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ニトリの店舗(「Wikipedia」より)
ニトリ、28期連続増益を支える異端経営 「当たり前」をひたすら徹底で独自施策続々
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150524-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 5月24日(日)6時0分配信
ニトリホールディングス(HD)が3月30日に発表した2015年2月期連結決算は、売上高が前期比7.7%増の4173億円と家具小売業界初の4000億円台に乗せた。経常利益は同7.0%増の679億円となり、28期連続の増収増益となった。営業利益も同5.1%増の663億円で28期連続の過去最高更新、最終利益も同7.9%増の415億円で、こちらは16期連続の過去最高更新と、「連続増」のオンパレード。このため、株式市場では16年2月期の連続増収増益予想も「当然」と受け止められ、証券アナリストからは「驚きなし」と評価される始末だった。
今や毎期増収増益が常識と化し、株式市場関係者からは「業績に不安材料がなさすぎるので株価も波乱がなく、投資対象としては極めて退屈な銘柄」との声まで漏れてくる。この半ば「常識化した連続増収増益」要因としては、「お、ねだん以上」のキャッチフレーズに代表されるニトリHDのビジネスモデル成功が俎上に上るのが一般的だ。
しかし、それだけでは「ニトリHD常勝」を説明しきれない。例えば外食大手のような連続増収増益頓挫例が後を絶たないからだ。そこで同社の経営を探ってゆくと、企業としてなすべき経営が当然のごとく行われている実態が見えてくる。
●クレームの嵐から生まれたビジネスモデル
ニトリHDは1967年、個人営業の「似鳥家具店」からスタートし、まだ2店舗しかなかった71年頃、家具を安く売るため家具メーカーからの直接仕入れを試みる。しかし「問屋を通さなければ家具は売れない」という家具メーカーの総スカンで、これは失敗する。
その後、73年の変動相場制への移行で円高が急進。それを見た似鳥昭雄社長は「海外から家具を買い付ければ、輸送費を入れても国内調達より安値で売れる」と考え、85年5月から台湾製家具の直輸入を開始する。ところが、販売してみると「買った直後なのにひび割れしている。どうしてくれるんだ」といったクレームの嵐に見舞われ、客から返品された家具と在庫品の焼却処分を余儀なくされる。当初はひび割れの原因がわからなかったが、間もなく台湾の製造法が原因だと判明する。
「海外で国内品質並みの家具を調達するためには、自社生産するしかない」と考えたニトリHDは94年、インドネシアに自社工場を建設、国内販売用の家具生産を開始する。これが今日の同社ビジネスモデルの原型になった。
インドネシアで国内品質並みの家具生産に成功した要因は、トヨタ生産方式の導入だった。改善の積み重ねで生産性と品質を向上させ、海外生産量を拡大した。04年にはインドネシアに次いでベトナムに工場を建設、海外生産比率を高めた。これらの工場では「生産性向上」を合言葉に、従業員が効率的に働ける同社独自の仕組みを採用している。作業に無駄が生じないよう課長、班長、一般従業員などの職務分担を明確化し、それぞれの職場が1日ごとの部品調達や生産計画を従業員自ら綿密に詰めてゆく。
その結果、例えば家具メーカーでは通常50%といわれる原材料使用率を95%にまで高めるなどのコスト削減を実現している。品質も、品質改善活動を給与に連動させるなどの工夫で、現地従業員のモチベーションを高めている。ニトリHD関係者は「海外2工場の品質管理レベルはトヨタ並み」と胸を張る。
その後、海外2工場の原料調達、最終製品輸入などの物流効率化を図るため07年に恵州物流センター、09年に上海プロセスセンターを稼働させ、生産と物流の垂直統合を行い、圧倒的な価格競争力を実現する仕組みを構築した。それにより、海外工場の製品を海外の自社物流センターを通じて国内に供給する自前の垂直統合ビジネスモデル「製造物流小売業」を確立、連続増収増益の事業インフラにしている。
現在、このビジネスモデルによるPB(自主企画商品)の国内販売比率は約7割に達している。それだけ価格対応力やニーズ変化への対応力が高い。同社の連続増収増益が常識化する理由でもある。
●人材育成の仕組み
連続増収増益要因として、人材育成の仕組みも見逃せない。結論からいえば、「企業としてなすべき人材育成を、当然のごとく行っている」のだ。
ニトリHDの経営としては、自社の将来像から成長計画を作る「逆算の経営」が有名だ。
