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仏揺らす「1株2議決権」 政府介入、企業統治に影
フランス政府が新設した長期保有株主を優遇する新制度が波紋を広げている。自動車大手ルノーや航空大手エールフランスKLMの株式を買い増してまで制度を採用させるなど、政府の強硬姿勢が際立つ。安定株主を手厚く保護し、企業の長期的な視野に立った経営を後押しする狙いだが、企業統治をゆがめかねない新ルールに批判は多い。
ルノー、国と対立
21日、パリ中心部で開かれたエールフランスKLMの株主総会。25番目の議案は目立った質疑もなく淡々と否決された。可決には3分の2の賛成が必要だが、結果は56.6%。これで2014年に成立した通称「フロランジュ法」に基づき、来年には同社株式を2年以上持つ株主の議決権は2倍になる。筆頭株主の仏政府も例外ではない。
総会前、15.88%を持っていた仏政府はさらに1.7%分を買い増し、経営陣が出した「1株1議決権」維持を求める議案を阻止する姿勢を鮮明にしていた。
仏企業にとって今年の株主総会の重要案件の一つが、新ルールにどう対応するか。議決権2倍の規定は総会で投票者の3分の2が反対すれば適用されない。現行制度存続を求める議案を出す企業は少なくなく、中でも政府との激しい対立に発展したのがルノーだ。
「新ルールによって主要2株主のバランスが崩れる」。ゴーン最高経営責任者(CEO)が懸念したのはルノーの独特な株主構成のためだ。これまで仏政府が15.01%を持つ筆頭株主で連合を組む日産自動車が15%。だが日産はルノーの議決権を持たない。
仏政府はエールフランスKLM同様、一時的にルノー株を買い増し、現行制度維持を求める議案を否決に持ち込んだ。仏政府の議決権は従来の2倍近い28%になる見通し。日産側には、仏政府がルノーを通じて経営に介入してくるのではないかとの不安が広がる。
マクロン経済産業デジタル相は「安定株主の増加は、企業が長期的視野で事業を進められる環境をつくる」と利点を訴える。ただ長期保有株主を優遇するのが目的とはいえ、無条件に2倍の議決権を与えるのは乱暴にもみえる。仏政府がここまでするのはなぜか。「長期保有優遇」のほかに、2つの隠れた理由がある。
国内雇用を重視
1つは企業に「仏企業」としての自覚を持たせること。ルノー前CEOで、今は政府機関のトップを務めるシュバイツァー氏は「政府はルノーを支配はしないが重しにはなる」と語る。欧州債務危機で不振が続いたルノーは、このところ人材や業績面で日産頼みの構図が強い。労組からはルノーの「日産化」を心配する声が増え、労組を支持基盤とするオランド社会党政権が強硬措置に踏み切った。
もう1つは厳しい財政事情。自動的に議決権が2倍になる仕組みをつくれば「将来的に株式をある程度売却しても影響力を保持できる」(仏経済紙レゼコー)との思惑があるという。
企業の対応は二極化している。2倍ルールが採用されるのは、仏政府が主要株主のエネルギー大手エンジー(旧GDFスエズ)のほか、メディア大手ビベンディなど創業一族や経営者が大株主の企業が多い。大手銀BNPパリバや化粧品世界最大手ロレアルなどは1株1議決権を維持した。
伝統的にフランスは英米の資本主義と一線を画し、国家による企業への一定の関与を認める土壌がある。最近では自動車大手プジョーシトロエングループ(PSA)への中国企業の資本参加や、重電大手アルストムのエネルギー部門の買収合戦に介入した。
仏政府が最重視するのは国内の雇用維持だ。失業率の高止まりで、政権は雇用情勢に敏感。だがルノーのようなグローバル企業と、仏政府の利益は必ずしも一致しない。利害がぶつかるとき、仏政府が大株主としての影響力を行使すれば、企業は競争力を失いかねない。
(パリ=竹内康雄)
フロランジュ法 鉄鋼大手アルセロール・ミタルは2012年、フランス北東部フロランジュにある高炉を閉鎖すると発表した。多くの雇用が失われると懸念したオランド社会党政権は、企業に工場閉鎖前に売却先探しを義務付ける通称「フロランジュ法」を14年に成立させた。
同法のもう一つの目玉が、株式を2年以上持つ株主に2倍の議決権を与えること。仏政府はいずれも、国内の産業や雇用を守る目的があると説明する。
[日経新聞5月26日夕刊P.2]
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