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「太陽光発電で住宅ローンがゼロ!」そんな夢のような謳い文句もすっかりしぼんでしまった Photo:sakura-Fotolia.com
あれは夢だったのか!?「ゼロ円住宅」の今
http://diamond.jp/articles/-/72377
2015年5月30日 ダイヤモンド・オンライン編集部
一時期、流行った「ゼロ円住宅」。定義は主に3つほどあるが、状況が変わり、絵に描いた餅と化したものもある。
■太陽光発電で住宅ローンがチャラ!?「ゼロ円住宅」とは何か
住宅ローンの上限は、およそ年収の7倍までが相場と言われている。それ以上のローンを組めば、非常に苦しい生活が待っていることだろう。しかし、そんな制限をとっぱらう奥の手として人気を集めたのが「ゼロ円住宅」。何らかの手段で“お金を産む”家にするという発想だ。一口に「ゼロ円住宅」と言っても、実は定義は3つほどある。
1/太陽光発電で電気を売って、光熱費をゼロにする
2/太陽光発電で電気を売って、住宅ローンを返済する
3/自宅に賃貸住宅を併設する、いわゆる「賃貸併用住宅」を建設して、賃料でローンをまかなう
1と2の売電でのゼロ円住宅は、2012年7月に施行された、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)によって誕生した。
総出力10キロワット以上なら、20年間にわたって全発電量を電力会社に買い取ってもらえる。一方、10キロワット未満なら、買い取り期間は10年。家庭で使用した分を差し引いた、余剰電力を買い取ってもらえる。
1は非常に分かりやすいし、実現性の高いプランだ。実際に実証実験でも可能であることが分かっている。ただし、「1日に3回風呂に入る」など、極端に光熱費を多く使う生活をしなければ、の話だ。
■買い取り価格は年々下落 住宅ローンチャラは幻に
しかし、2になると途端にハードルがぐんと上がる。まずは太陽光パネル。大型でないとたくさん発電できないから、都心の15坪くらいの家では難しい。住宅メーカーも、郊外で40坪以上といった、比較的大きな家を対象にしている。
しかも、太陽光発電自体にも暗雲が立ちこめている。昨年秋、九州電力は再生可能エネルギーの申し込みが殺到したため、回答を保留にした。これを受けて「出力抑制」、つまり電力が余った際には電力買い取りを停止するというルールができた。現在、電力会社によってルールの適用状況はまちまち。実際に出力抑制に至ったケースはまだないが、それでも大きな不安材料だ。
さらに、太陽光の買い取り価格も年々下がっている。12年度には出力10キロワット以上・以下ともに40円(1キロワット時あたり)を超えていたが、今年4月には10キロワット以上は29円に、さらに7月には27円に下がる。10キロワット以下も33円に値下がりした。当然、当初の目論みは狂うことになる。
今では、「住宅ローンゼロ」をうたい文句にする業者は激減している。
しかし、「省エネ住宅にすることで、住宅の価値が上がりますから、目先の損得だけで考えるのはもったいない」。こう話すのは、不動産コンサルティング会社・さくら事務所の長嶋修会長だ。
EUでは今や、住宅の省エネ化は当たり前。“家の燃費”を示す証明書「エネルギーパス」が義務づけられており、省エネ住宅だと家の資産価値が高く維持される。日本は、現在は住宅の省エネに何の義務もないが、20年にはすべての新築住宅に対して、省エネ基準を義務づけることが決まっている。
つまり、太陽光発電によって住宅ローン返済というのは夢を見すぎだとしても、光熱費をゼロにしたり、住宅の価値を高めるためには、大いに有効だということだ。
■悪徳業者にご用心!賃貸併用住宅のウソ
3の賃貸併用住宅はどうだろうか。実は太陽光以上に危険が大きいのはこちらだと言える。
「賃貸併用といっても、あくまでも普通の賃貸経営と変わりません。今や新築マンションでも駅から徒歩7分以内が求められます。たとえば駅から徒歩10分以上かかる自宅に賃貸住宅を併設したなら、賃料をかなり安くするか、もしくはある程度の空室を覚悟する必要があります」(さくら事務所の長嶋会長)。
大家がすぐそばに住むことを敬遠する人もいる。決して選ばれやすくはない賃貸住宅であることも知っておく必要がある。
当然ながら、築年数が上がって行けば、賃料も下げる必要がある。しかし、賃貸併用住宅を勧める住宅メーカーの中には、賃料がずっと一定で推移することを前提に試算する会社も少なくない。空室リスクも甘めに見積もっており、バラ色の試算書を見て張り切って建設したものの、空室に泣くことになるケースが後を絶たない。
空室リスクを避けるために、家賃収入の1割ほどを手数料として取られるが、30年間といった一定期間、住宅会社が物件を借り上げて、管理もしてくれるという、いわゆる「一括借り上げ」を行っている業者は多い。しかし、「2年ごとに契約を更新する」といった文言が契約書に入っており、契約更新ごとに家賃収入が下がるケースが多い。
また、金利リスクもある。一般の住宅よりもローンを組む金額は大きくなる。将来、金利が上昇した場合、賃料下落と相まって、一気に破産の道を進むことになる危険性もあるのだ。
「ゼロ円住宅」は非常に夢のある話だが、実はさまざまなリスクと隣り合わせ。慎重なシュミレーションをして、いきなり生活が破綻することのないようにする必要がある。
(ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)
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