例えば同社は72年に「日本一の家具小売業」の将来像を描き、「30年で100店・売上高1000億円」の超長期経営目標を立てたといわれている。それを長期、中期、短期の経営計画に落とし込み、この目標を03年に1年遅れで達成している。現在は「32年に3000店・3兆円」の目標を立て「家具小売業世界一」を目指している。同社はこの逆算の経営を、人材育成にも応用しているのだ。
正社員は入社した年から年2回の「キャリアプラン」提出を義務付けられ、これを参考に社員の配属先を決めるというが、この書類の記載内容が少々変わっている。ニトリHD関係者によると、「最初の記載欄が『70歳ビジョン』になっている」というのだ。新卒採用の場合、22歳ぐらいでいきなり「70歳のありたい自分の姿」を思い描けというわけだ。そうして面喰らっていると、上司から「そのためには社内でどの部署を、どの順番で異動し、どんな業務経験を重ねたら『70歳のありたい自分』に近づけるかを逆算して考えろ」と指導されるという。
「そうした、まったく現実感のない遠い将来からありたい自分のキャリアを埋めていき、10年後、5年後、3年後のキャリアアップを考えているうちに、自分の将来目標が明確になり、キャリアアップの道筋が明確化してくる」(前出関係者)
また、その後「こういうスキルを磨きたいので、こういう部署へ行きたい」と自己申告すると、かなりの確率で志望がかなうので、異動先では自然とモチベーションが高まる。
さらに「3年以内配転」の異動原則がある。店舗運営、店舗開発、物流、商品開発などさまざまな職種を2〜3年間隔で経験させ、「すべての新入社員が20年後にプロフェッショナルになるための総合力を身に付けさせる」(ニトリHD)のが3年以内配転の目的だ。
「1つの業務しかできない社員、1つの分野しか知らない社員を、当社ではプロフェッショナルとは呼ばない。広く深く豊富な知識と経験を持ち、必要に応じてそれらを組み合わせて活用できる社員、どのような環境でも価値創造や新分野開拓ができる社員、それらを通じて社会に貢献できる社員を、当社ではプロフェッショナルと呼ぶ」(ニトリHDが中央職業能力開発協会に提出した自社のキャリア形成支援制度より)
●無為失策は叱責、作為失策は称賛
そこで興味深いのが、「『何事もゼロベースで考えろ』の社風」(前出関係者)だ。「この方法でうまくいっているのだから」と、問題が発生しない限り業務プロセスが見直されない事態を防ぐため、「我々は今年何をするのか、そのためにはどんなアプローチをすればよいのか」をゼロベースで起案し、実行することが求められる。
加えて、「Change」(現状に満足せず、常により良いものを求め続ける)、「Challenge」(どんなことも前向きに考え、不可能なことや前人未到なことに挑戦してゆく)、「Competition」(常に自分を成長させることを考え、未来のよりよい自分と競う)からなる。加えて「3C主義」も守られている。要は「現場でこういうことを変えたい、変えなければいけない」との意識を常に持ち、そのために「無理かもしれないけど、まずはやってみよう」と行動し、それで社員の自律的な成長を促す人材育成策のようだ。
したがって、「店長勤務の場合、前例踏襲で売り上げを落とせばこっぴどく叱られるが、新しい販促を試みて売り上げを落とした場合はお咎めなし。失敗の内容によっては、逆に褒められる場合もある」(前出関係者)という。
●高い生産性を実現
ニトリHDでは「がんばれ」の精神主義は認められない。常に数字に基づき議論し、改善策を立て、その実行が求められる。長時間労働やサービス残業も認められない。すべての業務を所定勤務時間内に完了することを求められる。
「優先順位の高い業務は何か、各業務の時間配分をどうするかを、常に月単位、週単位、当日単位で計画しないと仕事が前に進まない。残業をして成果を出しても無視される。勤務時間内に成果を出して初めて評価される」(前出関係者)
それが労働生産性の高さにも表れている。個人営業から法人成りした72年の社員一人当たり労働生産性(年間)はわずか100万円だった。それが10年後の82年には4倍増の400万円に向上し、それから30年後の12年は1691万円で、82年比4倍強に高まっている。
入社年次別研修、階層別研修、各種グループ研修、社内資格認定制度など、同社の教育制度は他の上場企業のそれとなんら違わない。違うのは現場での実践的人材育成、すなわちOJTの徹底だ。これが定着していなければ、どんなに充実した教育制度も効果を発揮できない。
「会社の成長は人づくりなしにありえない」と謳うニトリHDは、いわば「当たり前のことを当たり前に」実践することで28期連続増収増益を達成したといえよう。
(文=福井晋/フリーライター)
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