http://www.asyura2.com/15/hasan96/msg/894.html
Tweet |
「機能性表示」で売ろうとするのは間違いだ!本当に差別化できるヘルスケア商品マーケティング
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43796
2015.5.27 藤田 康人 JBpress
消費者の健康志向の高まりを追い風に、「トクホ(特定保健用食品)」や「栄養機能食品」に次ぐ“第3の波”として注目を集める「機能性表示食品」の第1弾商品がついに出そろった。
■「形式的」ではなかった事前審査
今回の制度でパッケージに表示できる成分のポイントは、「体に有効な(機能)成分を特定できている」「なぜ有効なのか(作用機序)が判明している」「効果的な量が分かっている」の3点となる。
しかし、小売店頭に設置するPOPなどのプロモーションツールや、飲食店のメニューなどには機能性表示ができない。商品がパッケージに入っていても「ファストフード店などのように、その場で飲食できるもの」(消費者庁)も対象外となる。疲れやだるさ、ストレスといった不調感も不可で、病名を記すこともできず、病気にかかっている人や未成年、妊婦・産婦・授乳婦向けのアピールもできないという制限がある。
届出件数自体は100件以上あった中で今回受理されたのは8商品ということから見ると、「届け出さえすれば基本的に受理されるのではないか」と言われていた事前情報とは異なり、受理されるハードルは案外高いようである。
消費者庁側は、制度の実施にあたり、届出のあった機能性表示食品の書類上の不備や「NGワード」などをチェックするなどの「形式的な審査は事前に行う」としていた。そのため、トクホと違い、機能性表示食品の事前審査は形式的なものであり、実質的には届出だけで効果を表示できると見られていた。事業者からは、開発費用を抑え開発から販売までの期間を短縮することができ、早く、安く、商品開発を行うことができると期待されていたのである。
ところが書類が受理されるのが1割以下という今回の状況を見ると、とても形式的な審査というレベルではないようである。
また、何が「不備」に当たるのか、「NGワード」にはどんなものがあるのか、ガイドラインが明確に示されているわけでもない。
■根拠やエビデンスの不備を指摘されるおそれも
これらのハードルを乗り越えて書類が受理されて商品発売までこぎつけたとしても、企業はまだ安心することはできない。
まず、「機能性表示食品」はトクホや栄養機能食品とは異なり、特定の商品の効果効能をうたうことを、国として認めているわけではない。あくまで企業が自分たちの責任で、自社のリスクの中で製品を販売することを認めているのに過ぎない制度である。つまり、公に国のお墨付きを与えているわけではないのである。
それゆえ、製品発売後に、製品パッケージに表示されている文言やその根拠として提出されているエビデンスの不備等をいつ誰から指摘されるか分からない。
同種の製品を販売する競合企業、今回の制度そのものに強い危惧を抱く消費者団体やNGO、エビデンスの研究で協力を仰いだ研究者との学会内のライバル関係にある大学研究機関、狂信的なクレイマーなどからの様々な指摘に企業自身が直接対峙しなければならない。
今回受理されたものについても、すでにトクホとして許可を得るための審査で「安全性に疑いがあると指摘されているものが含まれている」との声があがっている。
■公表されたデータを使えば他社でも製造可能
今回の制度における評価の方法は、「製品の臨床試験」か「最終製品、成分のシステマティックレビュー(SR)」の2択があるが、どちらにしてもそこで使われるデータは消費者庁のウェブ上で公知のものとなる。
それはすなわち、他社もそのデータを使って、同じ効果効能をうたった同じような製品を販売することが容易になるということを意味する。つまり、今回の制度は自社を優位にする、排他性をほぼ持たないということなのだ。
同様の機能性成分を同量配合すれば誰もが同じことを製品に表示できてしまうのであれば、最終製品を製造販売するメーカーが、コストをかけて独自のエビデンスを取得するメリットはあまり大きいとは言えない。
ただし、原料メーカーにとっては逆に大きいビジネスチャンスにつながることが期待できるだろう。本来「B to B」である原料メーカーが独自エビデンスにより、「B to C」向けの製品を自らが発売し販売実績をつくることで、多くのメーカーに採用してもらう道筋を開き、原料の拡販を狙えるというわけだ。
実際に原料メーカーとしての側面を持つキユーピーとリコムの2社が第一陣として書類を受理されており、リコムは、「独自に規格化した原料で、今後、OEM供給にも対応していく」という戦略を既に打ち出している。
■消費者にとってのメリットとは?
一方、消費者にとってこの新制度スタートで何が変わるのだろうか? 整理すると以下のようになるだろう。
(1)体のどこにどう効くかが分かりやすくなる
これまで、トクホや栄養機能食品以外の食品は、体への機能性を表示することができなかったが、新制度のスタートで、「どこにどう効くか」が表示できるようになる。
これによりサプリメントや健康食品などと異なり、あまり機能効能を意識していなかった野菜などの生鮮食品にもどんな健康機能がある事が分かるようになる。
(2)機能性成分を強化した食品が増える
機能性表示ができるのは、機能性成分が効果を期待できる量が入っている製品に限られる。このため、機能性成分を強化した食品が増えてくると考えられている。
これまでも機能性成分が入っていることが表示されている食品は数多くあったが、この制度下では一定量以上入っていないと表示が許されないので、その配合基準を満たした製品が増えるだろう。
(3)機能性についての説明がウェブなどで確認できるようになる
今後、機能性表示食品を販売する企業は、機能性について分かりやすくウェブなどで公表しなくてはならない。消費者が製品の機能性情報をより詳細に入手することが可能になることで商品が選びやすくなる。
(4)機能性や目的部位別に陳列された売り場が増える
機能性表示食品の登場で、「お悩み別」「部位別」に陳列された売り場が増えてくると予想されている。スーパーやドラッグストアでの売り場の作り方が変化するだろう。
■制度や表示に頼るよりも「ストーリー」で勝負
消費者の観点から見ると製品パッケージに健康表示があることで、より製品を選びやすくなることは間違いないが、それによって食品を食べる量そのものが増えるわけでない。いまだに尾を引く消費税増税後の業績悪化に悩む食品業界は、この制度により機能性食品の市場が一気に成長するのではないかと、過剰な期待を抱いているように感じる。
だが長らくこの業界に携わってきた筆者の感覚では、日本における機能性食品市場が飛躍的に拡大するには、まだいくつか超えるべきハードルがある。
「食品に含まれる○○という成分、素材は××に効く」というような健康情報は、既にネットなど様々なメディアにあふれている。それが多少商品パッケージに表示できるようになったぐらいで、爆発的に販売が伸びるとは考えにくい。
また、同様の効果効能をうたえる成分や製品は他にも数多く市場にある。さらに、医薬品とは異なり、食品は薬事法の規制で病気の治療効果等を表示することは許されていない。
確かに今回の表示制度により多少の健康維持や疾患予防効果の表示は可能になる。しかし、それがどれだけ販売を押し上げるのかは疑問府がつくと言わざるをえない。
むしろ大切なのは、消費者のインサイトに基づく効果効能を伝えることができるエビデンスの開発と、それに沿ったストーリーやコンテンツをつくることだろう。
ただ単に「××に効く」という表示だけでは、健康情報があふれる中、現代の消費者の心をつかむことは難しい。オリジナリティーのある製品にまつわるストーリーと、そのプロモーションこそが、市場にあるあまたの商品との差別化を可能にするのである。
この連載では制度や表示に頼るのではなく、機能性食品などヘルスケア領域における“本当に売れる”リアルなマーケティング手法について考えていきたい。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。