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コラム:日本の失敗に学べ、中国の銀行不良債権問題
2015年 05月 26日 12:59 JST
Andy Mukherjee
[シンガポール 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日本は中国にとって重要な教訓を持っている。現在の中国同様に、日本は1990年代前半に制御不能な債務の膨張と格闘を繰り広げた。重要なのは、不良化しつつある債権を抱える銀行に対して、必要なら融資延長をするべきだが事態が健全だと装ってはならない、と伝えることだ。
このメッセージの前半部分は既に実行に移されている。中国の規制当局と人民銀行(中央銀行)は最近、資金繰り難に陥っている地方政府の資金調達機関が債務の利子や元本を返済できない場合は、融資延長をするべきだと各銀行に提言した。
そこで、日本の経験が思い起こされる。日本では株価と不動産のバブルがはじけた後、企業は借金を減らした。だがそうしたデレバレッジングは長期化し、銀行は債務負担に苦しむ借り手が返済し続けられるように新規融資を続けた。
こうした不良債務を生かしたままにしておくこと自体は、悪い戦略ではない。1993年初めの東京の商業不動産価格は2年前のピークから22%下落した。中国と同じく日本でも土地が借り入れの主な担保だった。もしも当時、銀行が企業に土地を売却して債務を返済するよう強制していたなら、あっという間に90年代の日本の企業セクターの総価値は約20%が消え去っただろう。実は地価が最終的に20年間で80%下がった点からすれば、この見積もりでさえ保守的といえる。こうした痛みを一度に引き受けなければならなかったとすれば、日本社会が大規模な富の喪失にもかかわらず何とか維持してきた繁栄は続かなったかもしれない。
中国の状況も似たようなものだ。フィッチ・レーティングスが分析対象としている中国の14の銀行グループ全体の不動産向け与信は20兆元(3兆3000億ドル)で、2008年の4倍に膨らんだ。このうち企業融資の担保としての不動産保有がおよそ半分を占める。ちょうど日本の90年代がそうだったように、すべての中国の銀行が不動産価格が暴落して出た損失を吸収できるだけの資本を確保しているかどうかはわからない。
日本において本当に有害だとわかったのは、銀行は穏やかなデレバレッジングさえも支えられないほどの資本不足状態にある、という現実を政策担当者がなかなか受け入れようとしないことだった。
健全なふりをすることは融資延長よりもはるかに致命的だ。1993年初めまでの3年間で、日経平均が56%下落したことで邦銀は大幅な含み損を抱え、資本不足が明らかになった。その結果、彼らは経営効率が相対的に高い企業から「貸しはがし」をしてゾンビ企業の延命に資金を回さざるを得なくなった。
これが日本経済全体の生産性低下と、20年にわたる成長の停滞につながった。民間セクターへの投資がなくなり、生産と雇用は過度に公的支出に依存するようになるとともに、政府債務が膨れ上がった。適切な時期に公的資金を銀行に資本として注入していれば、こうした事態のほとんどは避けられただろう。しかし実際には、日本はほぼ10年間は自らの課題に正面から取り組もうとしなかった。
そして中国は日本が犯した「健全なふり」がもたらした教訓を無視しかねない状況にある。
経済成長が急速に減速する中で、フィッチの分析で総与信額が国内総生産(GDP)の242%に達し、今年の利払い費用が対GDP比で15%に達しようかという段階で、銀行融資のわずか1.4%だけが不良債権化したという情報を信じるまでになっている。
もっとも銀行の不良債権は大した意味を持っていない。なぜならフィッチの推計では総与信に絡むリスクの38%は、銀行セクターの外に存在するからだ。
それでも最悪の不良債権がシャドーバンキングに潜んでいるからというだけで、こうした債権で生じる損失が銀行に跳ね返ってこないとは限らない。
中国の多くの銀行はこれまでに市場で資本を調達し、損失吸収能力を高めているという点で今後の事態への対応としては良い滑り出しを見せた。ただ、実際に銀行に損失が生じた際に経営効率が比較的高い借り手が立ち行かなくならないようにするには、さらなる増資が役立つかもしれない。当局としては銀行の融資上限を預貸率75%としている法令を再検討する必要も出てくるだろう。
不良貸出先企業を「突然死」させずに「仮死状態」のまま市場で存続させるのを許せば、失業と社会不安の発生を最低限に抑えられるとはいえ、そのコストをより生産的なセクターに負担させてはならない。
