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お酒の安売り規制 規制緩和の流れに逆行しないか
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150531-00000502-biz_san-nb
SankeiBiz 2015/5/31 15:30
自民党などが、ディスカウント店や量販店による酒の激安販売を禁止する議員立法の準備を進めている。「公正な取引基準」を定め、原価を下回る度を超した安売りを禁じる内容で、違反した小売り事業者には販売免許を取り消すなどの処分を科す。ただ、規制緩和の流れに逆行し、消費者の利益にもならないとの異論もある。小売りをめぐる規制のあり方について、全国小売酒販組合中央会政策部長の水口尚人氏と中央大学法科大学院教授の森信茂樹氏に聞いた。(万福博之)
■最低限のルールは必要だ 全国小売酒販組合中央会政策部長 水口尚人氏
−−酒税法などの改正案に対する見解は
「『消費者を守るのか、酒販店を守るのか』という論点で報道されているのは、昨年国会に請願したわれわれの真意ではない。説明不足だったと思っている。現実問題として、疑わしい取引が横行し、酒が乱暴な形で扱われるのは一般消費者にとっても利益にならない。最低限のルールは設けるべきだ。消費者が安く買う機会がなくなるかといえば、まったくの誤解だ」
−−一般酒販店に対する利益誘導ではないのか
「例えばこの法案が通ることで、大手の量販店と中小・零細の酒販店が土俵が同じになるのか、価格が近くなるのか。大量に仕入れれば、原価が安くなるのは当たり前だ。大型店はその土俵で戦えばいいし、地域に密着した中小の酒販店は、地域の人間とのつながりを生かして販売すればいい。酒販店は、地域を支え、文化を育んできたという自負がある。もちろん、公正な取引は必要だ」
−−スーパーなどでは、他の商品でも激安販売がある。なぜ、酒だけを特別扱いする必要があるのか
「この10年間、ほかの商品と比べて酒は圧倒的な過当競争にある。公正取引委員会が不当廉売として注意喚起した商品のうち、平成25年度は酒が6割超を占めた。また、酒の販売は世界的に厳密な規制があるが、日本でほとんどないのは問題だとの指摘もある。厚生労働省科学研究班によると、アルコール依存や飲酒運転などによる社会的コストは、酒税収入の約3倍かかるとされている」
−−採算度外視の不当な安売りは、独占禁止法で取り締まるべきだとの意見も多い
「その通りだと思う。公取委が実態を踏まえ、取り締まりに動いてくれれば、不当廉売で酒が圧倒的に多い事態にならなかったのではないか。独禁法の不当廉売の基準は厳しくて、原価割れ販売を継続して行うと警告が出され、2回警告を受けると課徴金が課される。だが、過去に課徴金を課された例はない。改善をお願いしてきたが、動いてもらえなかった」
−−法改正に向けた課題は
「4月に行った自民党部会の合同会議ではメーカーや卸売り事業者、流通大手の団体からヒアリングがあった。反対意見は一つもなかった。最低限のルールの必要性に、違和感はないと聞いている。議員立法は、党内手続きの調整が当初の想定より長引いているが、昨年の請願は衆参両院の財務金融委員会で、6年ぶりに全会派一致で採択された。内容は十分理解いただいている。もう一度、丁寧に法案の真意を伝えていきたい」
<みずぐち・なおと>昭和55年、東京都生まれ。35歳。平成17年全国小売酒販組合中央会。平成25年から政策部長。酒類小売業者を対象とする酒類販売管理研修講師として年間1000人以上に研修を行っている。
■緩和の流れにそぐわない 中央大学法科大学院教授 森信茂樹氏
−−酒税法などの改正案が今国会に提出される見通しだが見解は
「酒の安売りを規制するのは、消費者利益を重視する規制緩和の流れにそぐわないのではないか。低価格を武器にする小売店が、消費者を引きつけるために何を目玉にするかは自由だ。規制が厳しくなり、消費者が安い商品を買う機会が少なくなるとすれば、それを補うだけの社会的なメリットを示さなければならない」
−−日本の酒類販売に対する規制は、国際的な水準に比べ特殊だとの見方もある
「酒は国の重要な財政物資であり、人体への影響や未成年者の購入防止など、商品としての特殊性があるのは分かる。しかし市場経済の中で、酒だけに特別なルールを設けるほどではないはずだ。今回の規制強化には反対だ」
−−公正取引委員会による取り締まりにも問題がある
「もし、大型販売店の原価割れ販売によって、中小・零細の酒販店が倒産したり、適正な利潤が確保できない事態となったりしているのであれば、独占禁止法に基づき、公取委が不当廉売を摘発するのが筋だ。その制度が機能していないのであれば、独禁法を改正すればいい。公取委のマンパワーが足りないのであれば増員の予算をつけるなどの方向で、きちんと議論をすべきだ」
−−安売り規制は政府が進める規制緩和の流れに逆行するとの指摘もある
「農協改革のように規制緩和を推進して自由な競争を促し、経済を活性化するのが、アベノミクスで『第三の矢』として掲げた成長戦略の本来の姿だろう。しかし、私が専門とする税制の分野では、特定の業種や分野の税負担を軽減する租税特別措置が多くつくられている。酒の話も同様だが、非常におかしな流れだと思う」
−−規制強化の負の側面は
「特定の人や行為に利益を与えることで、一定の方向に誘導する行為は、市場のメカニズムを少しゆがめる。例えば租税特別措置の中には、本社を地方に移転した企業を税制面で優遇する『地方拠点強化税制』や、雇用者数を増やした企業を優遇する『雇用促進税制』などがある。これらは基本的に企業が個々の判断で実行すべき話だ。デフレからの脱却には必要なのかもしれないが、政府の関与がやや行きすぎている印象を持つ」
−−今後、あるべき規制について、どう考えるか
「成長戦略の基本は市場機能の強化であり、これを踏み外してはならない。市場メカニズムへの干渉は必要最小限にすべきだ。安易に事業者を保護する政策に走ると、裏に何か別の利害関係があると思われても仕方がない」
<もりのぶ・しげき>昭和25年、広島県生まれ。65歳。京大卒業後、大蔵省(現財務省)入省。主税局総務課長などを経て平成19年から中大法科大学院教授。専門は租税法。著書に「日本の税制」など。
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