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2000年8月の金融政策決定会合後の会見で、ゼロ金利解除を発表した速水優・日本銀行総裁(当時)Photo:REUTERS/アフロ
15年前の日銀利上げ時と酷似 FRB発言に感じるデジャビュ
http://diamond.jp/articles/-/72039
2015年5月27日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長] ダイヤモンド・オンライン
「最近よく当たっている」とちまたで評価が高いアトランタ連邦準備銀行の経済成長率予想、「GDPNow」。第1四半期の予想は、ウォール街のエコノミスト予想よりも大幅に低い数値だったが、結果はそちらに近かった。そして、5月13日に「GDPNow」は第2四半期の予想を0.7%成長と発表した。
多くの米連邦準備制度理事会(FRB)幹部は、1〜3月の米国経済の停滞は一時的なもので、第2四半期以降の成長はスピードアップすると期待してきた。しかし、4月の小売り販売は低調だった。その後のミシガン大学消費者信頼感指数、NAHB住宅市場指数も弱めである。上述のように、アトランタ連銀の予想も急回復は怪しいと示唆している。
このため「FRBのリフトオフ(ゼロ金利解除)は来年以降になるのではないか」との見方が市場で増えつつある。しかし、FRBの主流派メンバーは市場の利上げ予想が大幅に剥がれてしまうのを今は避けたがっている。一度剥がれてしまうと、再び市場に混乱なく織り込ませるのは容易でないからである。当面は、リフトオフは9〜12月ごろというムードを彼らは醸し出し続けると思われる。
最近、アトランタ連銀の幹部も「GDPNow」に過度に注目しないでほしいと米「ウォールストリート・ジャーナル」紙に話している。5月13日のように四半期の半ばに発表しているGDP予想は材料が不足しており、過去にも大きく外したことがあったという説明だ。
ところで、サンフランシスコ連銀のジョン・ウィリアムズ総裁は5月12日に、金利引き上げ局面における決定には、(1)いつリフトオフを行うか、(2)その後の利上げはどういった速さか、(3)最終的にどの高さまで上げるか、という三つのポイントがあると説明した。
彼は市場やマスメディアが(1)に注目し過ぎている状況を変えたがっている。ウィリアムズ氏は、(1)をやや早めに行ったとしても、(2)と(3)を慎重に進めるならば、それはタカ派度の強い政策ではない、とアピールしている。
スタンレー・フィッシャーFRB副議長も、リフトオフを金融政策の大幅なスタンス変更と受け止めるべきではない、と説明している。「われわれは、“実施可能なあらゆる手段を投入した全歴史において最大限の拡張的金融政策”を、“かなり拡張的な金融政策”に変えようとしているだけだ」。
こういった発言を聞くと、デジャビュ(既視感)のような感覚が起きてくる。2000年8月に日本銀行がゼロ金利解除を行うに当たって、当時の日銀幹部は、「ゼロ金利解除を行うことは金融引き締めではない。日本経済を緊急治療室から一般病棟に移すだけであり、治療(金融緩和)は続く」といった説明を懸命に行っていた。
フィッシャー氏らの発言は、当時の日銀の「緊急治療室」論と非常に似ているのだ。
しかし、日銀の2000年の利上げが1回だけで終わり、1年もたたないうちにゼロ金利に戻ってしまったようなことが、もし今後の米国で起きたら、マリオ・ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁にとっても、黒田東彦・日銀総裁にとっても大変悩ましい事態となる。
どちらも追加金融緩和の手段は限られており、そんな中で米国が「通貨安競争」に再参戦してきたら厄介なことになるからだ。2人とも、そういった悪夢が現実化しないよう、米国経済の順調な回復を願っているものと思われる。
(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
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