純粋思考では、融資延長は健全なふりをするのと同じぐらいよろしくないのかもしれない。経済が新たなスタートを切るための創造的破壊を阻むからだ。
だがそれは現実的ではない。中国の政策担当者は、1930年代の米国における急激なショックではなく、1990年代の日本が経験した不快な状態が長引くことを模倣しようとしているのは明らかだ。
もしも中国が金融システムが脆弱な状況にあると迅速に認めるなら、日本よりもうまく事態に対応し、失われた20年を招かなくても済むのではないだろうか。
●背景となるニュース
*中国政府は15日、地方政府が推計16兆元(2兆6000億ドル)を間接的に借り入れるのを支援してきた関連金融機関に対して銀行が闇雲に貸しはがしや融資ストップなどを行うべきではない、と表明した。
*この政府発表によると、銀行は期限到来時に利子や元本を支払えないプロジェクトへの融資延長ができる。プロジェクトを終了させる上で融資だけでは不十分な場合は、地方政府の直接支援も可能になるという。
*国務院と人民銀行、中国銀行業監督管理委員会は共同声明で、建設プロジェクトの「秩序ある振興」を確保する必要があると訴えた。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0OB05O20150526
焦点:TPPの戦略的重要性増す日本、AIIB創設の動きで
2015年 05月 26日 17:34 JST
[東京 26日 ロイター] - 中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)創設の動きをにらみ、日本の政府関係者の間で、環太平洋連携協定(TPP)の早期実現が重要との認識が高まっている。
日本は、TPPによって米国のアジア重視の姿勢が維持され、アジア地域において貿易ルールに基づく新たな体制を日米主導で構築したい意向。将来的には中国もその体制に取り込みたいと考えている。一方、中国はAIIBなどの機関創設を通じて、アジアの経済体制再編を目論んでいる。
「日本にとって、TPPは戦略的な価値がある」──。TPP交渉に詳しいある政府関係者は話す。安倍晋三首相は日本にとってセンシティブな農業分野をリスクにさらす、という政治的リスクをあえて取った、との見方だ。
「もしAIIB創設が進んでTPPが妥結に失敗すれば、アジア太平洋地域の主導権争いでイメージ的に打撃を受ける。それは利益の機会が失われることになり、米国側の陣営についたものにとってマイナスになる」と、その政府関係者は語る。
オバマ政権がアジア地域のリバランス政策の中心と位置付けるTPPにとって、22日に米上院で貿易促進権限(TPA)法案が可決されたことは一定の前進だった。
ただ、6月1日以降に審議が始まる米下院では、TPP慎重派の抵抗はさらに根強いと予想される。TPP参加国はTPA法案の成立が、妥結にとって不可欠だとしている。
年内にもAIIBを始動させようとする動きによって、AIIBと距離を保つ日米にとってTPPの重要性が増している。TPPは市場アクセスだけではなく、知的財産権など広範にわたるルールを取り決める。
AIIBの創設メンバーは57カ国。米主導の世界銀行、日本主導のアジア開発銀行と競合する。外務大臣政務官も務めた自民党の柴山昌彦衆院議員は「中国主導となっているAIIBなどの経済圏の動きが先行してしまうことで、フェアな先進国のルールをまず先に確立しようという戦略が一定の影響を受けることは避けられない」と語る。
内閣府の試算によると、TPPで関税が撤廃された場合、日本の農業生産にとって3兆円のマイナスとなる。日本経済全体にとってTPPの国内総生産(GDP)押し上げ効果は1%以下に過ぎない。一方で安倍首相はTPPは経済成長に必要な改革をもたらすと主張している。
しかし、日本は経済的なデメリットよりも、戦略的な利益の方が重要だと認識している。米国の関心をアジア地域につなぎとめるために必要だからだ。日米同盟で安全保障上の日本の役割を拡大させるという安倍内閣の方針もその1つだ。
TPPが米国の企業に与える利益を考慮しても、やはり戦略的利益が優先するだろう。
安保政策などに詳しい政策研究大学院大学の道下徳成教授は、TPPが妥結に失敗した場合、「日本は米国をアジア地域につなぎとめる重要なシンボルを1つ失うことになるだろう」と指摘している。
*見出しおよび本文中の表現を一部修正して再送します。
(リンダ・シーグ 翻訳:宮崎亜巳 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0OB0GJ20150526
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