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覚悟して迎えよ!目前に迫る人工知能社会 人工知能が営業マンのメールにダメ出し?
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43845
2015.5.25 加谷 珪一 JBpress
メガバンクで人工知能を導入する動きが本格化している。正確性が要求される銀行業務での実績が積み上がれば、社会全体として、人工知能を導入するハードルが一気に下がる可能性がある。
人工知能がもたらすインパクトは、インターネットが登場してきた時よりもはるかに大きなものとなるだろう。人工知能の普及によって多くの仕事が失われるというネガティブな予想も多いが、人工知能の普及は、産業社会に対してもっと本質的な変化をもたらす可能性が高い。我々は、仕事に対する根本的な価値観の転換を迫られることになるかもしれない。
■メガバンクが相次いでコールセンターに人工知能を導入
三井住友銀行は、年内にも、米IBMが開発した人工知能「ワトソン」をコールセンター部門に導入する。同行は昨年から、ワトソンに関するテストを行い、さまざまな状況において適切な回答ができるのか検証を重ねてきた。テストの結果、十分に実用に耐えると判断し、コールセンターへの導入を決定したという。みずほ銀行や三菱東京UFJ銀行も同じくワトソンの導入を進めており、3メガバンクのすべてにおいて人工知能によるサービスが始まることになる。
人工知能の特徴は何といってもその高度な自己学習能力である。
コールセンターには「ATMの手数料はいくらですか」「ネットバンキングは使えますか」といった曖昧な質問が数多く寄せられる。ひとくちにATMの手数料といっても、自行のカードと他行のカードの場合では異なった料金体系が設定されているし、時間帯によってもバラバラである。コールセンターのオペレーターは、このあたりを包括的に考え、最適な形で顧客に回答する必要がある。
ネットバンキングについても、「ネット使える?」といきなり聞いてくる人もいれば、「オンラインサービスの使い方が分からないのですが?」と質問する人もいるだろう。
人工知能はこうした微妙な違いについても自律的に学習していくので、経験を積んでいないオペレーターでも、熟練者に近いスムーズな案内ができるようになる。
三井住友銀行のサービスは、オペレーターが電話を受け、質問内容をオペレーターがテキストで入力するという形式を採用しており、顧客とのインタフェースはオペレーターの役割となっている。だがみずほ銀行では、直接、顧客と人工知能が対話することも想定しており、すでに十分な実用レベルに達しているという。顧客がどのような印象を持つのかという別の課題はあるものの、スマホでは自然言語処理がすでにメジャーなサービスになっていることを考えると、技術的ハードルは低いと考えてよいだろう。
■人工知能社会では情報を体系化する必要がない
現在、銀行が導入を進めている人工知能では、銀行のサービスに関する情報がいったん体系的された上で入力されていると考えられる。しかし、人工知能が持つ本来の自己学習機能をフル活用すれば、そうした作業すらいらなくなる可能性が高い。人間があらかじめ情報を分類・整理する必要がなくなってくるのだ。
同じくワトソンを導入したオーストラリアの大学では、これまでに大学が発行してきた文書や作成したWebページ、パンフレットなどを無作為に人工知能に放り込み、人工知能側がそれを自動的に整理し体系化しているという。このシステムの仕様が公開されているわけではないので、どのような体系化が行われているのかは不明だが、おおよその想像はつく。
例えば教授陣のプロフィールを示した文書が入力されれば、システムがプロフィールの文書であると理解し、教員、専門分野といったタグが自動的に付けられ、名前や経歴などがデータベースに格納されると考えられる。キャンパスの地図が入力されれば、地図であるとシステムが理解し、建物の名称などがデータベース化に入力されるのだろう。
これまで情報システムを構築する際に、大きな手間となってきたのが、システムに実装する情報をあらかじめ分類・整理し、体系化するという作業である。システムは実装された情報を検索したり抽出するだけであり、情報をどのように体系化するのかという、いわゆる設計図の部分については、すべて人の能力に依存してきたのである。
ところが人工知能は、自己学習機能を使って、こうした作業をシステム自身が行ってしまう。つまり、人が情報を整理しなくてもシステムを動作させることができるようになるわけだが、そうなってくると、その先には、どのような世界が待ち受けているだろうか。
■あたかも社員であるかのように顧客とやり取り
例えば、企業の営業部門に営業支援システムを導入するケースを考えてみよう。従来の営業支援システムは、スケジュール管理や営業の進捗管理が基本的な機能であった。営業成績を向上させるための機能も搭載されているが、あくまでそれは付加的なものである。
しかし人工知能をこのシステムに実装すると、システムが持つ機能が根本的に変化してくる。人工知能を使えば、営業マンが作成したメールやドキュメントをシステムが分析できるようになる。社内での理解が得られれば、電話のやり取りを録音し、自然言語解析技術を使って内容を把握することも可能となるだろう。
