前年同月比3.3%増となっています。輸出自体が好調なのです。
その上で、輸入額が、原油価格の下落などによって減少し、貿易収支が改善しました。4月は輸出が減少したことで貿易赤字に転じてしまいましたが、5月以降、再び貿易黒字となっていくのかに注目です。
こうして主要な指標を総合してみますと、今のところ、鉱工業指数などを見る限り、それほど景気は強くはありませんが、それでも少し回復基調にあると感じます。しかし、この景気拡大がどこまで続くのかということは、ギリシャ情勢や中国経済の減速などもあり、不安も小さくありません。
次ページ:2年後の消費増税をどう乗り越えるのか
2年後の消費増税をどう乗り越えるのか
いずれにしても注意しなければならないのは、2年後の2017年4月には2度目の消費増税が控えているということです。これは、国際公約に近い形になっていますから、高い確率で実施されるでしょう。
これをどのように乗り越えていくのか。乗り越えるための経済の足腰をそれまでに十分に強められるのかどうか。これらの点が、日本経済にとって非常に重要な課題となります。
また、日本経済は、米国や中国の経済の影響を受けます。ところが、世界の中で唯一好調と言われる米国経済は、十分には堅調ではないとの見方もありますから、日本経済もその煽りを受ける可能性もあります。
確かに株価は上昇していますが、手放しで喜べない状況ではないかと私は考えています。今後、米国で少し悪い指標が出ると、日米共に株価の調整が起こる可能性がありますから、そちらも併せて注意が必要です。
(構成=森脇早絵)
小宮 一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント。小宮コンサルタンツ代表。十数社の非常勤取締役や監査役も務める。1957年、大阪府堺市生まれ。81年京都大学法学部卒業。東京銀行に入行。84年から2年間、米国ダートマス大学エイモスタック経営大学院に留学。MBA取得。主な著書に、『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』(以上、ディスカバー21)、『日経新聞の「本当の読み方」がわかる本』、『日経新聞の数字がわかる本』(日経BP社)他多数。最新刊『ハニカム式 日経新聞1週間ワークブック』(日経BP社)――絶賛発売中!
小宮コンサルタンツ facebookページ:http://www.facebook.com/komiyaconsultants
皆様からお寄せいただいたご意見(3件)
1. 日本株がバブルかどうかの考察は余り意味が無いでしょう。
なぜなら、2008-09年に日経平均が18000円のピークから10000円以下に落ちたのは、日本株のバブルがはじけたからではなく、リーマンショックで世界景気が減速して、それに伴い企業業績が悪化した結果だからです。
つまり、現在の水準がバブルかどうかより今後の世界の景気動向を考察した方が有益と考えます。
まあ、株価の水準もドル円の水準もリーマンショック前のピーク付近かそれ以上に居るので、バブルかどうかに関係なく、新規に買ってもキャピタルゲインの期待値は低く、キャピタルロスの期待値が高い状態という印象は受けますが。(エンジニア) (2015年05月29日 12:37)
2. どうみても作り出されたバブルでしょう。景気回復の実感も売上も全くありません。株価だけが上がっている印象です。アベノミクスとやらで税金をじゃぶじゃぶ無駄に投入した影響でしょう。それで投入した以上に儲かれば成功ですが税金を投入した以上の効果はなさそうです。つまり壮大な無駄遣いをしているだけ。借金してお金持ちになったと言うのと同じ状況と考えます。いずれメッキが剥がれて暴落するでしょう。なんせ実態は回復しての好景気では無いのだから。(やれやれ) (2015年05月29日 10:35)
1. 金融緩和をしても、NISAを一所懸命PRしても一般投資家による株式投資はのびないので、GPIFによる株式購入を拡大させて尚且つ日銀も株を購入するという図式です。国中央銀行が株を買うのは聞いたことがないです。共通しているのは、原因と結果を逆の流れから改善させようという点ですね。つまり、デフレだから不況になるので、インフレを政策的に起こそうというのと同じ、株さえ値上がりすれば景気が上向くとか・・・今の日本の株価はマネーゲームと読むのが正解です。GPIF+日銀 vs 海外機関投資家+ヘッジファンドの戦いとも言えます。結局誰がババを引くかと言う、昔の土地バブル崩壊と同じ道です。勝者と敗者は最初から決まっているようなもんです。真面目に一喜一憂する意味はないのじゃないですか?でも、又、日本の資産・税金が無駄に闇に消えるのはつらいです。(ター坊) (2015年05月29日 09:31)
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