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本社を英国外に移すという仰天計画が持ち上がっているHSBC。課税強化とEU離脱が原因と見られる Photo:flickr.com
英大手銀行が相次ぎアジアに本社を移転する理由
http://diamond.jp/articles/-/72167
2015年5月27日 ダイヤモンド・オンライン編集部
■突如HSBCが本社移転を表明 課税強化とEU離脱が原因か
2015年4月24日、英国銀行業界に激震が走った。英銀行最大手HSBCが英国外への本社移転を検討していることを明らかにしたのだ。これに続く5月5日には、同行のガリバー最高経営責任者(CEO)が、数ヵ月以内に本社移転に関する決定を下すことを明らかにしている。
さらには、ロイター通信が消息筋の話として伝えたところではHSBCだけでなく、同じく大手のスタンダードチャータード(スタンチャート)銀行も英国外への本社移転を検討しているという。
消息筋らによると、両行ともアジアに拠点をシフトする可能性を踏まえ調査を行っているもようだ。
なぜ英銀大手がそろって国外に本社を移転するという”奇策”を検討しているのだろうか?背景には、英当局からの課税圧力の強まりがあるという。また、欧州市場におけるリスクの高まりと、アジア市場のビジネス機会の増大も、本社移転を促す要因になっているように見える。
欧州市場におけるリスクとは、英国の欧州連合(EU)離脱の可能性が高まっていることだ。
5月7日に実施された英議会下院選挙では、与党・保守党が過半数を確保した。これが意味するところは、英キャメロン首相が打ち出したEU加盟継続の是非を問う国民投票が2017年末までに実施される、ということである。英国内で欧州からの移民に対する反対感情が高まっていることを踏まえると、英国がEUから離脱する可能性は十分にある。
英国がEUから離脱した場合、外資企業からの投資が減ることに加え、失業率が高まるなどの経済不況が予想される。実際、ロイター通信が伝えたところでは、欧州の航空大手エアバス・グループ英国拠点のポール・カーン社長は、もし英国がEU離脱の道を選ぶ場合、同社の英国拠点への投資に疑念が生じ、地元の雇用が打撃を受けると指摘している。
また、英国銀行協会(BBA)が、EU離脱に関する国民投票が終わるまで、英国への投資を見合わせる銀行が出始めたとも報告しており、HSBCとスタンチャート以外の銀行も何らかの対策を取る可能性が高い。
■アジアに拠点を移す理由は富裕層サービスと貿易金融需要の拡大か
一方、アジアでは、銀行が拠点を置く魅力は大きい。域内経済の活況に伴う富裕層向けサービスと貿易金融需要の増大だ。リテール、証券事業、投資銀行事業といった、これまで銀行の収益を支えてきた事業の利益率が下がっている中、収益の新しい柱として期待されている。
アジアへの本社移転は、銀行側の戦略とも合致している。スタンチャートは現在、事業再編で現在大規模なリストラを実施している。今年1月には、同行が世界各地のリテール部門の行員約4000人を削減する方針を固めたという内部文書が明るみにでている。代わりに強化するのは、富裕層向け事業だ。同行はまた、株式事業からの撤退も進めている。
貿易金融に関しては、アジアの貿易ハブであるシンガポールにおける、銀行ごとの市場浸透率を見ると、HSBCとスタンチャートにとって、同事業がいかに重要かが分かる。調査会社グリニッチ・アソシエイツが実施したシンガポールの多国籍企業向け貿易金融市場浸透率調査で、HSBCがシンガポールの地元銀行を抑え46%で1位、スタンチャートが42%で2位となっているのだ。
グリニッチによると、アジア地域では貿易金融を新たな資金調達手段として活用する企業が増加している。これらの企業は貿易資金を調達するときに調達先となる銀行を選定するのだが、選定されるのは、アジア域内で強力なネットワークを持つ銀行なのだ。
HSBCとスタンチャートは、いずれも19世紀からアジアに拠点を置き活動しており、域内のネットワークは豊富にある。ただし、グリニッチの調査では、シンガポールの地元最大手銀行DBSが貿易金融市場浸透率で42%と市場占有率を急速に拡大するなど、地元銀行も追い上げており、競争は熾烈だ。
英銀がアジアの貿易金融市場でしっかり足場を固め、地元銀行の追い上げを振り切るために、本社をアジアに移すという大胆な選択を検討することは、不思議なことではないだろう。
(細谷 元 & 5時から作家塾(R))
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