人工知能は、もっとも高い営業成績を上げている営業マンに着目し、メールの書き方、提案の進め方、電話の応対などを次々と学習していく。そして、営業成績を上げるためには、どのようなやり方がベストなのか、情報を体系化し、一種のマニュアルを作成していくことになる。だが、そこで人工知能の役割が終わるわけではない。
次にそのシステムが行うのは、営業成績が振るわない営業マンに対する指導である。メールを書いて顧客に送ろうとすると、システムが「その文面では十分な顧客満足を得られません。以下のような形に書き直してください」と警告を発することになるかもしれない。行き着く先は、実際には存在しないのに、あたかも社員であるかのように顧客とやり取りするバーチャルな営業マンである。
この話はあくまで筆者の推測だが、人工知能が持つ潜在的な能力を考えれば、かなり近い将来に実現可能なものと考えてよいだろう。
■仕事がなくなるのではなく、知識労働の意味が変わる
一昨年、オックスフォード大学が発表したレポートは世界に大きな衝撃を与えた。人工知能(ロボット)の普及によって、存在している仕事の約半数が消滅するというショッキングな内容だったからである。
レポートによると、経理や一般事務といった定型処理中心のデスクワーカー、ファストフード店のオーダー処理、ルート営業、薬剤師、医師業務の一部などは、簡単にロボットに置き換わるとしている。バスの運転手、プログラマー、マーケティング担当者といった職種もロボットに置き換わる可能性が高いという。
一方、ロボットに置き換わる可能性が最も低い部類に入るのは、セラピスト、ソーシャルワーカー、教師など、きめ細やかな対人コミュニケーションが求められる職種となっている。また経営者をはじめとするマネジメント層もロボットに置き換わる可能性が低いと指摘している。
仕事の半分がなくなるというレポートの主張を額面通りに受け止める必要はないだろう。ビジネスの現場は様々であり、一律に人の仕事を人工知能に置き換えることは現実的に難しいからである。だが、人工知能が普及すれば、潜在的にこうした置き換えが可能になるというのは紛れもない事実である。クルマの自動運転はほぼ実用段階に来ているし、パイロットなしで飛行機を運航することもそれほど難しいことではない。飛行機の操縦に必要な作業のうち、パイロットが関与している部分など、現在でもごくわずかに過ぎないというのが現実だ。
人工知能社会においては、この事実を大前提として物事を考えるという姿勢が必要となってくる。単純に仕事がなくなるということではなく、人間が提供する労働の意味が根本的に変わるという点が重要なのである。
人工知能社会では、汎用化、一般化が可能な情報は極限までその対象になる、と考えた方がよい。人間の労働は、より抽象度の高い、アイデアや新しい価値の創造といった部分にシフトすることになる。
■グーグル創業者2人の対照的な意見
弁護士の仕事は確かに付加価値が高いものだが、その多くは判例の参照や事実関係の確認という単純作業によってもたらされている。弁護士として本当に付加価値の高い仕事は、実は2割程度かもしれない。
人工知能社会ではこうした単純作業はすべてシステムに置き換わる。そうなってくると、依頼人に対するコンサルティング能力や法廷戦術など、より創造性の高い部分で弁護士の優劣が決まってくることになる。これは医師やコンサルタント、アナリストなど、あらゆる知識労働者に共通の現象となるだろう。
つまり人工知能社会では、単一労働や単純知識に支えられていた部分の付加価値が限りなく小さくなってしまうのだ。こうした部分にのみ付加価値を見出してきた労働者は、その地位が危うくなるかもしれない。
だが人工知能によって合理化が進んだ分、人は新しいアイデアの創造に時間を割けることになる。この部分で実力を発揮できる人にとっては、人工知能社会はむしろ歓迎すべき時代ということになる。
グーグル創業者の1人であるラリー・ペイジ氏は、人工知能をはじめとする新しい技術の普及によって、ほとんどの仕事が機械に置き換わり「人間は忙しく働く必要がなくなる」と主張している。ペイジ氏はまた、人間が生活するために必要な資源はそれほど多くなく、テクノロジーによる最適化を実現できれば、9割以上の資源を節約できるという趣旨の発言も行っている。
確かに現在の工業化社会は、それを維持するためにさらに資源を浪費するという側面があり、人間が生きていく上で必要となる水準をはるかに超える資源をムダ使いしているという彼の指摘は一理あるかもしれない。
一方、同じくグーグルのもう1人の創業者であるセルゲイ・ブリン氏は少し違った見方をしている。人間の欲求は限度がなく、時間に余裕ができても、人々はそれ以上の娯楽を求めるようになるので、結局、労働力に対するニーズは変わらないのだという。工業化によって、人間はたくさんの余暇を手にしたものの、消費欲が新たな産業を生み出し、解放された時間をゆっくり堪能するような状況にはなっていない。人間の欲にはキリがないというブリン氏の指摘の方が正しいのかもしれない。
いずれにせよ、原理的に多くの仕事の置き換えが可能な人工知能社会の到来は目前である。労働に対する価値観の転換が迫られていることだけは間違いなさそうだ。
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