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タカタの全米リコール“降伏”は、トヨタ・バッシングの悪夢の再来か?
http://diamond.jp/articles/-/72371
2015年5月28日 週刊ダイヤモンド編集部
タカタのエアバッグ問題が再燃し始めた。5月13日以降、日系自動車メーカー7社が新たにリコールを実施。19日には米当局がリコール対象地域を全米に拡大すると発表した。(週刊ダイヤモンド編集部 池田光史)
まるで“勧善懲悪”映画のワンシーンを眺めているかのようだった。
「タカタはこれまでエアバッグの欠陥を認めてこなかった。しかし今日、それが変わった。(Up until now Takata has refused to acknowledge that their airbags are defective, that changes today.)」
現地時間の5月19日、アンソニー・フォックス米運輸長官は記者団を前に、そう高らかに“勝利宣言”した。
この日、米運輸当局(NHTSA)は「タカタが一部自社製エアバッグの欠陥を認め、全米リコールに同意した」と発表。これを受けて各種報道でも、全米リコールに消極的だったタカタがついに“降伏”したと言わんばかりの見出しが躍った。
米国では2014年6月以降、タカタ製のエアバッグが暴発して死者が出る事故が数件発生し、タカタに対する非難が高まっていた。14年11〜12月には米上下両院で公聴会が開かれ、さながらタカタの“公開処刑”と化す場面もあった。
そして、この公聴会でも焦点となったのが、リコール対象を「全米に拡大するかどうか」だった。
エアバッグを膨らませる火薬(「インフレータ」と呼ばれるガス発生剤)は湿気に弱いとされ、実際に不具合は高温多湿地域で発生していた。そのため、この時点ではそうした地域限定でリコールを実施中で、タカタもその必要性を認めていた。
ところが、対象地域に含まれていない米ノースカロライナ州でもエアバッグ暴発事故が起きたことが発覚(死者は出ていない)。これを受けてNHTSAや米議員らはリコールの全米拡大を要請するも、タカタは科学的根拠に乏しいと反論。その姿勢にさらなる批判が高まり、タカタ・バッシングの様相を呈していく。そうした政治ショーの極め付きが、今回の“勝利宣言”だったといえる。
■明らかになる火薬の経年劣化リスク
ところが、である。今回の発表は、その内容を見れば明らかな通り、本来はことさら“勝ち負け”を強調する類いのものではない。
タカタは5月18日、NHTSAに対して4通の不具合情報報告書(Defect Information Report)を提出。同時に、予防的措置を目的とするエアバッグ回収の対象地域について、確かに高温多湿地域から全米に拡大する「同意指令(Consent Order)」に署名した。
だが、この「同意指令」の内容からも、「科学的根拠が明らかではない中、欠陥認定はできない」という、これまでのタカタのスタンスに変化は見られない。事実、欠陥は認めていないのだ。
それもそのはず。不具合の原因がついに究明されたという話ではなく、タカタの過失が新たに認められたわけでもないからだ。
米世論や議会の圧力の下、表向きは“勝利宣言”せざるを得なかったNHTSAとて、実際には根拠もなく強制リコールに踏み切るわけにはいくまい。タカタと法廷で争えば、欠陥の存在を立証できず敗訴する可能性もある。
これまで全米リコールに否定的だったとはいえ、タカタは不具合が発生していながら原因が特定できていない案件については、この分野で権威のある独フラウンホーファー研究所に第三者調査・検証を依頼していた。
どういう範囲でリコールをかければ追加的な事故の発生を防ぐことができ、かつ原因究明を急ぐことができるか──。独調査機関が15年3月にまとめた中間報告を受けて、タカタは水面下ではNHTSAと足並みをそろえて協議を進めてきた。
その結果、型式や使用年数、使用環境条件などに基づき、リコールを段階的に全米に拡大した方がいいものもあれば、今後の拡大を検討すべきものもある、というのが今回の発表の中身だ。
独調査機関の中間報告などからも徐々に明らかになりつつあるが、一連のエアバッグ問題のポイントは、次の2点だと思われる。
@タカタのエアバッグは(製造ミスなどは別として)、自動車メーカーや米当局が求める性能基準は基本的に満たしていた。
しかし、A2000年代からエアバッグに使われ始めたばかりで、歴史のまだ浅い現在の火薬には、どうやら経年劣化リスクがあることが分かってきた。
ここから示唆されるのは、当局や自動車メーカー、エアバッグメーカーそれぞれが責任のなすり付け合いをするのではなく、エアバッグで使用する火薬には、耐用年数を設ける定期的な交換制度が必要なのでは、という議論だろう。
タカタは、エアバッグ大手で唯一、火薬に暴発リスクが高いとされる「硝酸アンモニウム」を使用している。その点も、公聴会などで追及された。
しかし、豊田合成やオートリブ(スウェーデン)、米TRWなどライバル各社が使っている「硝酸グアニジン」も、暴発リスクは小さいが、逆に経年劣化で適切に燃焼しない不発リスクが高まるといわれている。
5月13日には、新潟県の自動車解体工場でタカタ製エアバッグを展開した際に暴発したことが大きく取り上げられているが、不発となった事例もフェアに情報公開されるべきだろう。
エアバッグ問題に詳しい国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏は、「硝酸グアニジンを使う自動車用発煙筒でも4年で交換、タイヤは5年点検・10年交換というガイドラインがある」と指摘した上で、「硝酸アンモニウムに限らず、エアバッグの火薬の“賞味期限”の議論が必要だ」と主張する。
■“トヨタ叩き”を彷彿させる報道 振り返るべき教訓
注意すべきなのは、09年秋以降の“トヨタたたき”でも見られた通り、やはり米国社会のヒステリックともいえる世論醸成だろう。特に今は、競争力を低下させ不満を募らせつつある米自動車部品業界の意向が反映され、米政府や議会を通じて理不尽な難癖をつけてくる可能性が否定できない。
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉では、自動車部品関税の即時撤廃を求める日本に対し、自国メーカーを守りたい米国は20〜30年かけて撤廃すべきと主張している。また、米国では近年、自動車部品カルテルで関係者の起訴・収監者が急増しており、その大半がタカタを含む日本企業であることは特筆に値する(上表参照)。
11年2月、日米メディアに散々たたかれたトヨタのリコール問題は、「電子制御装置に欠陥はなかった」とする米当局による調査結果の公表で、あっさり幕を引いた。建前の“勝利宣言”に翻弄されることのないよう、報道機関にも当時の教訓が求められている。
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