01. 2015年5月24日 23:32:57
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年金を子が使う、遺言でしこり…認知症社会・反響編 2015年5月24日20時34分 朝日新聞 4月から5月にかけて掲載した長期企画「認知症社会」の第1シリーズでは、判断力が十分でなくなったお年寄りをめぐる「お金のトラブル」を取り上げ、読者の方々から多くのご意見や体験談が寄せられました。その中から二つの事例を紹介します。トラブルを防ぐ手立てや支援策について専門家にも聞きました。 ■年金の大半を子が使う 埼玉県の行政書士の男性(71)は、認知症の親の年金などを子らが使ってしまう事例を伝えた4月18日の記事に感想を寄せてくれた。この行政書士は認知症の高齢者3人の成年後見人として財産管理や生活支援にあたっているが、記事と似たような境遇の家族を支援した経験があるという。 2年前に後見を始めた80代の認知症の男性は、月約20万円の年金や1千万円以上あった預金の大半を50代の長男に使われていた。妻は10年以上前に亡くなり、親子2人暮らしだった。長男は通信販売や電器店で、高価な家電や時計などをよく買っていた。近くに住む長女の申し立てで後見人になった行政書士は、男性に特別養護老人ホームに入ってもらい、長男が年金を使えないようにした。 長男は軽度の知的障害があり、ずっと親の収入に頼って暮らしてきた。父親が認知症になったことで、お金の使い方に歯止めがかからなくなってしまったようだ。今は生活保護などで暮らす。「家族が地域から孤立してしまうケースが多い。まわりが早めに長男を支援できればよかったが、子に障害や病気があると、親が外に出そうとしない場合も多い」。行政書士はそう感じている。(生田大介) ■専門家の声:親子あわせた支援が大事 〈困窮者支援に取り組む大阪府豊中市社会福祉協議会のコミュニティーソーシャルワーカー・勝部麗子さんの話〉 息子や娘が高齢の親を虐待したり、お金を使い込んだりした場合、行政は親を施設などに保護して終わり、となりがちだ。息子らは「悪者」のレッテルをはられ、社会から切り離される。だが、それでは解決しない。そういう子たちも障害や病気を抱えたり、生活に苦しんだりしていることが多い。少しでも働いてもらうなど、社会参加を後押しすることが大事だ。 4月施行の生活困窮者自立支援法は、困窮者の自立に向けた計画づくりを自治体に求めている。行政や社協、NPOなどが積極的に地域に出て、高齢者だけでなく、その子など家族にも目を向けた支援を進めるきっかけになると思う。 ◇ ■遺言巡り姉妹にしこり 東京都の主婦(65)は、認知症の親が残した遺言をめぐる親族間トラブルについて紹介した4月26日の記事を読んで、「同じ苦しみを負っている」と体験を送ってくれた。 94歳で亡くなった母の公正証書遺言の内容で、姉に不信感を抱いているという。遺言には、実家の土地や預貯金などすべてを、3人きょうだいの長女である姉に残すと書かれていた。 母は一人暮らしだった。認知症の初期を思わせる言動がいくつかあった。注文する料理を決めたのに忘れ、店員を前に戸惑う。旅行の支度ができない。判断力は低下しているようだった。「姉が主導して遺言を作らせたのだと思う」 母をよく訪ねていたのは姉だ。主婦には家族の事情があり、姉のようにはできなかった。それでも、できる限り会いに行っていた。 母の死後に知った遺言の内容にただ衝撃を受けた。「私は母にとって価値のない存在だったのか。1円も残したくない、そんな存在だったのか」 自分の子どもたちには、元気なうちに「財産は等分に分けるように」と話すつもりだ。死後に確実にその意思をくんでもらうため、子どもたちの前で遺言を書こうと考えている。(沼田千賀子) ■専門家の声は:家族で早めの話し合いを 〈弁護士らと連携して相続の支援をする会社「夢相続」の曽根恵子社長の話〉 認知症になると、財産をどう管理して子どもに分けるか、判断するのが難しくなる。親が元気なうちに相続の話をするのは難しいかもしれないが、早めに家族で集まり、親の意思や介護が必要になった場合の子どもの役割分担とあわせて、財産の使い方、分け方を話し合うのが良い。 全員が同じように親への支援や介護ができるとは限らないので、普段から子ども同士でコミュニケーションをとり、親の状況について共有しよう。そうすれば「介護をした人に多めに」と譲り合う気持ちも生まれる。 親の心遣いも必要だ。財産を譲る際は1人に偏らない方が良い。事情があって1人に相続させる場合でも、子ども全員の名前を遺言に書いて感謝の気持ちを伝えてほしい。 http://www.asahi.com/articles/ASH5P5HGVH5PULFA01Q.html |