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【日本の解き方】「日本の対外純資産世界一」誇らしげな響きだが、経済学的には…
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150530/dms1505301000004-n1.htm
2015.05.30 夕刊フジ
昨年末の対外純資産残高が3年連続で過去最高を更新し、24年連続で世界一となったと報じられた。
「世界一」と聞くと何か誇らしげに感じるかもしれないが、経済学的な意味はそれほどない。
国際収支について復習しておくと、複式記帳になっているので、経常収支黒字(赤字)は必ず、外貨準備増減を含む広義の資本収支赤字(黒字)に等しくなる。資本収支赤字とはカネが出ていくことであり、資本供給、つまり対外資産を獲得するともいえる。これで、経常収支黒字は対外資産の増加の源であることがわかる。原則として、累積経常収支黒字が対外純資産残高になる(ただし資産のキャピタルゲインを除く)。
対外純資産残高が大きい方がいいという価値判断は、経常収支黒字が望ましいという価値判断に通じている。しかし、国際収支に損得感情を持ち込むのは正しくない。一般に経常収支は黒字の方がいいという通念があるが、経済学的には誤りである。
カナダのように経常収支が100年以上にわたりほとんどの年において赤字でも、発展してきた国もある。アイルランド、オーストラリア、デンマークなどの経常収支も第二次世界大戦以降、大体赤字であるが、それらの国が「損」をしてきたわけでもない。
1980年から2012年までの世界各国の「平均経常収支対国内総生産(GDP)比」と「平均実質成長率」について、国際通貨基金(IMF)のデータで見て、相関係数を計算すると0・00となって、経常収支対GDP比と実質経済成長率にはなんら関係がないことがわかる。
日本の対外純資産が大きいのは、日本の発展がそのような段階にいるだけだ。経常収支は、国の発展段階で異なるという「国際収支の発展段階説」がある。ただし、この考え方は超長期に妥当すると考えられており、数年間の説明にはまったく適当でないことにも留意すべきだ。
「国際収支の発展段階説」によれば、国の発展の初期段階では、輸出するものがなく、資本も海外に頼るので、経常収支は赤字となる。この段階では対外純資産はマイナスである(未成熟・成熟債務国段階)。
そのうち貿易収支が黒字化し、所得収支は赤字になり、経常収支が徐々に黒字になる。そうなると対外純資産はゼロからプラスになる(債務返済国)。
その次には所得収支も黒字になる。このときになると巨額の経常収支になる。対外純資産は大きなプラスである(未成熟債権国)。
その次の段階では、貿易収支が赤字、所得収支が黒字になり、経常収支の黒字は縮小する。対外純資産はプラスだが増加が鈍化する(成熟債権国)。
そのうち、貿易収支の赤字が多くなり、経常収支も赤字に転ずる。こうなると、対外純資産は縮小に転じる(債権取崩国)。
今の日本は成熟債権国の段階である。もうしばらくすると、債権取崩国になるだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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